埋もれちゃいけない名車たち vol.65 クラスからの解放「BMW 初代ニュー・ミニ」

アヘッド BMW 初代ニュー・ミニ

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〝クラス〟って、いったい何なのだろう? と、ときどき考えさせられることがある。直訳すれば〝格〟だとか〝階級〟だとか〝種類〟だとかになるのだろうけど、自分の意志とは関係なく他人のこさえたヒエラルキーに組み込まれるみたいな印象があって、個人的にはあまり好きな言葉じゃないのは確かだ。クルマに関してもそうだ。乗ってるクルマで「ああ、キミはそういうヒトなのだね」と決めつけられるような、〝余計なお世話〟感が堪らなくイヤだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.181 2017年12月号]
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vol.65 クラスからの解放「BMW 初代ニュー・ミニ」

vol.65 クラスからの解放「BMW 初代ニュー・ミニ」

そういうどうでもいいけど時としてめんどくさい呪縛のようなものから距離をおける、〝クラスレス〟なクルマってないものだろうか……? と考えて、パッと頭に浮かんできたのがこのクルマだった。今はこういう言い方はしないけど、〝ニュー・ミニ〟、つまり新世代のミニだ。

皆さんも御存知のいわゆるクラシック・ミニ、つまり旧ミニは、その小さな姿に反して素晴らしく偉大なクルマだった。40年にわたる生産期間の前半は普通の人の暮らしを豊かにしてくれるよくできたアシとして、途中からはそれに加えてクルマ好き達の十人十色の望みを柔軟に受け止める懐の深い趣味車として、世界中で親しまれた。生産台数およそ530万台。けれど、時代を超えて生き抜くにはあまりにも古めかしく、時代とともに生きるにはあまりにも小さかった。

そこでローバーから開発途中のモデルとミニのブランドそのものを引き継ぐことになったBMWグループが再設計し、それまで進んでいた路線から軌道を少々変更してまとめたのがニュー・ミニだ。

2001年に発表された新世代のミニは、当然ながら時代が求める要素を全て満たし、軽自動車よりも小さかった先代からグッと大きくなった常識的なボディサイズを持って使い勝手の良さを増していたが、パッと見の印象は世界中で愛された旧来のミニのイメージをそのままキープしていた。

そして嬉しいことに、従来のミニが持っていた日々の暮らしのための小粋なツール、ちょっとしたスポーツギア、乗り手の個性を引き立ててほんのりと主張してくれるようなファッション性といった世界観を、そのままキープしてもいた。

そして何より重要なのは、ジャーマン・エンジニアリングが入ったことによるカチッとした乗り味や、見ても触れてもハッキリと判る上質さを手に入れていたこと。チープさを完全に排除したことで、経済的なバックボーンの多寡に関わらず、言い訳なしに〝好きで乗ってる〟というスタイルを堂々主張できるクルマへと変貌したのだ。ロールスが隣に並ぼうが「だから何?」なのである。

ダンヒルのスーツだろうがユニクロのTシャツだろうが無理なく受け入れてくれるクルマ。世界のどこを探してもそうそうあるもんじゃない。

BMW 初代ニュー・ミニ

初代ニュー・ミニがデビューしたのは2001年のこと。1994年にローバーを傘下に収めたBMWが、ローバー中心の開発からBMW中心の開発へと柱を移し、ドイツのエンジニアリングとクオリティを盛り込んだプレミアム・スモールカーとしてクルマ作りを進めたもの。

ボディは3ドアのハッチバックとコンバーチブルの2タイプで、“普通”“結構スポーティ”“物凄くスポーティ”の3段階のグレード分けがなされ、濃厚に残された“ミニ”の世界観の中のどの部分を望むかでクルマ選びをすることができた。搭載エンジンは1.6ℓの自然吸気とスーパーチャージドだった。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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