軽トラのエンジンルームの開け方を解説!座席下・荷台下で異なるポイントとは?

スズキ キャリイ KX

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乗用車ではエンジンは普通ボンネットの中にありますが、ボンネットのない軽トラック(軽トラ)では一体どこにエンジンがあるのでしょうか?普段軽トラに馴染みがない方には意外かもしれません。じつは大型ホームセンターや家具店では荷物運搬用に軽トラを貸し出している店舗もあり、もしそれを借りてトラブルに見舞われたら… 軽トラのエンジンルームの開け方を知っておいたほうが安心です。

CarMe編集部

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Chapter
軽トラのエンジンはどこにある?ボンネットが無い理由
エンジンの配置は「座席下」か「荷台下」に分けられる
軽トラの座席下エンジンルームの開け方【キャブオーバー型】
軽トラの荷台下エンジンルームの開け方【ミッドシップ/リアエンジン型】
ホンダ・アクティ(荷台中央にエンジンがある場合)
スバル・サンバー(荷台後方にエンジンがある場合)
エンジンルームを開ける際の安全対策とよくある誤解
エンジンルームを開ける際の重要な安全対策
初心者が戸惑いがちな誤解と注意点
エンジンルーム内の主なパーツと日常点検のポイント
エンジンオイル量・汚れ
冷却水(ラジエーター液)量
ブレーキオイル量
バッテリー
ウォッシャー液
その他目視点検
軽トラ豆知識:「農道のポルシェ」「農道のフェラーリ」とは?
農道のポルシェ
農道のフェラーリ

軽トラのエンジンはどこにある?ボンネットが無い理由

スズキ キャリイ KX

スズキ・キャリイ KX。軽トラックの代表的モデルの一例。ボンネット(フロントフード)が非常に小さいのが分かります。実はこの奥にエンジンはなく、運転席下など別の位置にエンジンが配置されています。

軽トラックは法律上、車体サイズが長さ3.4m以下幅1.48m以下と厳しく制限されています。

そのコンパクトな枠内で広い荷台と運転席の空間を確保するため、通常の乗用車のように前方にエンジン用の長いボンネットを設ける余裕がありません。

そこで各社は工夫し、多くの軽トラではエンジンを荷台の下か運転席シートの下に配置する設計を採用しています。こうした構造上、エンジンルーム(エンジンカバー)の開け方も一般的な乗用車とは異なり、少し独特な手順が必要になる車種が多いのです。

エンジンの配置は「座席下」か「荷台下」に分けられる

代表的な軽トラックの構造を見てみると、大きく二つのタイプに分かれます。

スズキ キャリイやダイハツ ハイゼットなど現在主流のモデルは、キャブオーバー構造(運転席が車両前方に張り出し、その真下にエンジンを置くレイアウト)を採用しており、エンジンは運転席・助手席シートの直下にあります。一方、ホンダ アクティ(~2021年生産終了)や旧式のスバル サンバー(~2012年生産終了)のように、エンジンを車体中央もしくは後方に搭載するタイプも存在します。

アクティでは荷台の中央下(後輪の前方)にエンジンを搭載するミッドシップレイアウト(MR)を採用し、サンバーでは車体後部、荷台のさらに後方下にエンジンを置くリアエンジンレイアウト(RR)でした。現在新車で購入できる軽トラックは前者のキャブオーバー型(キャリイ、ハイゼットおよびそれらのOEM車種)のみで、ホンダは2021年に軽トラ市場から撤退しています。つまり現行モデルの軽トラのエンジン位置は基本すべて運転席下ということになりますが、中古で旧車を入手した場合などは車種によって配置が異なる点に注意が必要です。

以下では、軽トラックにおけるエンジンルーム(エンジンカバー)の開け方を、エンジン位置が「座席下」にある場合と「荷台下」にある場合に分けて解説します。加えて、安全に作業するための注意点や、開けた際に見える主要パーツ・日常点検ポイント、知っておくと役立つ豆知識についても紹介します。

軽トラの座席下エンジンルームの開け方【キャブオーバー型】

スズキ キャリイ KX

スズキ・キャリイ

まずはエンジンが運転席(座席)の下にあるタイプの軽トラについて、エンジンルーム(エンジンカバー)の開け方を説明します。

スズキ キャリイやダイハツ ハイゼットなどがこのタイプで、運転席の真下にエンジンが収まっているため、一般的な乗用車のボンネットとは開け方がまったく異なります。基本的な手順は次のとおりです。
1. シートを最後部までスライドさせる。(座席を一番後ろまで下げることで、後述の操作が行いやすくなります)

2. 背もたれを前方に倒す。(座面と背もたれの付け根あたりにレバーがあるので引き、シートバックを前に倒します)

3. 座面前部のロックを外し、座面を持ち上げる。(シート座面の前側下部に固定用のキャッチ(留め具)があるので解除し、座面全体を上方向に持ち上げます)

