ホイールベースが伸びると、クルマはどうなるの?
更新日:2024.09.09
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「クルマのホイールベースが長いと、直進性が良くなったり、乗り心地が良くなる」といった話を聞いたことはありませんか。このホイールベース、じつはクルマのキャラクターを決めるうえで、とても大切な要素なのです。今回は、ホイールベースの長さが及ぼす影響について紹介します。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
ホイールベースとは、どこのこと?
ホイールベースは、クルマを真横から見たときの、前タイヤの中心から後タイヤの中心までの長さを指します。その長短によって、後席の居住性や、運動性能に違いがあらわれます。
20年前と比べ、近年の自動車は大型化が進んでおり、乗用車(特にセダン)のホイールベースが伸ばされる傾向にあります。
たとえば、トヨタ クラウンの場合、1987年に登場した8代目が2,730mmだったのに対し、現行14代目は2,850mm。日産 スカイラインでは、1985年に登場したR31型が2,615mmで、現行V37型は2,850mm。ホンダ アコードは、1989年に登場した4代目は2,720㎜、現行10代目は2,830㎜。
さらに、オーバーハングを短くして、ボディ4隅に近いところへタイヤをレイアウトするクルマが多くなっています。これは「居住性の向上」、「操縦安定性の向上」を重視した商品企画が行われているためです。
20年前と比べ、近年の自動車は大型化が進んでおり、乗用車(特にセダン)のホイールベースが伸ばされる傾向にあります。
たとえば、トヨタ クラウンの場合、1987年に登場した8代目が2,730mmだったのに対し、現行14代目は2,850mm。日産 スカイラインでは、1985年に登場したR31型が2,615mmで、現行V37型は2,850mm。ホンダ アコードは、1989年に登場した4代目は2,720㎜、現行10代目は2,830㎜。
さらに、オーバーハングを短くして、ボディ4隅に近いところへタイヤをレイアウトするクルマが多くなっています。これは「居住性の向上」、「操縦安定性の向上」を重視した商品企画が行われているためです。
ホイールベースが長いとどうなる?
ホイールベースを延長することによって得られる一番のメリットは、「居住性の向上」です。特に後席の足元スペースを広くすることで、足が組めるようになったり、後席の足元に余計に荷物が積むことができたりと、ほんの数センチの差であっても、想像以上にその効果は大きいのです。
また、直進安定性に優れる傾向にあります。わかりやすいのが高速道路なのですが、走行中に外乱を受けても、直進を維持しやすくなります。また進路を修正するときも、ゆったりとした動きとなり、滑らかな余裕のある修正ができます。反対に、きびきびとしたハンドリングは失う傾向にあります。
その次にメリットがあるのが乗り心地、と言いたくなるのですが、じつはロングホールベースによる効果はほとんどありません。改善するのは、前後輪が段差を乗り越えた際のピッチが小さくなることで、ドライバーの前後方向への頭の振られが減り、それによって安心感が増します。つまり、段差のショックや振動はさほど変わらないので、根本的な乗り心地の改善にはつながっていないのです。
「ホイールベースは長い方が乗り心地は良い」というレビューをネットなどで見かけますが、これはホイールベースを延長したことによって車重が増えたぶん、ボディがその場に居続ける慣性力が増し、揺れに影響されにくくなったことを感じている、とみてよいと考えます。
デメリットとしては、小回り性能の悪化です。フロントのタイヤが切れる最大角は、フロントのサスペンションレイアウトによって決まりますので、サスペンションジオメトリーをいじっても最小回転半径を小さくすることはほぼできません。
そのためシンプルにホイールベースを延長すると、そのまま回転半径の悪化につながり、極端に長い場合は、取り回しに苦労することを受け入れなければなりません。
また、直進安定性に優れる傾向にあります。わかりやすいのが高速道路なのですが、走行中に外乱を受けても、直進を維持しやすくなります。また進路を修正するときも、ゆったりとした動きとなり、滑らかな余裕のある修正ができます。反対に、きびきびとしたハンドリングは失う傾向にあります。
その次にメリットがあるのが乗り心地、と言いたくなるのですが、じつはロングホールベースによる効果はほとんどありません。改善するのは、前後輪が段差を乗り越えた際のピッチが小さくなることで、ドライバーの前後方向への頭の振られが減り、それによって安心感が増します。つまり、段差のショックや振動はさほど変わらないので、根本的な乗り心地の改善にはつながっていないのです。
「ホイールベースは長い方が乗り心地は良い」というレビューをネットなどで見かけますが、これはホイールベースを延長したことによって車重が増えたぶん、ボディがその場に居続ける慣性力が増し、揺れに影響されにくくなったことを感じている、とみてよいと考えます。
デメリットとしては、小回り性能の悪化です。フロントのタイヤが切れる最大角は、フロントのサスペンションレイアウトによって決まりますので、サスペンションジオメトリーをいじっても最小回転半径を小さくすることはほぼできません。
そのためシンプルにホイールベースを延長すると、そのまま回転半径の悪化につながり、極端に長い場合は、取り回しに苦労することを受け入れなければなりません。
中国ではセダンのロングホイールベースが人気
中国では、いまだにセダンが人気ですが、その人気を支えている裏に、ロングホイールベースモデルの存在があります。中国で販売されているBMWの3シリーズや5シリーズには、通常のホイールベース仕様車に加えて、ロングホイール仕様を用意しています。
また、インフィニティのQ70(Y51フーガ)やQ50(V37スカイライン)、アウディA4、A6などにも、ロングホイールベース仕様があります。
これは中国のユーザーが、後席に知人や友人、両親を乗せて移動することに、大変なステータスを感じていることが要因です。中国に行くことがあれば、ぜひクルマに注目して見てみてください。横から見た時に、ちょっと長いなと感じるセダンが多く走っていることに、気が付くと思います。
また、インフィニティのQ70(Y51フーガ)やQ50(V37スカイライン)、アウディA4、A6などにも、ロングホイールベース仕様があります。
これは中国のユーザーが、後席に知人や友人、両親を乗せて移動することに、大変なステータスを感じていることが要因です。中国に行くことがあれば、ぜひクルマに注目して見てみてください。横から見た時に、ちょっと長いなと感じるセダンが多く走っていることに、気が付くと思います。
ホイールベースが長いことのメリットは大きいのですが、それはそのまま、小回り性能の悪化として跳ね返ってきます。BMWやポルシェ、レクサスなどは、ロングホイールベース化によるネガを解消するため、後輪もステア(=4輪操舵)させて最小回転半径を改善する方法をとる場合がありますが、今度はコストがネックとなってきます。
クルマを検討する際には、ご自身が「クルマに何を求めるのか」をよく考えたうえで、判断されることをお勧めします。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。