ライバルはホンダS600!トヨタの小さな名車「ヨタハチ」(UP15)ってどんな車?

トヨタ S800(ヨタハチ)

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1965年に発売されたトヨタの小型スポーツカーであるスポーツ800。現在の軽自動車と変わらないサイズの小さなボディをしたスポーツ800は、"ヨタハチ"の愛称で親しまれました。1960年代の日本製小型スポーツカーとして評価の高いヨタハチを振り返っていきましょう。
Chapter
ヨタハチのベースは大衆車のパブリカ
ヨタハチのエクステリア、インテリアの特徴は?
ライバルはホンダ S600!
トヨタのハイブリッドはヨタハチから始まった?
ヨタハチ復活なるか!?

ヨタハチのベースは大衆車のパブリカ

大衆車を意味する英語の「public car(パブリック・カー)」に由来する、パブリカのエンジンとシャシーをベースに開発された小型スポーツカーがスポーツ800、通称ヨタハチです。

ボディサイズは、全長3,585mm×全幅1,465mm×全高1,175mmとかなりコンパクトにまとまっており、エンジンはパブリカのU型にチューニングを行い、同時にツインキャブレターとした排気量790ccの2U型水平対向2気筒エンジンで、駆動方式はFRでした。自動車には珍しい2気筒エンジンは、独特なバタバタ音を立てながら走ります。ヨタハチの愛嬌とも言えるポイントです。

パワーはチューニングによりパブリカからは向上しているものの、最高出力は45ps/5,400rpm、最大トルクは6.8kgfm/3,800rpmと現代のクルマに比べるとかなり非力であったことが分かります。

ところがこのヨタハチ、最高速は155km/hと当時のスポーツカーとしては十分な性能をしており、レースシーンでも活躍しています。1965年の全日本自動車クラブ選手権で、レースのトップ争いの中、ヨタハチはライバルのホンダS600のスピンに巻き込まれ、車体を復旧するためにピットインして最後尾まで離されてしまいます。しかし、その後16台を追い抜く驚異的な走りで一位に返り咲きました。このレースはヨタハチと、ドライバーの浮谷東次郎の伝説として語られています。

ヨタハチの速さの秘訣は軽量なボディと空気力学

当時、非力ながら高性能を誇ったヨタハチの秘密となったのは、徹底された走行抵抗の削減です。

ヨタハチの開発責任者はカローラの開発者で知られる長谷川 龍雄氏です。長谷川氏はヨタハチ開発以前に航空機の設計を担当していた技術者で、また開発陣には潜水艦の設計をしていた人物などが中心となっていました。空気力学や軽量化の重要さをよく知り、知識が豊富な彼らはヨタハチにも航空機の技術をしっかりと取り入れます。当時の自動車業界では珍しかった風洞実験も行われていたそうです。

その結果、空気抵抗の少ない流線形のボディと、オープンカーには珍しかったモノコックボディの採用、外板にはアルミを使用するといった独特なアプローチでヨタハチの走行性能を高めることに成功しました。車両重量はたったの580kg、空気抵抗係数(CD値)は約0.35というスペックとなっています。

この抵抗の少なさはレースでも有利に働き、1966年の第一回鈴鹿500㎞では一度もピットインすることなく走り切り、優勝しました。レース後のガソリンタンクには、まだ30%程残っていたと言われています。

ヨタハチのエクステリア、インテリアの特徴は?

空気抵抗が少なく軽いボディと機能性のお話をしてきましたが、デザインの特徴はどんなものがあるのでしょうか?

まずはルーフです。ヨタハチは取り外し式のハードトップルーフになっており、オープンカーにもできます。この仕様は現在のポルシェでタルガトップと名付けられているものです。

先駆けと言えばもう一つ、先ほど少しお話ししましたが、モノコックボディを採用したオープンカーとしても、ヨタハチは革新的なクルマだったのです。オープンカーは車体を支える箇所が床面とドア部のみになるので、一般的に強度の高いフレーム式が当時は採用されていました。しかし重量や衝撃安全性などから現在はオープンカーでもモノコックが主流になっています。
続いてインテリアですが、ヨタハチのインパネが特にクラシックカーを感じられる部分となっていて、必要な装備だけをつけたとてもシンプルなものです。当然デジタル機器やモニター、エアバッグも無く、鉄板にメーター類がついただけという感じです。豪華なものも便利なものもありませんが、アナログの機械が並べられたボードはメカ好きをワクワクさせるデザインで、現在に蘇ってほしいとも思ってしまう不思議な魅力がありますね。

ライバルはホンダ S600!

ヨタハチのライバルとして挙げられることが多いホンダのSシリーズですが、なかでもS600は対極の関係にありました。

ヨタハチが上記のようなクルマであったのに対して、2輪のGPレーサーやF1開発で培った技術の粋を集めたS600には、超高回転の直列4気筒DOHCエンジンを搭載。そのスペックは、606ccの排気量ながらも57psの最高出力を、8,500rpmで発揮しました。

ボディは、オープンながらヨタハチよりも重く(695kg)、空気抵抗も大きかったようです。

トヨタのハイブリッドはヨタハチから始まった?

いまやトヨタを代表するまでになったハイブリッドカーのプリウスが、初披露されたのは1995年の東京モーターショー。しかし、それよりも18年も前の1977年に、ヨタハチをベースとしたハイブリッドカーの存在が公開されました。

当時の東京モーターショーでお披露目されたヨタハチベースのハイブリッドカーは、ガスタービンエンジンと電気モーターを合わせたもの。ボンネット上のエアスクープが目印です。

トヨタのハイブリッドカーの先駆けは、ヨタハチであったと言えます。

ヨタハチ復活なるか!?

2015年の東京モーターショーのトヨタブースに展示されたコンセプトカー「TOYOTA S-FR」。86よりも小さなボディの新世代小型スポーツカーで、ヨタハチの後継機種としても話題になったので、記憶にある方も多いと思います。

当初、発売時期は、2017年と2018年とか言われていましたが、現在のところ発売に関する具体的な話が聞こえてくることもなく、一部では開発中止の噂までささやかれています。

とはいえ、マツダ ロードスターをみても、安価で軽量、運転の楽しいスポーツカーを求める層は、世界中に一定数いるはず。他メーカーとの共同開発でも良いので、ぜひ実現してほしいですね。
トヨタ ヨタハチは非力ながらボディに工夫を凝らすことで、レースでも大活躍したクルマでした。また、現在のクルマにも採用されている技術をいち早く取り入れたクルマでもあり、その後多くのモデルに影響したという意味では、パイオニア的モデルとしても、今後も語り継がれていくでしょう。

ヨタハチそのものを実物で見られる機会は滅多になくなってしまいましたが、レストア車の販売や展示は行っているようなので、気になった方はチェックしてみると出会える機会があるかもしれません。
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