【プロフェッサー武田の現代自動車哲学論考】第四章:テスラ モデルX

モデルXは、ロールス・ロイスを思い出させた

テスラモーターズ モデルX 75D 大桟橋

※写真は全てモデルX 75Dモデル

今回のテストドライブに供されたのは、モデルXの中で中位バージョンに相当する「100D」。最上級版「P100D」の1,780万円に比べるとリーズナブルだが、それでも車両本体価格にして12,842,000円。

22インチの「オニキスブラック」ホイール、「クリームプレミアム」のレザーインテリア、そして「エンハンスオートパイロット」などのオプションを加えれば1,470万円を超えるという、なかなかに立派な高級車である。

そして、パフォーマンスの面でもモデルXの中堅である100Dは、ほかの各グレードと同じく前後2基のモーターに100kWhのバッテリーを搭載。発生するシステム最高出力はガソリンエンジン的な「ps」換算で500psオーバー、最大トルクも600Nmを大きく超えるという。

その一方で大量の高性能バッテリーを搭載する、しかも堂々たる巨体のSUVということで車両重量は約2.5tにも及ぶものの、0-100km/h加速はわずか4.9秒。つまりは、当代最新のスーパーカーの多くに匹敵する驚異的スペックのスーパーSUVなのだ。

実際、誕生から三年を経ても依然として未来感を失っていないコックピットに収まり、われわれ門外漢には起動しているか否かも判りづらい状態でアクセルペダル(スイッチ?)を踏み込むと、一瞬にしてその動力性能に翻弄されてしまう。

ほぼ無音のまま直線的、あるいは暴力的にスピードを乗せていくさまは、極めて新鮮ではあるのだが、少しずつ理性を取り戻した段階で筆者の脳裏をよぎったのが、筆者が敬愛してやまないロールス・ロイスであった。

テスラが求めているのは旧来の美風ではない

テスラモーターズ モデルX 75D 夜間走行

現代のロールス・ロイス各モデルは、販売価格帯や想定される顧客層もモデルXとはまったく異なる。しかしV型12気筒ツインターボのガソリンエンジンは、モデルXのモーターと同じくらいにスムーズで静か。そして何より、その二次曲線的なトルクフィールには、言葉には形容しがたい「豊穣なドラマ」がある。

とはいえ、テスラが自社のフラッグシップに求めているのは、そんな旧来の美風などではないのだろう。絶対的な重量の割には少々コツコツする乗り心地やロードノイズ。

ショーファードリヴンには向かないリア/3列目シートのサイズやレイアウトを含めて、これまでの伝統的高級車を愛してきたエンスージアストを拒絶するかのような思い切ったクルマづくりは、新しい次元を拓こうとするテスラの想いが体現されている……、とも言えるだろう。

しかし人間、特に一定以上の年齢を重ねた中・高年の「感覚」というのは、思いのほか保守的なものでもあるようだ。テスラ特有のデジタル的なドライブフィールを「頭」では理解できても、長年の運転経験から体に染みついた「感覚」は、どうしてもアナログ的な記憶を比較対象にしてしまうのだ。

EVの高級車はどこから誕生するか

テスラモーターズ モデルX 75D

パテック・フィリップやブレゲなどに代表される超高級機械式時計は、当代最新のスマートウォッチの役割を果たすことはできないのだが、その逆も然りと言うべきだろう。

そして、少なくとも現時点におけるテスラ・モデルXは、最も高級なスマートウォッチに相当するクルマであると筆者は感じる。それでも、もはや自動車の電動化の波を押し返すことができない時代に向けて、これからは伝統的な高級車としての資質をも体現したEVも誕生してくるものとも考えている。

それが、従来の老舗自動車メーカーからなのか……?あるいは、やはりEV業界のトレンドリーダーを自認するテスラモーターズからなのか……?興味は尽きないのである。

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