オフロード車のタイヤの扁平率がとても高いのはなぜ?高扁平タイヤのメリットとは
更新日:2024.09.09
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昨今のクロスオーバーSUVは、オンロードユースを前提に設計されていることもあり、タイヤは低扁平のロード用タイヤを装着しているものがほとんどです。その一方で、FJクルーザーやランクル、パジェロなど、オフロードの得意なクロカン系SUVのタイヤは、サイドウォールが分厚い高扁平率です。なぜ、それらは高扁平率のタイヤを着けているのでしょうか? そこには、タイヤのメカニズムが関係しています。
文・山崎友貴
文・山崎友貴
独特の構造を持つオフロードタイヤ
80年代から90年代にかけて大流行したオフロード(クロスカントリー)4WD。その頃は、オンオフ兼用の「オールテレーン(A/T)タイヤ」や「マッドテレーン(M/T)タイヤ」もトレンドとなりました。
ところが、昨今のSUVではこうしたタイヤを付けている車はほとんどありません。多くのモデルが扁平率の低いサイズをチョイスしており、アグレッシブなモデルだと40%扁平のスポーツカーばりのタイヤを履いています。
ちなみにタイヤの「扁平率」とは、タイヤの断面幅(トレッド面)に対する断面の高さ(ハイト)の比率。一般的に扁平率が低いと言えば、タイヤの幅があるのにハイトがないペタンペタンのタイヤのことを言いますね。一方で扁平率が高いタイヤとは、幅は比較的狭くて、ハイトが高い、まさにオフロード用タイヤのようなものを指します。
ところが、昨今のSUVではこうしたタイヤを付けている車はほとんどありません。多くのモデルが扁平率の低いサイズをチョイスしており、アグレッシブなモデルだと40%扁平のスポーツカーばりのタイヤを履いています。
ちなみにタイヤの「扁平率」とは、タイヤの断面幅(トレッド面)に対する断面の高さ(ハイト)の比率。一般的に扁平率が低いと言えば、タイヤの幅があるのにハイトがないペタンペタンのタイヤのことを言いますね。一方で扁平率が高いタイヤとは、幅は比較的狭くて、ハイトが高い、まさにオフロード用タイヤのようなものを指します。
さて、オフロード用タイヤは実に独特な構造を持っています。まず舗装路用のタイヤに比べると、プライ数が多くなっています。「プライ」とは、タイヤの内部に巻き付けてある補強材のこと。木綿の糸で編んだベルト状のものです。重量物を運ぶトラックや、激しいオフロードを走る4WD車用のタイヤは、このプライが多く巻き付けてあります。
タイヤの横の部分も違います。ホイールのリムに接している部分からトレッド面までの横の部分を「サイドウォール」と言います。オフロードでは路面からの衝撃が強い上に、岩などの障害物にタイヤが接触することが非常に多くなります。尖った岩に接触した場合、タイヤには簡単に穴が開いてしまいます。
そこで、サイドウォールにも補強材を入れて、簡単に穴が開かないようにできているのです。ラリーレイド用のレースタイヤなどには、さらにゴムのシャーリング(蛇腹)を入れて補強しているものもあります。最近では、泥の溝などでサイドウォールによってトラクションが稼げるように、バターンが入っているタイヤもあります。
タイヤの横の部分も違います。ホイールのリムに接している部分からトレッド面までの横の部分を「サイドウォール」と言います。オフロードでは路面からの衝撃が強い上に、岩などの障害物にタイヤが接触することが非常に多くなります。尖った岩に接触した場合、タイヤには簡単に穴が開いてしまいます。
そこで、サイドウォールにも補強材を入れて、簡単に穴が開かないようにできているのです。ラリーレイド用のレースタイヤなどには、さらにゴムのシャーリング(蛇腹)を入れて補強しているものもあります。最近では、泥の溝などでサイドウォールによってトラクションが稼げるように、バターンが入っているタイヤもあります。
オフロードタイヤのトレッド面の溝が深い理由
