かつて広く採用されていた1本ワイパー(シングルワイパー)…なぜなくなったのか?

実は国産車の採用例が多い

ワイパー

メルセデス・ベンツがEクラスに「パノラマワイパー」を採用したのは1985年ですが、国産車ではそれ以前からシングルワイパー車は存在しました。

とはいえ自動車の黎明期にワイパーが一本しか無い例はいくらでもあり、スバル360の初期型もシングルワイパーだったりしますので、「明確にシングルワイパーを売りにした」車種としては1979年に初代S110型日産ガゼール(大昔のシルビアの兄弟車)のハッチバックモデルが、シルビアともども採用した「ワンアームワイパー」が初めてのようです。

その後1981年にはいすゞ・ピアッツァが、83年にはホンダ・プレリュード(2代目)が、85年には軽自動車のホンダ・トゥデイ(初代)が採用しているので、シングルワイパー自体はそれほど大した装備では無かったのです。

メルセデス・ベンツのパノラマワイパーは伸縮式

当時のメルセデス・ベンツの販売元だったヤナセも「今更ながらのシングルワイパー」だった事は理解していましたので、当時の広告では「伸縮式アーム」を謳い文句にしていました。
フロントガラスのほぼ中央直下にあるワイパーアームに独自のクランクやリンク機構を設け、本来なら単純に回転運動をさせるだけのワイパーギアを、「M字状に動かす」という、とても複雑な仕組みになっていたのです。

しかしその仕組み自体には大変に意義があり、前述したシルビア/ガゼールなどは確かに一本のワイパーで大面積を拭き取る一方、一部ワイパーブレードがフロントガラスからはみ出してみたりと、何とも「大味」な機構だったのですから、高級車であるメルセデス・ベンツがそのような安っぽい仕組みにするわけがない、というのは当然の事でした。

実は問題だらけ

国産車も含めて鳴り物入りでデビューしたシングルワイパーでしたが、実のところ問題だらけもいいところの欠陥装備でした。まず、一本のワイパーで2本ワイパーなみの拭き取り面積を確保しなければならず、それを同じ時間でとなると、ワイパーの速度を上げなければいけません。

豪雨の中でワイパーの速度を高速側に切り替えれば、猛烈な速度でギコギコ動かしますし、ワイパーを動かす範囲も広いのですから、モーターに負荷がかかります。

それだけならまだ良かったのですが、当時のドライバーには「シングルワイパー車の横には並ぶな」という言葉までありました。高速で勢いよく、広い面積を拭き取るシングルワイパー…ものすごい速度で大量の水を左右に吹き飛ばしてきますから、左右のドライバーにとってはかなり迷惑…ということも。

信号待ちで止まっていても、並んだバイクや歩行者に容赦無く水責めを行うシングルワイパーに、ドライバーの方が気を使ってしまう始末でした。

パノラマワイパーはさらに問題だらけ

それだけなら、停車時にはワイパーをゆっくり動かすギミックでも搭載すれば良かった話ですから良かったかもしれませんが、いずれにしても1本故障したりワイパーブレードのゴムが切れれば途端に視界確保が困難になるシングルワイパーは、国産車でまずなくなっていきました。

いくら格好が良くても、安全性に支障があればどうにもなりません。

そしてメルセデス・ベンツの「パノラマワイパー」には、ワイパーアームを伸縮させるための複雑なリンク機構に樹脂製のギアを使っていたので、経年劣化で摩耗や欠損によりワイパーアームがマトモに作動しない…という欠陥がありました。

当時、メルセデス・ベンツでこのような不手際は珍しいとも言えるものでしたが、どうも定番のトラブルにまで発展したようで、樹脂製の純正ギアを金属製に交換するアフターパーツまで存在します。

また、そうした部品交換作業などのメンテナンスについても、古いメルセデス・ベンツを扱った経験のある業者でなければノウハウが無いので、どこでも気軽に作業できるともいきません。

工業製品というのは機械的に複雑になるほど故障の元になりますので、現在のメルセデス・ベンツから「パノラマワイパー」が消えたのは当然の結果だったと言えるでしょう。

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