忘れられないこの1台 vol.44 HONDA DREAM CB400Four

アヘッド HONDA DREAM CB400Four

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スーパーカー・ブームに一段落の気配が漂い始めてたから、きっと1978年頃、中学2年生のときだったと思う。暇さえあればクルマ雑誌を広げていた僕は、オートバイにも興味を持つようになっていた。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.122 2013年1月号]
Chapter
vol.44 HONDA DREAM CB400Four

vol.44 HONDA DREAM CB400Four

▶︎1972年に登場したCB350 Fourの後継車種として1974年にデビュー。中型クラス唯一の4気筒モデルとして注目を集めた。発表当初は408㏄の排気量だったが、1975年の運転免許改正により、中型限定自動二輪免許でも乗れるように、エンジンをショートストローク化し、398㏄とした。4本のエキゾーストパイプが斜めに配置されるデザインが当時としては斬新だった。


クルマの免許は遠くてもオートバイの免許は1年ちょっとしたら取れる、と気付いたからだ。友達の兄貴のミニトレを運転させてもらい、エンジン付きの乗り物を走らせる楽しさと風を切る爽快さを知ってしまったのも大きかった。

そんな頃、僕は出逢ってしまったのだ。目の前でヒラリと左に傾いて、流れるように美しいエキゾーストパイプを見せつけながらコーナーを抜けていく赤いホンダに。その瞬間からそのオートバイは、僕にとっての永遠の憧れになった。

──ホンダCB400F。

その時点では生産中止になっていたけど、400㏄クラスで唯一の4気筒エンジンを積んでいて、純正の集合マフラーはそのままでも何ともいえない気持ちいいサウンドを放っていて、それより何より断然カッコよかった。衝撃的だった。絶対にヨンフォアを買う、と心に決めた。まるでガキの初恋、みたいなものだ。

そして僕は念願を果たす。7年も後になって、だが…。高校時代は免許の取得が許されない規則だったし、うかうかしてるうちに中古車の相場は上がる一方で、そうこうしてるうちにクルマの免許を手に入れてポンコツを乗り回すようになり…で、なかなか手を伸ばせずにいた。そして、やっと思い切ったわけだ。
ヨンフォアは素晴らしかった。最高だった。速くはなかったけど、滑らかに吹け上がっていくフィールは気持ちよかったし、サウンドも心地好かった。50㎞/hで流していても、存分に興奮できた。

だから、あっちこっちを漂流した。それに走らせないでいても楽しかった。眺めてるだけでうっとりできた。ガレージの中でヨンフォアを前にして、いったい何本のビールを開けたことか。

なのに3年くらいして実家の使っていない部屋に仕舞い込みに行って以来、僕はヨンフォアを眠らせてしまった。理由らしい理由はない。クルマ雑誌編集者の仕事がやたらと忙しくなって乗る機会が極端に減り、車検が切れ、梅雨が来たから、くらいのものだ。

ずっと手放す気にはなれないまま、もう20年以上が経ってしまった。会社員をヤメて持ってた何台かのクルマを全て手放したときも、残しておこうと思った。いずれ手を入れ直して走らせる気持ちはあるのに、今もまだ何もしていない。

だからこうして日々の中でヨンフォアを想うとき、昔と同じように胸がときめくくせに、その奥の方ではチクリチクリと痛みが走る。今日はちょっと、痛みの方が強いけど…。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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