トレッド面も独特です。舗装路用タイヤは比較的浅い溝(グルーブ)がトレッド面に掘られていますが、オフロードタイヤはまるでブロックのような深いパターンとなっています。まずブロックのようになっているのはそれぞれの「角」を凹凸に当てて、それによって路面との摩擦力を少しでも稼いで、前進するための駆動力を発揮するためです。
溝が深いのは、それだけではありません。オフロードでは砂利や砂、泥など、舗装路にはない路面がいっぱいです。特に泥はやっかいで、タイヤのトレッドに詰まってしまいます。
そのため、トレッド面は溝が広い上に、「セルフクリーニング性能」といって溝の深さや溝の配置を泥が外に出やすいように考慮されてます。タイヤが地面に接地する時にギューッと中の異物を圧縮して、タイヤが地面から離れる時にペッと外に吐き出すような仕組みです。
さらに材質も舗装路用タイヤとは異なり、トレッドのブロックをよく動かすためにしなやかさが求められます。ですが、あまり柔らかいと舗装路での操縦性が悪化する上に、未舗装路での耐久性が低下してしまいます。非常に高次元のバランスが求められるのです。
舗装路用のタイヤが単純にできているとは言いませんが、舗装路も未舗装路も走るためのオフロード用タイヤは、実に様々な性能が考慮されているのです。
溝が深いのは、それだけではありません。オフロードでは砂利や砂、泥など、舗装路にはない路面がいっぱいです。特に泥はやっかいで、タイヤのトレッドに詰まってしまいます。
そのため、トレッド面は溝が広い上に、「セルフクリーニング性能」といって溝の深さや溝の配置を泥が外に出やすいように考慮されてます。タイヤが地面に接地する時にギューッと中の異物を圧縮して、タイヤが地面から離れる時にペッと外に吐き出すような仕組みです。
さらに材質も舗装路用タイヤとは異なり、トレッドのブロックをよく動かすためにしなやかさが求められます。ですが、あまり柔らかいと舗装路での操縦性が悪化する上に、未舗装路での耐久性が低下してしまいます。非常に高次元のバランスが求められるのです。
舗装路用のタイヤが単純にできているとは言いませんが、舗装路も未舗装路も走るためのオフロード用タイヤは、実に様々な性能が考慮されているのです。
なぜオフロード車のタイヤの扁平率は高いのか?
タイヤに求められる基本性能として、「進む」「曲がる」「止まる」があります。これらは、タイヤと路面の摩擦力によって実現されています。
ゴムのタイヤができたのは馬車時代ですが、最初は乗り心地の向上のためでした。木の車輪にゴムを巻き付けただけの「ソリッドタイヤ」でしたが、20世紀初頭まで使われていました。ところが、このソリッドタイヤは衝撃吸収性が低いだけでなく、速度を出すと熱で煙が発生するような代物だったのです。
一方で自動車は高性能高速化し、タイヤが重要なピースとなっていきます。そこで登場したのが、空気入りタイヤです。ダンロップが自転車用に考えたという空気入りタイヤは路面からの衝撃を吸収するだけでなく、タイヤと路面の摩擦で発する熱をも緩和してくれます。
これをミシュランが自動車用タイヤとして作りました。その後のタイヤ技術が急速に進化していったのはご存じの通り。
ゴムのタイヤができたのは馬車時代ですが、最初は乗り心地の向上のためでした。木の車輪にゴムを巻き付けただけの「ソリッドタイヤ」でしたが、20世紀初頭まで使われていました。ところが、このソリッドタイヤは衝撃吸収性が低いだけでなく、速度を出すと熱で煙が発生するような代物だったのです。
一方で自動車は高性能高速化し、タイヤが重要なピースとなっていきます。そこで登場したのが、空気入りタイヤです。ダンロップが自転車用に考えたという空気入りタイヤは路面からの衝撃を吸収するだけでなく、タイヤと路面の摩擦で発する熱をも緩和してくれます。
これをミシュランが自動車用タイヤとして作りました。その後のタイヤ技術が急速に進化していったのはご存じの通り。
