20年前と現在の衝突基準。クルマのつぶれ方は、こんなに違う!
更新日:2024.09.09
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自動車の衝突安全基準は、年を重ねるごとに厳しくなっています。これは、毎年起こっている交通事故を分析し、死傷者を1人でも減らすために、国によって基準が数年おきに更新されているためです。ではもし、現在のクルマと20年前のクルマが正面衝突をしたら、クルマはどうなってしまうのでしょうか?
文・吉川賢一
文・吉川賢一
20年前の衝突基準はどうなっていた?
いまから20年前のクルマには、自動車の保安基準として”前面衝突”という試験が課せられていました。「フルラップ前面衝突試験」という項目で、50km/hの速度でコンクリート製のバリア(壁)に正面衝突をさせ、一定の基準をクリアすることが求められていました。
このフルラップ前面衝突試験は、1993年1月に改定された道路運送車両の保安基準により、1994年4月以降の新型車に義務付けされました。また、以前は衝突速度40km/hの特例措置となっていた軽自動車も、1999年4月から50km/hの試験が適用されています。
フルラップ前面衝突試験では、衝突時のダミーの頭部、頸部、胸部、下肢部に受けた衝撃や室内の変形をもとにして、乗員保護性能の度合いを評価しています。なお、現実に起こった前面衝突事故のほとんどは、この衝突試験の速度以下で発生しており、当時としては十分な安全率を考慮したものでした。
このフルラップ前面衝突試験は、1993年1月に改定された道路運送車両の保安基準により、1994年4月以降の新型車に義務付けされました。また、以前は衝突速度40km/hの特例措置となっていた軽自動車も、1999年4月から50km/hの試験が適用されています。
フルラップ前面衝突試験では、衝突時のダミーの頭部、頸部、胸部、下肢部に受けた衝撃や室内の変形をもとにして、乗員保護性能の度合いを評価しています。なお、現実に起こった前面衝突事故のほとんどは、この衝突試験の速度以下で発生しており、当時としては十分な安全率を考慮したものでした。
しかし、フルラップ前面衝突事故に加えて、現実で起こる事故により近しい評価方法で基準を制定するべきという声が、ユーザーや調査機関からあがるようになり、交通事故のさまざまな種類を分析した結果、オフセット前面衝突試験(2009年導入)、側面衝突試験、後面衝突頚部保護性能試験などが、新たに導入されることになりました。
ちなみに、サイドカーテンエアバッグが世に登場したのは、側面衝突試験が衝突評価法に導入されたことが一つの要因です。
その都度、自動車メーカーは法規適合をするために、ボディの強度対策を織り込み、現在に至っています。いまのクルマが昔のクルマよりもボディサイズが大きいのは、居住性の確保というよりも、現在の衝突安全基準に対応するため、というほうが大きな理由なのです。
ちなみに、サイドカーテンエアバッグが世に登場したのは、側面衝突試験が衝突評価法に導入されたことが一つの要因です。
その都度、自動車メーカーは法規適合をするために、ボディの強度対策を織り込み、現在に至っています。いまのクルマが昔のクルマよりもボディサイズが大きいのは、居住性の確保というよりも、現在の衝突安全基準に対応するため、というほうが大きな理由なのです。
【動画】1998年製カローラと2015年製カローラの衝突実験
20年前のクルマと現在のクルマが衝突したらどうなる?
ANCAP(Australasian New Car Assessment Program)にて、実際の検証実験が、2017年にYouTubeに公開されました。
動画では、1998年製と2015年製のトヨタカローラを衝突させる様子が収められています。両車を64km/hでオフセット衝突をさせるという内容で、2台のカローラは向かい合って走り出し、すさまじい衝突をしています。あまりの衝撃のため、両車のフロント周りは大破し、部品も散り散りになってしまいました。
動画では、1998年製と2015年製のトヨタカローラを衝突させる様子が収められています。両車を64km/hでオフセット衝突をさせるという内容で、2台のカローラは向かい合って走り出し、すさまじい衝突をしています。あまりの衝撃のため、両車のフロント周りは大破し、部品も散り散りになってしまいました。
車の安全性能は進化している
2015年製カローラは、フロント部分が大破しているものの、運転席のスペースは維持されています。エアバッグが展開し、ダミーが前方に飛び出した衝撃を吸収する様子が収められています。カバーするように運転席側ドアは少し歪んでいる程度。サイドのエアバッグも展開されており、ドライバーはしっかりと保護されています。
対して、1998年製カローラは、運転席側のボンネットが大きく後退し、さらにはAピラーも垂直になるほどに湾曲し、挙げ句の果てにはフロントタイヤも運転席の足元までめり込んでしまいました。キャビン内に突入してくるステアリングホイールにはエアバッグが装備されておらず、ダミーはハンドルをもろに上半身に受けるかたちになっていました。
比べるまでもなく、2015年製のカローラのほうが優秀な結果であり、17年間の安全性能の向上を確認することができます。
対して、1998年製カローラは、運転席側のボンネットが大きく後退し、さらにはAピラーも垂直になるほどに湾曲し、挙げ句の果てにはフロントタイヤも運転席の足元までめり込んでしまいました。キャビン内に突入してくるステアリングホイールにはエアバッグが装備されておらず、ダミーはハンドルをもろに上半身に受けるかたちになっていました。
比べるまでもなく、2015年製のカローラのほうが優秀な結果であり、17年間の安全性能の向上を確認することができます。
こうした結果は、車両を作っているメーカーの努力はもちろんのこと、ルールを作る側の政府機関や、自動車メーカー関連団体、自動車保険団体などの努力によって、成し遂げられています。魅力的に感じることがある古い車には、衝突時のリスクも含んでいることを気に留めておきたいですね。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。