4. 座面を持ち上げた状態で固定する。(シートと背もたれをつなぐ固定ベルト等で固定できる車種が多いです。これで運転席・助手席両方の座面が跳ね上がり、エンジンルーム全体が露出します)
上記の手順はあくまで一般的な例ですが、車種や年式によって細部が異なる場合があります。肘掛け付きのシートを備えた軽トラでは、肘掛け後部付近にあるネジを外してシート全体を前方にずらし、肘掛け部分のコンソールを取り外してから座面を上げる必要があるケースもあります。取扱説明書に従った正しい手順で作業しましょう。

また、作業前には必ずエンジンを停止し、充分に冷えていることを確認してください。走行直後のエンジン周辺は高温になっており、火傷の危険があります。

軽トラの荷台下エンジンルームの開け方【ミッドシップ/リアエンジン型】

次に、エンジンが荷台の下に配置されているタイプの場合のエンジンルームの開け方です。現在では新車でこのタイプはありませんが、中古で流通しているホンダ・アクティトラック(~2021年)や旧型スバル・サンバートラック(~2012年)などが該当します。それぞれ構造が若干異なるため、代表車種ごとに開け方の例を紹介します。

ホンダ・アクティ(荷台中央にエンジンがある場合)

ホンダ・アクティでは荷台のほぼ中央下にエンジンルームが配置されています。運転席や助手席を持ち上げてもエンジンは見えず、代わりに荷台の床板の一部がエンジンカバーとなっています。開け方は比較的シンプルですが工具が必要です。
1. 荷台中央のカバーを固定しているボルトやネジを外す。(エンジン位置に当たる荷台床面の四隅などに固定ボルトがあります。車載工具のレンチ等で緩めます)

2. カバー板を持ち上げる。(ボルトを外すと荷台の床板の一部が外せるようになるので、持ち上げて取り外します)

3. エンジンにアクセスする。(カバーの下にエンジン本体が姿を現します。オイルフィラーキャップや各種配管類が見えるようになります)

アクティのエンジンルームは普段荷台の床下に隠れているため、一見するとどこにエンジンがあるか分からず戸惑うかもしれません。実際、平成年代のアクティバン(バンタイプ)で「オイル交換をしたいがエンジンルームの場所が分からない」という質問も見られました。このように、荷台下エンジンの車種では荷台のマットやカバーをめくり、ボルト留めの蓋を開けるという手順が必要になります。

スバル・サンバー(荷台後方にエンジンがある場合)

かつてのスバル・サンバー(~2012年生産型)は、軽トラでは珍しく車体後部(荷台の一番後ろ寄り)の下にエンジンが搭載されていました。こちらも基本的には荷台の床板カバーをボルトで外して持ち上げることでエンジンルームにアクセスできます。サンバーの場合、さらにユニークな点として車体後端からもエンジンルームを開けられる構造になっています。

具体的には、リアバンパーごと後ろから取り外す方法です。リアバンパーには鍵穴状のスリット(溝)があり、そこにコインなどの硬貨を差し込んで回すと固定が外れます。その状態でバンパーを引っ張るとバンパーが丸ごと外れ、後方から直接エンジンにアクセスできる仕組みです。他メーカーでは見られない独創的な構造で、整備性と機能性を両立していた点はさすがスバル車と言えるでしょう。

エンジンルームを開ける際の安全対策とよくある誤解

エンジンルームを開ける際の重要な安全対策

エンジンルーム(エンジンカバー)を開ける作業を行うときは、安全第一を心がけましょう。

前述のとおり、必ずエンジンを止め、しばらく放置してエンジンが十分冷めてから作業を開始してください。特に座席下エンジンの場合、シート直下のエンジンが走行直後はかなり高温になっており、うっかり触れると火傷してしまいます。

また、作業時は車を平坦で安全な場所に停車し、サイドブレーキをしっかりとかけておきましょう。マニュアル車の場合はギアをローかバックに入れてタイヤ止めをかませるなど、車体が動かないよう十分注意します。

座席やエンジンカバーの固定にも注意が必要です。座面を持ち上げたまま作業する際は、シート固定用のベルトやロッドがきちんと掛かっていることを確認します。万一シートが倒れてくると非常に危険ですし、指を挟む恐れもあります。荷台下のカバーを開ける場合も、開けっ放しの床板が倒れてこないよう安全な方法で支えましょう。

初心者が戸惑いがちな誤解と注意点

初めて軽トラのエンジンルームを開ける人が戸惑いがちなポイントや誤解も整理しておきます。

まず、「ボンネット(フロントフード)を開ければエンジンが見える」と思って探してしまうケースです。キャブオーバー型の軽トラにも一応フロントグリル下に小さなサービス蓋がありますが、開けてもその下にあるのはラジエーター(冷却装置)補機類くらいで、エンジン本体は入っていません。フロント部は衝突時のクラッシャブルゾーン(安全空間)としての役割が大きく、タイヤが車体前端ギリギリまで迫っているデザインです。「エンジンルーム=車の前方にある」という固定観念は捨て、座席下もしくは荷台下にあるカバーを探すのが軽トラでは正解になります。

