ダウンサイジングターボ化進む、ターボでどれだけパワーアップできるのか?

アルトターボRS

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ドイツ車からはじまった「ダウンサイジングターボ」トレンド。いまや多くのメーカーが採用するテクノロジーとなっています。単純に、排気量を小さくすることで省燃費を実現させているのではありません。小排気量・少気筒数で必要なパワーを得ることが、ダウンサイジングターボを環境指向のエンジンとして評価させた大きな理由です。

では、ターボをつけることでエンジンはどのように変わるのか、どれほどパワーアップするのか、あらためて整理してみましょう。

文・山本 晋也
Chapter
NAは大気圧で、ターボは過給して吸い込む
ターボの威力は馬力より最大トルクに現れる
モータースポーツでは排気量を1.7倍に換算

NAは大気圧で、ターボは過給して吸い込む

ターボ(過給)エンジンの反対語といえるのが「NA(自然吸気)エンジン」。NAエンジンは、基本的に大気圧のまま空気を吸い込んでいます。一方、ターボ(過給)エンジンというのはターボチャージャースーパーチャージャーといったメカを利用して、気圧を高くすることです。そうすることでNAでは不可能なくらい、多くの空気をエンジンに送り込むことができます。

エンジンは、吸い込んだ空気中の酸素と燃料を反応させることで出力を発生させています。そのため吸気量を増やすことができれば、それだけパワーを上げることが可能です。これが大まかなターボエンジンの特徴となります。

それを行う過給機は、前述したようにターボチャージャースーパーチャージャーの2種類に大別されます。スーパーチャージャーがエンジンの力を使って動かしているのに対して、ターボチャージャーは排気エネルギーを利用して過給しています。つまり、パワートレイン全体として見た場合、ターボチャージャーはより効率的。エネルギーの無駄遣いになっていないどころか、再利用とさえいえるのです。これはダウンサイジング“ターボ”が環境エンジンといわれる所以でもあります。

さらにいまどきのエンジンではEGR(排気再循環)による高効率化も効果的な要因。EGRと過給の相性がよいのもダウンサイジングターボが増えている理由といえます。

ターボの威力は馬力より最大トルクに現れる

では、同じエンジンでターボとNAを比べると、どのくらい実力に差が出るのでしょうか。排気量が同じエンジンであっても、ターボとNAではピストン形状などが異なります。そのため厳密にはターボとNAでは構成部品が同じというわけではありませんが、いくつか例を挙げてみましょう。

まず同じ排気量でターボとNAが存在する日本車といえば、軽自動車が思い浮かびます。軽自動車の中でも最新モデルの日産「デイズ」で比べてみましょう。

●日産デイズ BR06型エンジン
NA:最高出力38kW(52PS) 最大トルク60N・m
ターボ:最高出力47kW(64PS) 最大トルク100N・m

もう一例、こちらは2019年1月に追加された、ホンダのクロスオーバーSUV「ヴェゼル」の1.5Lエンジンのスペックで比べてみましょう。

●ホンダ・ヴェゼル L15B型エンジン
NA:最高出力96kW(131PS) 最大トルク155N・m
ターボ:最高出力127kW(172PS) 最大トルク220N・m

いずれもターボエンジンのほうがパワーで上回っていますが、注目してほしいのはトルクの違い。この違いこそ、ターボの力強い走り味を生んでいるといえます。もっとも、いまどきのターボエンジンでは電子制御システムを採用し、過給圧を繊細にコントロールしています。

パワーにしてもトルクにしても、過給圧によって大きく変わるのでカタログスペックに乗っている数値がそのエンジンの限界というわけではありません。

たとえば、トヨタから復活したGRスープラには2.0Lターボエンジンを搭載するグレードが2種類ありますが、そのスペックはかたや190kW、400N・m、もう一方は145kW、320N・mと異なっています。このように、NAエンジンよりも設定の自由度が高いのがターボエンジンなのです。

モータースポーツでは排気量を1.7倍に換算

そのためターボ化したから、NAよりもどれだけパフォーマンスアップするのかというのは明確には答えづらいところです。環境性能を優先してわずかなパワーアップにとどめているケースもあれば、チューニングカーのようにノーマルの何倍ものパワーを実現しているケースもあります。一概に何%増しになるとはいえないのです。

参考になるのは、モータースポーツにおけるターボ係数でしょう。排気量で区分しているカテゴリーにおいて、NAとターボを同じ排気量で扱うのはフェアではないからです。レギュレーションによって変わってきますが、いま多く使われている係数は「1.7」。ターボエンジンは、実排気量を1.7倍したNAエンジンと同程度のパフォーマンスを持っていると判断されているというわけです。
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