ヤマハから登場した左ハンドルの軽自動車、その正体とは?【人とくるまのテクノロジー展】

ヤマハ YG-M 2019

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毎年、5月の後半にパシフィコ横浜にて開催されている「人とくるまのテクノロジー展(主催:公益社団法人 自動車工業会)」。今年もさまざまな最新の自動車テクノロジーが一堂に会して、日本最大の自動車技術展と呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せました。

二輪で有名なヤマハ発動機のブースでは、黄色いナンバーをつけた4人乗りのゴルフカートのようなクルマが展示されていたのです。

文/写・山本 晋也
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世界に一台!ナンバー付きの燃料電池コミューター
ドアがなくても軽自動車のナンバーがつく理由

世界に一台!ナンバー付きの燃料電池コミューター

『YG-M FC』と名付けられた、このクルマは一台だけ試作されたという燃料電池車で、2019年4月18日から24日までの期間、実際に石川県輪島市内における実証実験で利用された車両そのもの。

おおまかなレイアウトをいえば燃料電池ユニットは後席下に搭載、ボディ後方のカバーされたところに35MPaの高圧水素タンクを搭載しています。二次電池としてリチウムイオンバッテリーを前席下のスペースに積み、モーターで後輪を駆動するというものです。

基本的な構造は市販されている「YG-M」シリーズと同様です。ちなみに、YG-Mシリーズには357ccの単気筒ガソリンエンジン仕様とバッテリーカー仕様があります。

試験的にワンオフ製作されたクルマですから高圧水素タンクや燃料電池ユニットなどは実績あるサプライヤーから購入した部品を使っています。その意味ではこれが量産モデルにダイレクトにつながるというわけではありませんが、バッテリーカーの置き換えとして燃料電池車の利便性を示す好サンプルとなります。

敷地内や観光地などの近距離移動に使われていることの多いランドカーや、ゴルフの移動で使われるゴルフカートではコストや環境意識から電動化が進んでいますが充電時間を確保することが必要です。燃料電池車であれば水素充填は数分レベルで済みますから多数を運用する際に車両台数を減らすことも可能となるわけです。

再生可能エネルギーにより発電した電力を水素に変換して保存しておくという水素社会が実現すれば、燃料電池のメリットが幅広いカテゴリーで活きてくることは以前から指摘されています。ヤマハ発動機の「YG-M FC」による実証実験は、そうした未来へ向けての知見を得たといえるでしょう。

ドアがなくても軽自動車のナンバーがつく理由

さて、この「YG-M FC」の写真を見て、黄色いナンバーが付いていることが確認できるでしょうか。前述した実証実験では公道を走行しているので、このクルマにも当然ながら公道走行が可能なナンバーが付いているのです。とはいえ、ドアもなく、よくよく見れば左ハンドルのクルマが軽自動車として認められるには何かの特例があったと思ってしまうかもしれません。

しかし、この手のクルマが軽自動車として認められるのは「低速車」だからなのです。具体的には最高速度が20km/h未満の低速車では保安基準が緩和されることになっています。そのためウインカーやヘッドライト、ワイパーといった最低限の保安基準部品が付いていれば、ドアがなくてもナンバーを付けることができるというわけです。

こうした電動小型低速車については、過疎地などのラストワンマイルのモビリティとしての活用も議論されています。そうした使い方においては複数車両を用意することも難しいので、電気自動車であれば充電中には使えないということになりかねません。

しかし、燃料電池であれば水素充填が数分レベルですので運用もしやすくなることが考えられるのです。その点からも「YG-M FC」の知見が電動低速車活用の議論を活発化することが期待されるというわけです。
●YAMAHA YG-M FC主要スペック

全長:3,370mm×全幅:1,340mm×全高1,710mm

車両重量:640kg

燃料:圧縮水素(35MPa)

乗車定員:4名
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商品詳細