「S8」(S800、AS800C)と「ヨタハチ」(UP15)、あなたはどちらが好み?
更新日:2024.09.09
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よく比較されるホンダ S800とトヨタ スポーツ800(ヨタハチ)はそれぞれどんなクルマで、どういった違いがあるのでしょうか?
ホンダNSXやトヨタ スープラ復活もあり、間違いなくスポーツカー復権の気運が高まっているのが事実。そんな中、ホンダとトヨタが1.0Lクラスのスポーツカーの開発をしている、という噂もここ数年あるわけです。この話の原点となるのが、ホンダS600およびS800、そしてトヨタ スポーツ800(ヨタハチ)の存在です。
ホンダNSXやトヨタ スープラ復活もあり、間違いなくスポーツカー復権の気運が高まっているのが事実。そんな中、ホンダとトヨタが1.0Lクラスのスポーツカーの開発をしている、という噂もここ数年あるわけです。この話の原点となるのが、ホンダS600およびS800、そしてトヨタ スポーツ800(ヨタハチ)の存在です。
ホンダ「S」(S800、AS800C)の系譜
近年、ヒストリックカー人気が高まっており、その中でもホンダ S800、S600は非常に人気の高いモデルとなっています。1960年代に作られたモデルにも関わらず、8,000rpmで最高出力を発揮する高回転型の直4 DOHC エンジンを搭載しており、二輪車メーカーとしてスタートしたホンダの技術の粋が詰め込まれている特別なモデルといえます。
このS600、S800が現存台数や知名度から知られていますが、Sシリーズの元祖は1962年に発表された当時の軽自動車規格で製作された「S360」となります。製作されたものの市販化はされなかったのですが、このわずか360ccの水冷DOHC4気筒エンジンは、商用トラック「T360」に搭載され、市販されています。
4気筒エンジンは製造コストが高くなってしまう事から、後にN360やホンダZ等に搭載される空冷2気筒エンジンが軽自動車の主流になっていくのですが、このT360も時代の仇花というべきか、面白い存在ではあります。
さて、市販化されなかったS360ですが、1963年にボディサイズを拡大、またエンジンを531ccに拡大させたS500をリリース。こちらは44PS/8,000rpm、4.6kgm/4,500rpmといった数値を絞り出しましたが、翌1964年にホンダS600へと進化した為、S500の生産台数は500台前後といわれています。
S800は1966年にリリース。こうしてみると、毎年のようにホンダはSシリーズを進化させてきたことがわかりますね。ちなみにS800とS600の見分け方ですが、ボンネットにボコッとパワーバルジの膨らみがあるのがS800となりますので、すぐわかるようになっています。実際にはこのバルジに意味はなかったそうなのですが、差別化という意味では成功したといえるでしょう。
S800は1966年にリリース。こうしてみると、毎年のようにホンダはSシリーズを進化させてきたことがわかりますね。ちなみにS800とS600の見分け方ですが、ボンネットにボコッとパワーバルジの膨らみがあるのがS800となりますので、すぐわかるようになっています。実際にはこのバルジに意味はなかったそうなのですが、差別化という意味では成功したといえるでしょう。
ホンダ S600、S800の性能は?
