武闘派が身につけた上質感 〜スバルWRX STI

WRX STI  正面

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WRX STIのような個性の強いスポーツモデルにとって、クルマを操る楽しさとは何か。それはもう、言うまでもなく、ドライバーの操作がいかに素早く、忠実かつ正確にクルマの動きとして返って来るかである。

text:桂 伸一 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]

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武闘派が身につけた上質感 〜スバルWRX STI

武闘派が身につけた上質感 〜スバルWRX STI

といって、スポーツモデルだからやたらにシャープ、クイックなモデルもあるが、それはやり過ぎ。

スバルはWRXに限らず昔からドライバーの操作をいかに忠実にクルマの動きとして反映するかに注力してきた。AWD技術で直進安定性を確かなものにしておいて、ハンドリングはドライバーが早く操作すれば早く、滑らかならば滑らかな動きとなる。

それは世界の優れたモデルの共通項でもある。だから欧州でも高い評価を受ける。自動車文化が根付いている欧州では当然の話なのである。

で、新型WRX STIは何が変わったか。ステアリングを切った際の動きに遅れや抵抗感がほとんどなくなった。それは19インチタイヤだけのせいではないだろう。

タイヤの偏平率が40から35と「薄皮になった」、つまりホイールの動きにタイヤの捻れ、撓(たわ)みがより少なくなり、剛性が高い分、反応が良くなった。
「ステア操作に抵抗感がない」のはセンターデフが電子制御化されて抵抗が少なくなったからだ。従来はギアに機械的な抵抗があり、前後輪の回転差を受けるセンターデフに引きずり現象=抵抗があった。

新型はその抵抗がなくなったことでまずは回頭性が自然になった。そして、コーナー入口から少ない舵角でも曲がりやすいため、タイヤのグリップ力に余裕が生まれる。なのでコーナー出口でもインを楽にトレースしていける。ハンドリングの自由度がさらに増した、ということだ。

ただそうなると、一方では乗り味が厳しくなるのだが、そこはサスペンションに隠しワザがあった。

試乗した日本サイクルスポーツセンターの路面には小刻みな波状路がある。そこを新型は舐める!旧型がコツコツとすべてを拾い硬い振動として伝えて来たのに対して、フロントロアアーム後部取り付けポイントを金属ボールからブッシュに変えたことが効いて、路面からの衝撃入力をこのブッシュがソフトに吸収、いなして、乗り味は劇的に変化した。

さらにブレーキはペダルを踏んだ瞬間に頼もしいと思える反応をする。硬いブレーキパッドをローターに自分の素足で押し付けて制動するようなダイレクト感。ペダルタッチの変化、耐フェード性、減速Gのどれをとっても世界基準に合致する。

新型WRX STIの乗り味はどこまでも滑らかだ。WRX STIというスバル随一の武闘派が、高級感、上質さを身につけて、クルマの格がもうひとクラス上がった印象を受ける。

欧州のプレミアムチューンドモデルと横並びで比較できる数少ない日本車の1台だと思う。
●WRX STI 車両本体価格:¥3,866,400(税込)
エンジン:水平対向4気筒 2.0ℓ DOHC 16バルブ デュアルAVCS ツインスクロールターボ(6MT)
排気量:1,994cc 最高出力:227kW(308ps)/6,400rpm
最大トルク:422Nm(43.0kgm)/4,400rpm
JC08モード燃費:9.4km/ℓ 駆動方式:AWD

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