もう一点、エンジンルームを開ける機会自体が少ないこともあり得ます。軽トラックは丈夫で構造がシンプルなため、日常的にボンネットを開けて点検する習慣がないまま乗られていることもあります。しかし、だからといってまったく点検不要というわけではありません。後述するように、オイルや冷却水など最低限のチェックは定期的に行うことが大切です。特にレンタルした軽トラで遠出する際など、貸出元で整備されているとはいえ念のため確認しておくと安心です。

エンジンルーム内の主なパーツと日常点検のポイント

エンジンオイル量・汚れ

エンジンについているオイルゲージ(油量計測用の細長い棒)を抜き取り、オイルの量と色を確認します。適量範囲に油面があればOKです。量が少ない場合は指定のエンジンオイルを継ぎ足し、黒く汚れていればオイル交換を検討します。

冷却水(ラジエーター液)量

エンジンを冷やすクーラント液の量をチェックします。エンジンルーム内、またはフロントの小窓内部にリザーバータンクがあり、FULLとLOWの表示線の間に液面があるか確認します。不足している場合は推奨のクーラント液を補充します(緊急時は水でも可)。※エンジンが熱い状態で絶対にラジエーターキャップを開けないこと。

ブレーキオイル量

ブレーキの効きを左右するブレーキフルードの量も重要です。軽トラではボンネット内や運転席側の足元付近にブレーキ液用リザーバータンクがあります。蓋の外側から液面を確認し、規定の範囲内にあるか見ます。減っている場合はブレーキパッド摩耗などの可能性もあるため、単純な継ぎ足しではなく専門整備工場で点検してもらうのが望ましいでしょう。

バッテリー

エンジン始動やライト類に欠かせないバッテリーも定期点検項目です。エンジンルーム内または助手席足元などにバッテリー本体があります。端子の腐食や緩みがないか確認し、必要に応じて締め直します。最近のバッテリーはメンテナンスフリー型が多いですが、旧式の開放型バッテリーならバッテリー液が適量入っているかもチェックし、不足時は蒸留水を補充します。

ウォッシャー液

フロントガラスのウォッシャー液も忘れずに。ウォッシャータンクは車種によりますが、フロント小窓内や運転席シート背後などに設置されています。残量が少なければ市販のウインドウォッシャー液を補充しましょう(水でも代用可ですが専用液が望ましいです)。

その他目視点検

エンジンルームを開けた際にベルト類の張り具合や劣化、ホース類のひび割れ、オイル漏れ・水漏れ跡がないかなどもざっと確認しておくと良いでしょう。車体の下を覗き込んで滴下物(漏れた液体)が無いか見るのも有効です。異常を早期に発見できれば、大きな故障を未然に防げます。
点検はユーザー自身でも可能ですが、少しでも不安があれば無理をせずプロの整備工場に依頼することをおすすめします。特にブレーキ関連の整備は命に関わるため慎重に扱いましょう。

軽トラ豆知識:「農道のポルシェ」「農道のフェラーリ」とは?

最後に、軽トラック好きの間で知られるユニークな愛称(あだ名)について触れておきます。軽トラの話題でときどき耳にするのが「農道のポルシェ」や「農道のフェラーリ」といったフレーズです。これはそれぞれ、ある軽トラックの特徴をスポーツカーになぞらえて呼んだ愛称です。

農道のポルシェ

まず「農道のポルシェ」とは、旧型スバル・サンバーの異名です。サンバーは先述のとおり軽トラでは唯一のリアエンジン・リア駆動(RR)方式を採用していました。その独特のレイアウトや走りが「まるでポルシェのようだ」と評され、「農道のポルシェ」と呼ばれるようになったと言われます。高級スポーツカーの代名詞であるポルシェにちなみつつ、「農道(のうどう)」という言葉で軽トラが主に活躍する田畑や農村の道を掛け合わせている点がユーモアですね。

ちなみに現在販売されているサンバー(2012年以降のモデル)はダイハツ・ハイゼットのOEM供給車であり、エンジンレイアウトもハイゼットと同じく座席下配置のキャブオーバー型です。往年のRRサンバー(農道のポルシェ)は中古市場でも根強い人気があり、愛好家によって大切に乗り継がれています。

農道のフェラーリ

一方、「農道のフェラーリ」はホンダ・アクティトラックの愛称です。アクティはエンジンを車体中央に置いたミッドシップレイアウトでしたが、その点がイタリアの名車フェラーリ(多くの車種がミッドシップエンジン)に通じることから、こう呼ばれるようになったと言われます。さらには同じホンダのミッドシップスポーツカーNSXになぞらえて「農道のNSX」と呼ぶファンもいます。もちろん実際の性能はスポーツカーとは比べものになりませんが、こうした愛称には軽トラへの親しみとリスペクトが込められているのです。

軽トラックは実用車でありながら趣味性も高い乗り物です。エンジンルームの開け方ひとつとっても構造の違いや各社の工夫が見えてきて、なかなか興味深いですね。
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