■ホンダS600スペック
全長3,300mm×全幅1,400mm×全高1,200mm
エンジン 606cc直4 DOHCエンジン
最高出力57PS/8,500rpm 最大トルク5.2kgm/5,500rpm
最高速度145km/h
車重695kg
■ホンダS800 スペック
全長3,335mm×全幅1,400mm×全高1,215mm
エンジン 791cc直4 DOHC エンジン
最高出力70PS/8,000rpm 最大トルク6.7kgm/6,000rpm
最高速度160km/h
車重755kg
S6からS8へは順当にパワーアップしており、ボディサイズは少しだけ大きくなっています。S8の0-400m加速は16.9秒と、当時のスポーツカーとしては十分な性能です。
S600とS800はいずれも幌のオープン仕様とシューティングブレイク風のクーペが用意されていました。オープンカー仕様があるためボディはフレーム方式をとっており、重量は重くなるものの、車体の剛性は高く、旋回時の安定性や衝撃の耐性が強くなっています。
シャーシの特徴はサスペンションにもあります。初期のS8のリアサスペンションはチェーンドライブと呼ばれる、省スペースを図った個性的な機構をしていました。これは2輪に多く用いられる方式で、ホンダだからこそ思いついたのだと言えますね。
全長3,300mm×全幅1,400mm×全高1,200mm
エンジン 606cc直4 DOHCエンジン
最高出力57PS/8,500rpm 最大トルク5.2kgm/5,500rpm
最高速度145km/h
車重695kg
■ホンダS800 スペック
全長3,335mm×全幅1,400mm×全高1,215mm
エンジン 791cc直4 DOHC エンジン
最高出力70PS/8,000rpm 最大トルク6.7kgm/6,000rpm
最高速度160km/h
車重755kg
S6からS8へは順当にパワーアップしており、ボディサイズは少しだけ大きくなっています。S8の0-400m加速は16.9秒と、当時のスポーツカーとしては十分な性能です。
S600とS800はいずれも幌のオープン仕様とシューティングブレイク風のクーペが用意されていました。オープンカー仕様があるためボディはフレーム方式をとっており、重量は重くなるものの、車体の剛性は高く、旋回時の安定性や衝撃の耐性が強くなっています。
シャーシの特徴はサスペンションにもあります。初期のS8のリアサスペンションはチェーンドライブと呼ばれる、省スペースを図った個性的な機構をしていました。これは2輪に多く用いられる方式で、ホンダだからこそ思いついたのだと言えますね。
トヨタ スポーツ800 ヨタハチは空力重視のスポーツカー
さて、ホンダS600 、S800のライバルとして存在していたのが、ご存じトヨタ スポーツ800です。「ヨタハチ」という愛すべきペットネームも有名ですね。
非常に興味深いのは、このヨタハチとホンダSが対極にあるような存在だからです。ホンダSシリーズは、ホンダが「スポーツモデルをつくる!」と気合を入れてエンジンからなにから専用設計(DOHCエンジンがそれを物語っていますね)としたのに対し、このヨタハチは当時の大衆車「パブリカ」のエンジン、シャーシを流用するなど、開発アプローチが異なりました。
これは現在のメーカーがよく行う手法です。既存のリソースを上手く活用することで開発コストを大幅に抑え、ラインナップを拡充できます。そうしたコンセプトでヨタハチは製作されたのですが、エンジンに徹底的なこだわりを見せたホンダとは真逆に、エンジンは既存のものを使う代わりに、ボディスタイリング、空力に徹底的にこだわったのが興味深いポイント。
設計統括の長谷川龍雄氏は元航空技術者だったそうで、ボディ開発の際には回流水槽で研究を重ね、空気抵抗の低減を目指されています。あの丸みを帯びた近未来的なデザインは、空気力学から考えられたものなのです。空気抵抗対策でプラスチックカバーされたヘッドランプがどことなくトヨタ2000GTとの類似性も感じさせますが、決して意識されたものではないそうです。
結果として、空気抵抗係数0.35以下という当時としては素晴らしいスペックを誇るボディとなりました。
非常に興味深いのは、このヨタハチとホンダSが対極にあるような存在だからです。ホンダSシリーズは、ホンダが「スポーツモデルをつくる!」と気合を入れてエンジンからなにから専用設計(DOHCエンジンがそれを物語っていますね)としたのに対し、このヨタハチは当時の大衆車「パブリカ」のエンジン、シャーシを流用するなど、開発アプローチが異なりました。
これは現在のメーカーがよく行う手法です。既存のリソースを上手く活用することで開発コストを大幅に抑え、ラインナップを拡充できます。そうしたコンセプトでヨタハチは製作されたのですが、エンジンに徹底的なこだわりを見せたホンダとは真逆に、エンジンは既存のものを使う代わりに、ボディスタイリング、空力に徹底的にこだわったのが興味深いポイント。
設計統括の長谷川龍雄氏は元航空技術者だったそうで、ボディ開発の際には回流水槽で研究を重ね、空気抵抗の低減を目指されています。あの丸みを帯びた近未来的なデザインは、空気力学から考えられたものなのです。空気抵抗対策でプラスチックカバーされたヘッドランプがどことなくトヨタ2000GTとの類似性も感じさせますが、決して意識されたものではないそうです。
結果として、空気抵抗係数0.35以下という当時としては素晴らしいスペックを誇るボディとなりました。
トヨタ スポーツ800 ヨタハチの性能は?
