ホンダ S600/S800/S2000…ホンダの走りの起源はここに!「Sシリーズ」を振り返る

ホンダ S600

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今回はホンダスポーツカーの起源、Sシリーズについてのお話です。オートバイを製造していたホンダが、初めて世に送った乗用車はスポーツカーでした。それがSシリーズです。

本田宗一郎氏の「既存メーカーと競合するより新しい需要を開拓すること、日本の自動車産業を国際的に通用させるためにはレースによる早期育成が必要で、そのためにはスポーツカーがいる」との判断から生み出されたモデルでした。そんな歴史を持つSシリーズを、振り返りながら見てきましょう。
Chapter
ホンダの四輪はここから始まった
「エスロク」の愛称で知られるS600
ホンダのS シリーズの最終形!「S800」
およそ30年の時を経てSシリーズ復活 「S2000」
Sシリーズの中古車事情は?

ホンダの四輪はここから始まった

S360とS500(AS280型)は、1962年の全日本自動車ショーで公開されました。しかし、後に販売されたのはS500だけで、S360は幻の車となってしまいました。

本格的なライトスポーツであるS500は、デザイン性の高さと優れた性能から若者の心を鷲掴みにします。印象的なボディの赤色は、当時の法律で規制されていたところを、ホンダが独力で許可を取り付つけたカラーでした。それだけでも、人々の目を惹くクルマだったことが想像できます。

しかし、S500の販売期間はわずか1年のみ。その理由は、後継機であるS600が1964年に発売したからです。

そして、このS600がホンダの未来を変えることになります。

「エスロク」の愛称で知られるS600

S500の排気量をアップさせて、”さらなる高性能”を目指したのはS600(AS285型)です。短い期間で更新されたこの2台の、具体的な変化はどこにあるのでしょうか?

一番の違いはやはり排気量アップによるエンジンのスペックの差です。S500の最高出力が32.4kW(44PS)/8,000rpmだったところをS600では41.9kW(57PS)/8,500rpmnに、最大トルクは45.1Nm(4.6kgm)/4,500rpmから50.1Nm(5.2kgm)/5,500rpmへと正統なパワーアップが見られます。

エンジン型式は変わらず水冷直列4気筒のDOHCですが、高回転まで伸びるところに2輪開発出身のホンダらしさがあります。最高速度は145km/hと、S500からは15km/h以上も伸びています。この最高速度は、倍以上の排気量を持つエンジンを搭載した他の車の最高速度と同等でした。技術の高さがなせる技です。

 ボディサイズは全長3,300×全幅1,400×全高1,200mm、ホイールベースは2,000mmと全く変わっていませんが、S600からはクーペモデルが追加されました。

そして、この車はモータースポーツ界にも進出します。小型ながらも他の車を圧倒し、ホンダの名を4輪の世界にも轟かせることになります。

ホンダのS シリーズの最終形!「S800」

S800(AS800型)の発売は1966年、S600の登場から2年後でした。

排気量を606ccから791ccへとさらに拡大することで、世界と戦えるスポーツカーを目指します。見た目に大きな差異は無く、車重も710kgと変わらず軽量なため、パワーアップの恩恵を充分に受けることができました。 

先代のS600から、最高出力は13PS増加して51.5kW(70PS)/8,000rpm、最大トルクは1.5kgm増加して65.7Nm(6.7kgm)/6,000rpmとなっています。結果的に最高速度160km/hと大幅に向上。S500から順調に進化し続けていることが分かります。S800のボディサイズは少しだけ大きくなり、全長3,335mm×全幅1,400mm×全高1,200mmです。

米国への輸出向けにはリアサスペンションの機構を変えたS800Mが開発され、ホンダのスポーツシリーズが世界クラスになったことが証明されたのです。

しかし、1970年には生産が終了。一定の層には人気があったものの、通常の乗用車と比べて需要が低かったのが原因でした。

およそ30年の時を経てSシリーズ復活 「S2000」

本田技研工業設立50周年を記念して1999年に販売されたスポーツカーがS2000です。同時にSシリーズも復活を迎えたことになりました。29年ぶりに復活したホンダのFR車という面でも注目を集めていました。

開発はホンダ NSXを担当した上原繁氏で、評価もNSXに負けず劣らず非常に高いものがあります。S2000の魅力はやはりエンジンです。エンジンのパワーで引っ張ってきたSシリーズの名をしっかりと受け継いでいます。

そんなS2000の排気量は2.0L(後期型で2.2L)。ターボの無い自然吸気ですがパワーは確かなもので、超高回転型ユニットが絞り出す最高出力は178kW(242PS)/7,800rpm、最大トルクは221Nm(22.5kgm)/6,500-7,500rpmとなっています。さすがにS600/S800とは比較できないくらいパワーアップしています。

ホンダ初の四輪開発に際してスポーツカーの開発を提案したのは、あの本田宗一郎氏でした。それだけに、Sの名前には特別な感情と思い入れがあったのだと思われます。

Sシリーズの中古車事情は?

S2000は2009年に生産終了しているので、購入したい場合は中古車から探すことになります。価格相場を調べたところ、2020年6月現在、大手中古車サイトでは全188台、価格帯は99.8~935万円で、平均価格は259.8万円となっています。比較的豊富な市場と言えるでしょう。

また、S500やS600は大手中古車サイトでも見られませんでしたが、S800は一台だけ取り扱いがありました。その価格は570万円です。(2020年6月時点)

SシリーズはS2000で終わったわけではなく、2015年4月に発売されたS660に続いて、S2000の復活も噂されていますから、しばらくはホンダの動きが気になるところです。
ホンダSシリーズの歴史は約60年もあり、Sシリーズの各モデルを比べると、自動車業界の技術進化を感じられます。

現在、S500やS600、S800は殆ど見られなくなってしまいましたが、自動車博物館や記念館での展示や、現在でもレストアして走っている個体も存在しているので、イベント等でお目にかかれるかもしれません。
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