新型スープラ、伝統を守った部分と変革した部分

トヨタ スープラ 2019

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トヨタから新型スープラが登場した。伝説のスポーツカーが17年ぶりに復活したカタチだ。

既報の通り、BMWと共同開発したFRスポーツカーは「スープラ」という名前を受け継ぐのに相応しい中身となっているのだろうか。

文・山本 晋也

※ 2019年1月時点

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也
Chapter
スープラがデトロイトモーターショーで世界初公開
スープラは伝統の直列6気筒エンジンとFRレイアウト
スープラはスポーツ性能のために2シーターと割り切った

スープラがデトロイトモーターショーで世界初公開

トヨタが1月14日(現地時間)に開幕したデトロイトモーターショーにおいて世界初公開した新型スープラは、いかにもスープラらしい筋肉質なアピアランスを与えられていた。

その盛り上がったリアフェンダーは、あたかもボディビルダーのような“キレ”のあるもので、後輪によってすべてのパワーを路面に伝えるFRレイアウトであることを示している。

さて、スープラという伝統のスポーツカーであるから、ほぼ同じタイミングで開催された東京オートサロンでのお披露目という考え方もあっただろうが、デトロイトで発表されたのにはわけがある。

スープラが特別な名前になった要因には、過去のモデルが積み上げてきた実績もあるが、北米においては『ワイルド・スピード』シリーズ(原題:The Fast and the Furious)に登場したチューンドカーとして人気を高めた部分が無視できないからだ。

日本においてコミック『頭文字D』の影響でAE86が人気を再燃させ、それがトヨタ86の復活につながった部分もあるが、スープラの復活においてもフィクションでの活躍はおおいに影響している。

スポーツカーには誕生までの背景などストーリーが重要になるが、トヨタのスポーツカーにはフィクションの影響が少なからずあるというのは、クールジャパン的な世界観にもつながってくる。

スープラは伝統の直列6気筒エンジンとFRレイアウト

しかし、単にスープラという名前を復活させただけではない。そもそもスープラというのは、セリカというトヨタのスペシャリティクーペに大排気量6気筒エンジンを載せたという成り立ちで生まれている。トヨタのM型、JZ型といった伝説的存在の直列6気筒エンジンを積んでいたことがスープラのアイデンティティだ。

駆動方式にしても、シンプルなリア駆動にこだわってきた。新型スープラは、BMWと共同開発したことによって、直列6気筒エンジン+FRプラットフォームというスープラに欠かせない要素を守っている。
ただし、日本向けには4気筒エンジンの搭載グレードも用意される。グレード名でいうとRZが3.0リッター6気筒ターボ(最高出力250kW)、SZ-Rがハイパワーな4気筒ターボ(190kW)、エントリーグレードのSZにはローパワー版4気筒ターボ(145kW)を搭載すると発表された。

伝統を守るのであれば、6気筒がスープラ、4気筒はセリカとすべきだが、ダウンサイジングターボ(6気筒NA相当)という解釈なのだろう。

RZ、SZというグレード名は先代スープラ(A80型)に使われていたそのままであり、RZがターボ、SZがNAエンジンだったことを知っているオールドファンからすると、新型スープラのグレード名は感涙モノだ。

スープラはスポーツ性能のために2シーターと割り切った

4気筒が登場したことはスープラの伝統としては変革に当たるが、もっと大きな変革といえるのが新型スープラは2シーターとなっていることだ。

これまでのスープラは2+2パッケージでグランドツアラー的なキャラクターが強かった。しかし、新型ではスポーツ性能にこだわり、ホイールベースを短くしたために2シーターのパッケージとなった。

非常に大きな割り切りだが、スープラの価格帯を考えるとグランドツアラーの市場よりもスポーツカーのほうが勝負できると考えたのだろう。
もう一つスポーツカーとして生み出された理由は、新型スープラが、ただのトヨタ車ではなく「GR」ブランドのオリジナルモデルとして位置づけられているからだ。

モータースポーツ活動からフィードバックしたノウハウを市販車のスポーツコンバージョンに展開するというのが、これまでの「GR(GAZOO Racing)」ブランドだったが、新型スープラについては「GRスープラ」と命名されていることからもわかるように、GAZOO Racingのノウハウを最初から入れ込んで開発された初めてのクルマということになる。

そうした立ち位置の変化も純粋なスポーツカーとして2シーターを選択することにつながった。

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