■ヨタハチ スペック
ボディサイズ 全長3,585mm×全幅1,465mm×全高1,175mm
エンジン 2U型 790cc 空冷水平対向2気筒OHVエンジン
最高出力33kW (45PS)/5,400rpm
最大トルク67N·m (6.8kgm)/3,800rpm
最高速度 155km/L(推定)
車体重量 580kg
特筆すべきはやはりその空力性能と、軽量ボディでしょう。S600と比較しても12馬力劣っているのですが、最高速はさほど差がなく、車重は115kgも軽いため当時のレースでもパワーで勝るS600に互角以上の戦いをした、という逸話が残されています。また1965年の全日本自動車クラブ選手権、1966年の第一回鈴鹿500kmではS8を含む数々の強豪車にも走り勝っています。
非力なヨタハチがこのような結果を残してきたのは、ボディの軽量化と空気抵抗の低減といった走行抵抗の削減に加え、ピットイン回数の削減という強みがあったからでしょう。走行コストの削減は、そのままクルマの消費パーツの温存に繋がります。コンマ1秒を争うレースではタイヤ、ブレーキ等の交換、燃料の補充といったピットインは必要ながら大きなロスになります。ヨタハチはタイヤ、ブレーキも長持ちし、燃費も良かったので、ロスを減らす事で勝利を収めてきたんですね。
同じ理由で、走行距離の長いレース(ロングディスタンスのレース)で結果的に優位に立てた、というのも頷けるところですね。このように似た形と大きさ、同じ使用目的ながらアプローチの方法が異なる個性の際立った2台。みなさんはどちらがお好みでしょうか。
ボディサイズ 全長3,585mm×全幅1,465mm×全高1,175mm
エンジン 2U型 790cc 空冷水平対向2気筒OHVエンジン
最高出力33kW (45PS)/5,400rpm
最大トルク67N·m (6.8kgm)/3,800rpm
最高速度 155km/L(推定)
車体重量 580kg
特筆すべきはやはりその空力性能と、軽量ボディでしょう。S600と比較しても12馬力劣っているのですが、最高速はさほど差がなく、車重は115kgも軽いため当時のレースでもパワーで勝るS600に互角以上の戦いをした、という逸話が残されています。また1965年の全日本自動車クラブ選手権、1966年の第一回鈴鹿500kmではS8を含む数々の強豪車にも走り勝っています。
非力なヨタハチがこのような結果を残してきたのは、ボディの軽量化と空気抵抗の低減といった走行抵抗の削減に加え、ピットイン回数の削減という強みがあったからでしょう。走行コストの削減は、そのままクルマの消費パーツの温存に繋がります。コンマ1秒を争うレースではタイヤ、ブレーキ等の交換、燃料の補充といったピットインは必要ながら大きなロスになります。ヨタハチはタイヤ、ブレーキも長持ちし、燃費も良かったので、ロスを減らす事で勝利を収めてきたんですね。
同じ理由で、走行距離の長いレース(ロングディスタンスのレース)で結果的に優位に立てた、というのも頷けるところですね。このように似た形と大きさ、同じ使用目的ながらアプローチの方法が異なる個性の際立った2台。みなさんはどちらがお好みでしょうか。
ホンダ S800とトヨタ スポーツ800 ヨタハチの中古車情報
ホンダ S800とトヨタ スポーツ800(ヨタハチ)は歴史に残る名車という扱いになっていますが、一応現在でも購入することができます。国内の大手中古車サイトでは、S800、ヨタハチ共に5台ずつ出品されていました。(2020年6月時点)
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホンダ S800
