小沢コージのものくろメッセ その7 正直当分期待できない超小型モビリティ

アヘッド ものくろメッセ

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ここ数年、日本でも時々話題になっている超小型モビリティ。東京モーターショーでは必ず陳列されるので知っている人もいると思うが、簡単に言うと「自動車」と「バイク」の間の乗り物で、見た目的には屋根付き4輪バイクと言ったところだ。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.143 2014年10月号]
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その7 正直当分期待できない超小型モビリティ

その7 正直当分期待できない超小型モビリティ

規定としては全幅いくつとか出力いくつとか確かにあるが、ディテールはさておきこれらがなぜ期待されているかというと、現代自動車社会が抱える諸問題を解決してくれる〝気がする〟からだ。オオゲサに言えばドラえもんのポケット的かもしれない。

具体的には「渋滞」であり「エコロジー」であり「駐車場問題」であり「コスト高」などなど。大抵全長2m、全幅1mちょいなのでクルマ一台分のスペースに2〜3台は入るし、車重500㎏前後なのでエネルギー消費も少ないし、人が1〜2名しか乗れないが、定員5名の自動車でも普段はそれくらいしか乗ってないし、効率的なのは子供でも分かる。特に老人問題を抱える田舎では上手く使えば有効だろう。

さらに今、この手に積極的な日産は、ルノーが作ったフランス製「トゥイジー」を「チョイモビ」として実験運用している。EV(電気自動車)で苦労している同社だけに〝現実的なEVの1つ〟として考えているのだ。

車重が軽いからバッテリーが小さくて済むし、スクーターの延長と考えると航続距離も要らない。特有の欠点をほとんど無視できるリアルEVというわけだ。

だがぶっちゃけ言っちゃうと普及は当分先になるし、いい技術を持っていても宝の持ち腐れになる可能性大で、もしや海外に先を越されるかも と思った。

去年から横浜で運用が始まっているチョイモビに乗ってみたが、案の定、抵抗勢力に配慮しまくりなのだ。個人所有ができないことや、高速道路走行が許されてないのはいいとして、ほぼ好きなところに行くことができない。

借りる時は決められた専用降車ステーションの、しかも〝空いているところ〟を選んでそこへの移動を基本とし、さらに驚いたのは「並走不可」なこと。要するに超小型モビリティの最大の利点である「自由に移動できる」「道路を効率良く使える」をほとんど体感できない。

さらに会員登録を必要とするが、そのためには講習を受けなければならないし、やたらメンドクサイ。というか、某国家的行政機関に遠慮しまくった設定なのだ。

実はこの手の超小型モビリティ、もしくは超小型EVに技術的な問題はほとんどない。細かい使い勝手やコスト問題はあるとして、その気になればどのメーカーでも作れるはずだし、障害は〝政治問題〟だけなのだ。

バイクとどう住み分けるか、自動車交通とどう折り合いを付けるか、安全問題をどう考えるのか。

あれば便利!は分かりきってるし、50万円前後で誰でも乗れるようにすれば爆発的に普及するに決まっている。だが、デメリットが怖くてそこに踏み込めてないのだ。

そのためには自己責任の考えの導入と道路の抜本的整備を必要とするが、そんな兆しはほとんどない。正直、真の普及は当分先になると言わざるを得ないだろう。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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