忘れられないこの1台 vol.42 MOTO-GUZZI 1000S

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モトグッツィ1000S、いまから15年以上前に手に入れた愛車。すぐにでも動かすぞと言いながら、数年ガレージに停めたままだ。時間ができたらすぐに整備する、いまや口癖を通り越し妄想に近くなってきた。

text:河野正士  [aheadアーカイブス vol.120 2012年11月号]
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vol.42 MOTO-GUZZI 1000S

vol.42 MOTO-GUZZI 1000S

▶︎1990年に発売されたマシン。ルマン1000シリーズと同じ空冷2バルブOHV縦置きV型2気筒エンジンにダブルクレードルフレームを採用。1974年に発売された「750S」の復刻版とも言えるマシン。ブラックボディにオレンジのタンクライン、またブラックボディにグリーンのフレーム&タンクラインの2カラーがラインナップされた。


コレを手に入れたのは、二輪専門誌「クラブマン」の編集部で働き始めて少ししてから。それまで乗っていた国産1000㏄バイクを友人に押しつけ、現金10万円を手にしたとき。

先輩編集者ふたりにお願いして、当時東京の環状七号線沿いの上馬交差点近くにあった「グッツィ・スポルト・ジングウシ(現モトラボロ)」に連れて行ってもらい、見繕ってもらったものだ。よくも薄給の年収近いバイクを買ったものだ。若いって、素晴らしい。
 
それから通勤やツーリングはもちろん、誌面の企画でカスタムしたりレースに出場したりしているうちに、グッツィは僕のキャラクターとなっていった。
 
ご存じの通り、グッツィは縦置きエンジン&シャフトドライブというメカニズムを採用している。乗り慣れるとさほど気にならないが、とはいえ横置きエンジン&チェーン(ベルト)という一般的なバイクとは異なる挙動が時折顔を出す。とくにサーキット走行など、エンジンを目一杯回して走るとその挙動は顕著になる。その昔は〝グッツィ乗り〟や〝シャフト乗り〟なんて言葉があったくらい。でもこれが僕を鍛えた。
その操作方法は、サスペンション性能やエンジン性能が格段に進化した最新スーパースポーツモデルにそのままコンバートできるワケではないが、バイクを操作することに対する自分のなかの〝柱〟ができた。 
 
でも、なぜグッツィだったのか。それは僕にグッツィ、いやバイクのイロハを教えてくれた現モトラボロの神宮司さんが造ったオリジナルアルミフレームレーサーの存在が大きい。とにかく格好良かったのだ。
 
おおよそサーキット走行には向かないグッツィをレーサーに仕立て上げ、当時ツインレースの最高峰にあったデイトナのバトル・オブ・ツイン
に出場。何度かのチャレンジのあと世界最速の〝JINGUSHI-GUZZI〟と称された。このマシンを見たくて筑波サーキットのツインレースに観戦に行っては金網越しにそのマシンを見つめていた。
 
自分のガレージに停まっているグッツィと〝JINGUSHI-GUZZI〟とは、目的が異なるまるで別の乗り物だが、エンジンに火を入れたときの排気音や、身もだえするように揺れる車体は同じ。憧れのバイク。だからいままで一度たりとも手放そうと思ったことがない。
 
とはいってもしばらく火を入れていないと心に穴が空いたままだ。この穴、早く埋めなくては…。

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text : 河野正士/Tadashi Kohno
1968年高知県生まれ。フリーライター。二輪専門誌の編集を経験した後、フリーランスのライター、編集者として活動。数年前にオフロードにも目覚め、年に数回のフリーライディングを楽しむが、ときどきハングオンしてしまう万年初心者ライダー。それを克服しようと、日夜Youtubeのオンボード映像でイメトレに励む毎日。

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