全てレストア車となっており、価格を提示しているのは570万円の一台のみ、他の4台は応談となっています。走行距離は不明が多く、やはり旧車に理解のある方への販売と思われますね。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホンダ S800
全てレストア車となっており、価格を提示しているのは570万円の一台のみ、他の4台は応談となっています。走行距離は不明が多く、やはり旧車に理解のある方への販売と思われますね。
トヨタ スポーツ800(ヨタハチ)
一方ヨタハチは4台が価格提示されており、価格は400万円から600万円となっています。
走行距離はこちらも不明がほとんどですが、応談価格となっている1台は3.9万kmと明らかになっています。相場としては、S8と同じくらいだと言えますね。
どちらもかなり古いクルマで、旧車、レストア、クラシックカー等のワードに当てはまる希少価値があります。今後この2台をベースにした新モデルが発売される可能性はありますが、当時のS8、ヨタハチが増えることは無いので、価格は向上していくと思われます。
一方ヨタハチは4台が価格提示されており、価格は400万円から600万円となっています。
走行距離はこちらも不明がほとんどですが、応談価格となっている1台は3.9万kmと明らかになっています。相場としては、S8と同じくらいだと言えますね。
どちらもかなり古いクルマで、旧車、レストア、クラシックカー等のワードに当てはまる希少価値があります。今後この2台をベースにした新モデルが発売される可能性はありますが、当時のS8、ヨタハチが増えることは無いので、価格は向上していくと思われます。
ホンダ S800とトヨタ スポーツ800のライバルの系譜は21世紀に引き継がれるか…!?
ホンダS660が2015年4月にリリースされた際、久々の「S」シリーズということもあって、大きな期待が寄せられました。
とはいえ、既存のモデルのエンジンを流用し、64馬力の自主規制でまとめたことに対しては少々残念に思った方も多いかもしれません。
しかし「S1000」がここ数年以内に発売されるという噂もあります。
とはいえ、既存のモデルのエンジンを流用し、64馬力の自主規制でまとめたことに対しては少々残念に思った方も多いかもしれません。
しかし「S1000」がここ数年以内に発売されるという噂もあります。
対するトヨタも2015年の東京モーターショーで「S-FR」を発表しており、そのエクステリアデザインはどこかヨタハチを彷彿させるものがありました。
こちらも近い将来、ニューモデルとしてリリースされるという噂が絶えませんよね。
今後の東京モーターショーで往年のライバルがふたたび相まみえる事となるのか、非常に興味深い展開になってきているのは間違いありません。
こちらも近い将来、ニューモデルとしてリリースされるという噂が絶えませんよね。
今後の東京モーターショーで往年のライバルがふたたび相まみえる事となるのか、非常に興味深い展開になってきているのは間違いありません。
S8とヨタハチ、どちらも珍しい特徴を持つクルマでした。対立しているとは言え、同じ時代の同じ場所で活躍した2台は、良きライバルという言葉が似合います。
さらに半世紀以上も経った現代に、両車とも復活の噂があるのは何とも嬉しく物語のように思えてしまいます。
再びレースシーンで競い合う姿が見れるのか、次の情報を楽しみに待っていましょう。
さらに半世紀以上も経った現代に、両車とも復活の噂があるのは何とも嬉しく物語のように思えてしまいます。
再びレースシーンで競い合う姿が見れるのか、次の情報を楽しみに待っていましょう。