小沢コージのものくろメッセ その6 ドイツから離れて行く日本?

その6 ドイツから離れて行く日本?

アヘッド ものくろメッセ

うちのオヤジ世代ぐらいまでは確かにそうだった。先日、お盆で田舎に行って実感したが、未だに魚釣り、カブトムシ取りの名人がいて、先祖代々の家を大切にし、数十年前に買ったライカのカメラを大切にしている。

さすがに畳の芯を残し、表面のイ草を張り替える畳替えはしてないようだったが、エコロジー精神が自然と身体に染みついており、本物を愛する文化があった。

決して軽薄短小、小手先の便利さ優先ではなかったのだ。ただし、その分、服装はジミだし、非社交的。見た目もダサく、プレゼン能力にも欠けていたように思う。

ところが日本人にはドイツ人とは違うもう一つの側面があった。それは熱しやすく冷めやすい性質だ。それは戦後のアメリカ的大量消費文化やイタフラのラテン文化と結びついて爆発した。

最近は、さらに無責任な中国やネット文化が合わさり、より価値観がハチャメチャになっている気さえする。身なりはファッショナブルになり、結婚は年々晩婚化し、わずらわしい子供はあまり作らなくなり、ラクで享楽的なものを良しとする国になってしまった。

そんな日本人からすると正直、今のドイツは退屈で田舎だ。日本のようなコンビニはないし、カラオケボックスもないし、ハデで賑やかな家電量販店やショッピングモールも少ない。

家屋の平均寿命は100年前後と物持ちが良く、中古車も走行10万キロ以上の古いゴルフに1万ユーロ以上の値が付く。日本だったら価値はないだろう。

最近でこそマクドナルドのようなファーストフードが増え、スマホも蔓延しているが、相変わらず目に付く娯楽はフットボールにビールにソーセージと言った具合で目新しさは薄い。

しかし、その分ひとつひとつが実に深い。地ビールは未だ6000種類もあると言われ、ワインはそれ以上。サッカーリーグにしても全10部あり、それぞれのチームに熱狂的なファンがいる。

なによりクルマ文化だ。ご存じアウトバーンでは人間の限界に至るまでクルマの動力性能が試せて、高速代要らずでどこにでも行ける。運転免許は一度取ったら死ぬまで有効で、余計なお金はかからない。生産されて30年以上経つクルマの自動車税は激安で、週末になるとヒストリックカーがどこからともなく出てきて走っている。

だから私は思うのだ。私のような世代の日本人がドイツに親しみを感じるのは、もしやそこに〝古き良き日本〟あるいは〝理想的日本〟を見て取れるからかもしれないと。

熟練された職人技術、機能美を突き詰めシンプルを持って良しとするデザイン、物を長く使おうとする物質文化。どれをとっても日本人が本質的に心地よく感じ、なおかつ忘れているものだ。

もっともドイツ人に聞くと「いや、ドイツも結構堕落してるよ」と言われるのだが。

-----------------------------------------
text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

アヘッド ロゴ

この記事をシェアする

関連する記事

最新記事

アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives