ヤマハの考えるニュースタンダード 〜YAMAHA MT-09 SP ABS〜
更新日:2024.09.09
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MT-09は、ヤマハのスタンダードモデルである。そのスタイリングはモダンを極め、2000年代後半に欧州を中心に人気を極めたストリートファイター系に見えるかもしれないが、それに惑わされてはいけない。
text:河野正士 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
text:河野正士 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
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ヤマハの考えるニュースタンダード
SRやXJRといったヤマハのロングセラーモデルは、これまでヤマハのスタンダードモデルとして君臨してきた。そのバイクらしいスタイリング、そしてバイクらしいメカニズムはスタンダードに相応しい。
しかしそれらは1960年代後半から世界中の二輪マーケットをリードしてきた、日本車を生み出してきた日本人技術者たちが造り上げた〝スタンダード〟。強いて言うなら、日本人技術者たちが追い着け追い越せと手本にしてきた欧州メーカーたちが造り上げたバイクの進化形だ。
それから時は経った。バイクが生まれて100年を有に超え、日本車が二輪車市場を牽引するようになってからも50年が経とうとしている。いつまでも過去に縋っていてはならないのである。そこでヤマハは、次期スタンダードモデルを造ろうと考えたのだ。それがMTシリーズであり、その先鋒がMT-09だった。
モデル名であるMTは〝マスター・オブ・トルク〟の頭文字であり、パワーではなくトルクによって、扱いやすさと操る楽しさを追求するバイクが、自らのアイデンティティであると言うことの宣言である。
欧州のプロモーションで使用された「ダークサイド・オブ・ジャパン」というセンセーショナルなキャッチコピーとビジュアルは、ダークサイド=悪ではなく、いままで光りが当てられて来なかった影の部分、これまで是としてきたことが変わる=新しいバイクの世界を造り上げようというヤマハの意気込みなのだ。
もちろんその新世界には最新のテクノロジーが欠かせないが、MT-09に搭載された3気筒エンジンやR1からMT-10へと受け継いだクロスプレーン型クランクシャフトは、エンジンの構造上、豊かなトルクを生み出しながらもエンジンの余計な振動をキャンセルするメカニズムだ。
進化の伸びしろやトレンドがある電子デバイスではなく構造学的に、自らが求める出力特性をカタチにしたことにヤマハの意気込みが現れている。
そういったヤマハの、スタンダードモデル入れ替えの試みは功を奏した。MT-09の販売実績を見てもそれはあきらかであり、以降MT-09をベースにした発展モデルのトレーサー900やXSR900などの販売実績もそれを証明している。
車体のデザインについても、MT-09は新機軸を打ち出している。2017年のマイナーチェンジで、兄弟モデルであるMT-10と連携を強めるフローティング懸架のLED4灯ヘッドライトを採用した。
ストリートファイター的な、ヘッドライトを車体にグッと押しつけることで凝縮感を生み出す手法とは異なり、あえてヘッドライトを車体から切り離すようにデザインすることで車体のコンパクト化や凝縮感を生み出しているのである。
面白いことに、同じ手法を採るのはKTMの新型デューク・シリーズであり、ヤマハもKTMも社外のデザインカンパニーが車体デザインを行っていることだ。両車ともに、好き嫌いが分かれる奇抜なデザインであるが、古い街並みが多い欧州では街に色が少なく、また単一な形状の建物が多いことから、こういったモダンなデザインが街に映える。
バイクはワインディングだけでなく、街のなかでも使われるプロダクトである以上、そういった建造物とのコントラストの定義もバージョンアップし続けなければならないのである。
そして私が次に注目するのは2020年以降だ。それは新しい排気ガス規制/EURO5が始まるとされる年。いま各社ともに、そこに向けて様々な仕込みを行っている。EURO5は排出ガスだけでなく、さまざまなパーツの耐久性も求められる(EURO4でも耐久走行試験が導入されている)。それによってバイク造りは、否が応でも変化する。そのときMT-09がどう進化するか、いまから楽しみである。
しかしそれらは1960年代後半から世界中の二輪マーケットをリードしてきた、日本車を生み出してきた日本人技術者たちが造り上げた〝スタンダード〟。強いて言うなら、日本人技術者たちが追い着け追い越せと手本にしてきた欧州メーカーたちが造り上げたバイクの進化形だ。
それから時は経った。バイクが生まれて100年を有に超え、日本車が二輪車市場を牽引するようになってからも50年が経とうとしている。いつまでも過去に縋っていてはならないのである。そこでヤマハは、次期スタンダードモデルを造ろうと考えたのだ。それがMTシリーズであり、その先鋒がMT-09だった。
モデル名であるMTは〝マスター・オブ・トルク〟の頭文字であり、パワーではなくトルクによって、扱いやすさと操る楽しさを追求するバイクが、自らのアイデンティティであると言うことの宣言である。
欧州のプロモーションで使用された「ダークサイド・オブ・ジャパン」というセンセーショナルなキャッチコピーとビジュアルは、ダークサイド=悪ではなく、いままで光りが当てられて来なかった影の部分、これまで是としてきたことが変わる=新しいバイクの世界を造り上げようというヤマハの意気込みなのだ。
もちろんその新世界には最新のテクノロジーが欠かせないが、MT-09に搭載された3気筒エンジンやR1からMT-10へと受け継いだクロスプレーン型クランクシャフトは、エンジンの構造上、豊かなトルクを生み出しながらもエンジンの余計な振動をキャンセルするメカニズムだ。
進化の伸びしろやトレンドがある電子デバイスではなく構造学的に、自らが求める出力特性をカタチにしたことにヤマハの意気込みが現れている。
そういったヤマハの、スタンダードモデル入れ替えの試みは功を奏した。MT-09の販売実績を見てもそれはあきらかであり、以降MT-09をベースにした発展モデルのトレーサー900やXSR900などの販売実績もそれを証明している。
車体のデザインについても、MT-09は新機軸を打ち出している。2017年のマイナーチェンジで、兄弟モデルであるMT-10と連携を強めるフローティング懸架のLED4灯ヘッドライトを採用した。
ストリートファイター的な、ヘッドライトを車体にグッと押しつけることで凝縮感を生み出す手法とは異なり、あえてヘッドライトを車体から切り離すようにデザインすることで車体のコンパクト化や凝縮感を生み出しているのである。
面白いことに、同じ手法を採るのはKTMの新型デューク・シリーズであり、ヤマハもKTMも社外のデザインカンパニーが車体デザインを行っていることだ。両車ともに、好き嫌いが分かれる奇抜なデザインであるが、古い街並みが多い欧州では街に色が少なく、また単一な形状の建物が多いことから、こういったモダンなデザインが街に映える。
バイクはワインディングだけでなく、街のなかでも使われるプロダクトである以上、そういった建造物とのコントラストの定義もバージョンアップし続けなければならないのである。
そして私が次に注目するのは2020年以降だ。それは新しい排気ガス規制/EURO5が始まるとされる年。いま各社ともに、そこに向けて様々な仕込みを行っている。EURO5は排出ガスだけでなく、さまざまなパーツの耐久性も求められる(EURO4でも耐久走行試験が導入されている)。それによってバイク造りは、否が応でも変化する。そのときMT-09がどう進化するか、いまから楽しみである。
◆YAMAHA MT-09 SP ABS
車両本体価格:¥1,112,400(税込)
エンジン:DOHC直列3気筒
総排気量:845cc 車両重量:193kg
最高出力:85kW(116ps)/10,000rpm
最大トルク:87Nm(8.9kgm)/8,500rpm
車両本体価格:¥1,112,400(税込)
エンジン:DOHC直列3気筒
総排気量:845cc 車両重量:193kg
最高出力:85kW(116ps)/10,000rpm
最大トルク:87Nm(8.9kgm)/8,500rpm