2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.1

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山頂まで誰が一番速く登れるのか。そんな競争の原点とも言うべき、単純明快なレースが97年も続けられている。それは「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(以下、パイクスピーク)」だ。現存するモータースポーツとしては、マン島TT(1907年)、インディ500(1911年)に次ぐ歴史を誇り、初開催は1916年にまでさかのぼる。

text:伊丹孝裕 写真協力 : 三菱自動車工業 [aheadアーカイブス vol.125 2013年4月号]
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2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.1

2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.1

パイクスピークとは、アメリカ中西部のコロラド州にそびえる山のことだ。北米大陸を縦走するロッキー山脈の一部であり、4317mという標高はアメリカで6番目の高さになる。年間登山者数が世界第2位の観光地として知られる一方、モータースポーツの聖地にもなっているのだ。
 
レースの勝敗は極めて分かりやすい。普段は登山道として使われている公道を封鎖してスタート地点を設け、そこから山頂までのタイムを競う一発勝負だ。標高2862mのスタート地点から4301mのゴール地点までの距離は約20km。山そのものの標高が4317mであるから、まさに山頂でチェッカーを受けるダイナミックさが魅力でもある。
 
緑豊かな森林に囲まれてスタートした参加者は、数分後にはその育成限界を突破。やがて、眼下に広がる雲と荒涼とした岩肌によって、自身が駆け上がってきた標高差を知ることになる。その周辺にある「デビルズ・プレイグランド」や「ゲートウェイ・トゥ・ヘブン」といういただきの名前からも、変化に富んだ地形の雄大さがイメージできるだろう。
そうした環境ゆえ、このパイクスピークは長らくモトクロスライダーやラリードライバーの天下だった。最近までコースの大部分はダートであり、当然そうしたステージを得意とするオフロード系レーサーが、スキルを見せつけてきた。80年代には、高性能さが祟り世界ラリー選手権から締め出されたグループBカーの活躍が最後まで見られた場所でもある。
 
しかし、近年は状況が変化した。年を追うごとにダート区間の舗装が進み、昨年はついにコースのすべてがターマック(舗装路)になったのだ。
 
そして、これと並行して参戦車両も変貌してきた。特に4輪部門ではそれが顕著で、急速にEV(電動)化が進んでいるのが特徴だ。以前は、標高が上がるに従って薄くなる酸素濃度と気圧の低下を補うため、大排気量で高出力なエンジン必要としてきたが、EVマシンの動力源であるモーターやバッテリーは外気を取り込む必要がなく、こうした問題から根本的に解放されるからだ。
 
路面がアスファルト化されたことにより競技の特殊性が薄らぎ、多くの人にその速さや性能をアピールしやすくなったことも、変化に拍車をかけている。その大きなターニングポイントが、まさに昨年だった。
4輪部門には、同レースで総合6連覇を達成しているモンスター田嶋こと田嶋伸博を筆頭に、パリ・ダカールラリー2連覇の増岡 浩、モンテカルロ・ラリーで優勝を果たしている奴田原文雄、そしてバハ1000を制した塙 郁夫など、日本のオフロード界を代表するトップドライバーがこぞってEVマシンで挑戦したのだ。メーカーや企業の威信を賭けた最新マシンとともに、それぞれ悲喜こもごものリザルトを残している。
 
一方、2輪部門はまだアナログな雰囲気が色濃い。全面が舗装路になったとはいえ、セパレートハンドルを装備するスーパースポーツモデルのエントリーは制限され、主役はバーハンドルのマシンになる。従って、4輪部門では車両が変貌しつつあるが、2輪部門ではまずライダーの顔ぶれが変わっていくだろう。アベレージスピードの高速化により、オフロード出身ではなく、サーキット育ちのライダーの時代がやって来るはずだ。
 
変わりゆくパイクスピークを自身で確かめるために、伊丹孝裕は今年の2輪部門にエントリーを済ませた。決勝が開催されるのは6月30日。車両はトライアンフの「スピードトリプルR」で挑むことになる。

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text : 伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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