私のSAFETY POINT vol.2 紙コップのコーヒー

クルマに乗ってモノを書く……なんていう仕事を長年やってるうちに、知らず知らず身につけたモノやコトというのは幾つかある。愛用のドライビングシューズはもちろんだし、サングラスもそう。でも一番欠かせないのは、もしかしたら紙コップに入ったコーヒーかもしれない、と思う。あんたはシロートか? と誹られるかも知れないけど、僕にとっては大切だ。

text: 嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.136 2014年3月号]

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vol.2 紙コップのコーヒー

vol.2 紙コップのコーヒー

アヘッド コーヒー

──なぜか。クルマのドライビングに対する自分のアクションが、いつも以上にていねいなものになるんじゃないか? と感じてるところがあるからだ。紙コップ入りのコーヒーをドリンクホルダーにおさめて走ると、下手をすればクルマの室内を飛沫で汚してしまう可能性があるわけで、それを避けるためには、クルマの動きは穏やかである必要がある。

走り始めや速度を上げるときのスロットルの踏み込み方、速度を落としたり停止するためのブレーキペダルの踏力調整、曲がったり何かを回避したりするためのステアリングの操作といったひとつひとつに、粗さがあってはいけない。加速Gも、減速Gも、横Gも、すべてがふんわりと始まり、ふんわりと収束しないとならない。

だからじわっと速度を上げるし、巡航するスピードも穏やかでいるし、車間距離もたっぷりととるし、信号のタイミングと交通の流れを読んでスロットルを早めに放そうと常に準備してるし、ブレーキペダルの踏力もガツンとはやらずにすーっと一定。そういうドライビングを、無意識に心掛けるようになる。

無類のコーヒー好きだから、あれば上機嫌でいられる。ある程度までは眠気覚ましにもいい。何より1日に500㎞や700㎞を独りで走るようなこともそれなりにあり、燃料が心許なくなるまで走り続けちゃうような性格だから、飲みきればサービスエリアに入って新たに買うしかない、飲み続けていればトイレに行きたくなり、と休息をとるキッカケにもなってくれる。

もちろん試乗や撮影のためにお借りするクルマでは万が一にも汚せないので自分のクルマで走るときにほぼ限定されるのだけど、いつしか身についてしまったこのおまじないみたいな習慣を、僕はやめられないでいる。ただ残念なことに、『頭文字D』の藤原拓海くんのレベルには何年経っても達しないので、持ち込む紙コップは絶対フタ付きに限るのだけど。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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