F1などのレース用タイヤって公道で使ってもいいの?

フォーミュラーカーやGTカーが、乾いた路面のときに使うスリックタイヤや、ラリーカーが雪道で使うスパイクタイヤなど、クルマのレースでは、一般に市販されていないタイヤが数多く使われています。特殊な用途で作られたこういったタイヤが手に入ったとして、はたして公道で使うことはできるのでしょうか?
文・赤井福
スリックタイヤとはどんなタイヤ?
レースの世界でよく使われるスリックタイヤは、排水溝(サイピング)のないタイヤで、路面とのグリップ力が大きいのが特徴です。
路面との摩擦が大きく、その摩擦熱によってタイヤ表面を溶かすことで、タイヤと路面を粘着させて、グリップ力を出しています。なおスリックタイヤは、ゴムが冷えて固くなっている状態だとグリップ力が低下するため、走行直前までタイヤウォーマーという電気毛布のような機器でタイヤを包んで、あらかじめ表面温度を高めておくのが通例です。
スリックタイヤは公道で使えるのか?
グリップ力が高いスリックタイヤは公道で使えるのか?答えはNOです。
道路運送車両法の保安基準には『接地部は滑り止めを施したものであり(中略)、凸部(サイピング・プラットフォーム及びインジケータの部分を除く)のいずれの部分においても1.6mm以上の深さを有すること』と規定されています。平たく言えば、公道で使用するタイヤはサイピングが施されており、なおかつその深さが1.6mm以下にならないように定期的に交換する必要があるのです。
このように、一般公道ではスリックタイヤの使用は認められず、雨天時も変わらず安全に走行できるタイヤを装着することが義務付けられています。
私がディーラー勤務時代、極まれにタイヤを長期間交換せずに走行し、溝がほぼ無くなったスリックタイヤのような状態になってしまったタイヤを見かけましたが、危険なので絶対にやめましょう。
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