忘れられないこの1台 vol.50 ローバー ポール・スミス・ミニ

アヘッド ローバー  ポール・スミス・ミニ

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'91年、ちょっと面白そうかと試乗してみたローバーミニ・クーパー1.3。即決でハンコを押した。エアコン、パワステもなく、チョーク引かなきゃエンジンも掛かりゃしない、乗り心地も…とにかく面倒なことは多々あったが、それらを含めて自分がクルマと一体感を持って走るような感覚は楽しいものだった。もちろんデザインの良さは言うまでもなく。

text:佐々木博昭 [aheadアーカイブス vol.128 2013年7月号]
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vol.50 ローバー ポール・スミス・ミニ

vol.50 ローバー ポール・スミス・ミニ

▶︎'97年の東京モーターショーで発表された、鮮やかなマルチストライプを纏ったコンセプトカーを発端に翌年1500台の限定車として登場。ポールスミスがローバーとの会議で、自ら着ていたブルーのシャツの一部を切り取り、ボディーカラーに提案したという。他にブラック、ホワイトがある。


ミニといえばドレスアップが欠かせない。何千種類ものアフターパーツの存在を知ったことで、「カスタマイズ欲」が沸き上がってきたことは我ながら意外だった。そして、ドレスアップ天国もしくは地獄に一歩足を踏み入れたのだが…。その後、転職や引越しなど諸事情からミニを手放すことになってしまった。

それから4年後の'98年、ポール・スミスとのコラボによる限定車が発売されると知り、再びミニに乗ることを決めた。あの独特なボディカラーのブルー、そしてエンジンルーム内など目に見えない部分への配色のこだわり、といった一般的なクルマとは一線を画したデザインはとても新鮮だった。

で、いざオーナーになってみると、こんな限定車にドレスアップなんて恐れ多くなってしまった。だから、ドアハンドルやシフトノブを自力で交換するのが限界で、なんだかモヤモヤしてきた。でもお金が掛からず、少なくとも「地獄に足を踏み入れず」に済んでよかったと自分を納得させた。
オリジナルでも個性があるので時々変なことが起きる。例えば、自分の駐車場にミニを取りに行くと、勝手にミニを雑巾掛けしているオバチャンが!

「あんまり汚れてかわいそうだったから、拭いといたわよ〜」

…駐車場の大家さんだった。なんてお優しい…ってむしろ汚れていたが。またある時は、警官が近寄って来て「こんなの売ってないでしょ、自分で塗ったでしょ?」と意味不明な疑惑の眼差しを向けられたり。とにかく見知らぬ人にも話しかけられることも時々あって、ミニを通じての人との繋がりもあった。

それから13年間、飽きることなく乗り続けてきたものの、自分の子供が生まれたことをきっかけにまたもや手放すことになってしまった。ミニにはチャイルドシートですら巨大だった。

今では「家族の安全・快適」と、自分の「少々のこだわり」の折り合いを付けたクルマに乗っている。もちろんミニよりいいところはたくさんあるし、大きな不満もない。でも、あのクルマにしかない魅力は確かにあった。時々、どうすればまたあのミニにもう一度乗れるか、ちょっと考えてみたりする。

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text:佐々木博昭/Hiroaki Sasaki
1967 年生まれ。情報機器メーカーとデザイン事 務所勤務を経て独立。パッケージや雑誌などグラ フィックデザイン全般を手掛ける。本誌アートディ レクター/デザイナー。
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