オンナにとってクルマとは Vol.64 検定からの贈り物

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大学の校舎を訪れたのなんて、何年ぶりだろう。時おりガラス窓からチラリと見えるのは、答案用紙と真剣に向き合っているたくさんの人たち。一昨年から始まった「くるまマイスター検定」は、幅広い人たちにクルマへの興味を抱いてもらい、クルマのある生活を楽しみ、クルマ文化の醸成に貢献したいという思いで設立されたもので、3級、2級、1級に、中学生以下の子ども向けのジュニアもある。

text : まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.158 2016年1月号]
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Vol.64 検定からの贈り物

Vol.64 検定からの贈り物

私は初年度から応援団を務めていて、年に一度の試験日に、受験者のみなさんと試験後のひと時を過ごしてきた。試験は1時間に100問(ジュニアは50問)を解かなければならず、その緊張を思うと私まで心臓がバクバクしてしまった。

3ヵ月前、この検定にチャレンジしたいという女性たち5人と話をした。初代コペンをずっと大事に乗っていたり、GT-R命で高速をカッ飛ばしたり、普段からクルマが大好きで、それぞれに濃い知識も経験も持っている女性たちだ。

でも、いざ検定を受けようと過去の問題集や、予習用のガイドブックを読んでみると、知らないことだらけでショックを受けたという。「どこから手をつけたらいいかわからない」と、なんだか自信なさげな表情だった。

どんな問題が出るのかというと、例えば3級では、「映画『007は二度死ぬ』(1967年)で、オープンカーに改造されて登場した日本車は次のうち、どれですか?」(1)日産フェアレディ (2)トヨタ2000GT (3)日野コンテッサ (4)プリンススカイライン というもの。

男性や年輩の人なら、答えは(2)でしょと即答できそうなものだけど、若い女性はわからない。そんな昔のことなんて知らなくても、クルマ好きとして楽しく生きていくことはできるのだ。

でも、少しずつガイドブックを読んで勉強をしていくうちに、彼女たちは変わった。それまでは自分が好きなクルマにしか興味がなかったのに、他のクルマのことや、歴史、時事問題、モータースポーツのことまでも、「もっと知りたい」「面白い」と思うようになったという。

勉強ノートを作ってシェアしたり、SNSで励まし合ったり、カフェでのお茶タイムや通勤電車にも、彼女たちはガイドブックを手放さなかった。

試験が終わったあと、ひとりが言った。「明日からもう勉強する必要がないのかと思うと、なんか寂しい」 そう感じるほど、毎日頑張ってきたのかとジーンとしてしまった。そしてきっと、彼女たちにとってクルマは以前よりもずっと、人生を潤す大きな存在になっていることと思う。
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まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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