さて、今の話の中に、オフロード用タイヤの扁平率が高い理由のひとつがありました。それは路面からの衝撃吸収です。タイヤを見れば分かりますが、ハイトが高いということはそれだけ内部の容積が大きく、たくさん空気が入っているということ。
時として4輪すべてがまったく別の動きをするような凹凸路面を走ると、車内で感じる衝撃は相当なものです。車体にダメージを与えないためにも、タイヤが果たす役割は大きいのです。
今度はタイヤの接地性能を考えてみましょう。舗装路の場合、摩擦係数が高くなるため、雨や雪でもない限り、なかなか滑って空転するということはありません。仮に雨でも空転しないように、タイヤのトレッドデザインや材質が十分に考慮されています。
舗装路で特にタイヤの性能が求められるシチュエーションは、コーナリングではないでしょうか。
コーナリングでは横・斜め方向のGが車体にかかり、それをタイヤのグリップでこらえて前進します。つまり接地面も横長になったほうが理にかなっているため、スポーツカー用のタイヤは幅広でハイトが低い低扁平率が多いのです。
時として4輪すべてがまったく別の動きをするような凹凸路面を走ると、車内で感じる衝撃は相当なものです。車体にダメージを与えないためにも、タイヤが果たす役割は大きいのです。
今度はタイヤの接地性能を考えてみましょう。舗装路の場合、摩擦係数が高くなるため、雨や雪でもない限り、なかなか滑って空転するということはありません。仮に雨でも空転しないように、タイヤのトレッドデザインや材質が十分に考慮されています。
舗装路で特にタイヤの性能が求められるシチュエーションは、コーナリングではないでしょうか。
コーナリングでは横・斜め方向のGが車体にかかり、それをタイヤのグリップでこらえて前進します。つまり接地面も横長になったほうが理にかなっているため、スポーツカー用のタイヤは幅広でハイトが低い低扁平率が多いのです。
一方、オフロードは違います。摩擦係数が低い未舗装路では、前述の通り、タイヤのトレッド形状やゴム質でグリップ力を稼ぐだけでなく、タイヤを路面に押しつける接地圧が重要になってきます。これにより、前に進む力「トラクション」が生み出されるのです。前に進むには、横長の接地面よりも縦長の接地面の方が効率的です。
またタイヤの真下のみ接地している舗装路に対して、オフロードでのタイヤの接地面はもっと立体的です。例えば岩を乗り越える時、タイヤは真下の地面と、岩の壁面の2点が接地します。径の小さいタイヤで乗り越えるよりも、径の大きなタイヤの方が、岩に接地する面積がより多くなります。つまり、それだけトラクションが得られるということです。また径が大きいと、ロードクリアランスも稼げます。
以上のことを考えていくと、オフロードタイヤは径が大きく、接地面が縦長になる、高扁平率なタイヤが向いているということになるのです。ただし、最近ではSUVも未舗装路を走ることが少なくなり、舗装路での高速化が求められています。そのため、細身で大径の高扁平率タイヤは、一部のモデルを除いて、もしくはチューニング用以外には少なくなっています。
またタイヤの真下のみ接地している舗装路に対して、オフロードでのタイヤの接地面はもっと立体的です。例えば岩を乗り越える時、タイヤは真下の地面と、岩の壁面の2点が接地します。径の小さいタイヤで乗り越えるよりも、径の大きなタイヤの方が、岩に接地する面積がより多くなります。つまり、それだけトラクションが得られるということです。また径が大きいと、ロードクリアランスも稼げます。
以上のことを考えていくと、オフロードタイヤは径が大きく、接地面が縦長になる、高扁平率なタイヤが向いているということになるのです。ただし、最近ではSUVも未舗装路を走ることが少なくなり、舗装路での高速化が求められています。そのため、細身で大径の高扁平率タイヤは、一部のモデルを除いて、もしくはチューニング用以外には少なくなっています。
山崎友貴|Yamazaki Tomotaka
四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。