ロードスター卒業組の新しいセグメント〜アルピーヌ・ヴィジョン

アヘッド アルピーヌ・ヴィジョン

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昨年は19年ぶりにル・マン24時間レースの取材に行って現代のスプリント並のハイスピード耐久を目の当たりにしてびっくりさせられたが、それ以上に嬉しいサプライズだったのがアルピーヌのコンセプトカーの初走行に立ち会えたことだった。往年の名車、A110と連なってユノディエールを駆け抜けていく姿に、最近は自分の中で眠っていることが多いエンスー心が覚醒して、久しぶりにキュンッとトキめいた。

text:石井昌道 [aheadアーカイブス vol.161 2016年4月号]
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ロードスター卒業組の新しいセグメント〜アルピーヌ・ヴィジョン

ロードスター卒業組の新しいセグメント〜アルピーヌ・ヴィジョン

何しろそのサイズ感がいい。50年以上前のA110は全幅が軽自動車+αぐらいしかなく、それに比べればふた回りほど大きいが、現代の目で見れば程よく手の内に収まりそうで小さすぎることもない。

まったく情報がなくスペックもわからなかったが、デモ走行から帰ってくるのをパドックで待ち構えて移動する姿を間近で見ながら追っかけるという、芸能人に対する出待ちのような行動をしたところ、エキゾーストノートから判断するにどうやらエンジンは直列4気筒ターボ。排気量やブーストで出力はどうにでもなるだろうが、300PS前後だろう。

サイズ感はポルシェ・ケイマン程度なので車両重量は1300キロ台というところか? まさに今の自分が欲しているドンピシャなスポーツカーなのだ。

バブルの頃に免許をとった自分は、その頃デビューしたマツダ(ユーノス)・ロードスターからクルマの世界にどっぷりと浸かることになった。

40代はクルマ好きが多い最後の世代と言われるがロードスターにハマった同好の士は数え切れないほどいる。乗ってよし、眺めてよし、イジってよしと、多様な楽しみ方ができるロードスターは幅広いクルマ好きを育てることになったのだ。

今でもロードスターを愛し続けている人は少なくないが、その一方で年齢とともに趣向が少し変わってステージチェンジしたいと思う者もいる。かく言う自分もその一人だが、なかなか理想的なモデルに出会えないのが現状だ。

今のNDロードスターも良くできているとは思うが、もう少し余裕のある居住空間とパフォーマンスがあり、ドライビングからは速く走らせたときの歓びだけではなく、わかってる人達が造ったいいモノ感が欲しい。舌が肥えたオジサンになると、何かと注文が多くなるものなのである。
パフォーマンス的にはロータス・エリーゼ/エキシージあたりがしっくりくるが、プリミティブすぎて居住性もミニマムなので、週末をワインディングで過ごすお一人様仕様といったところ。

アルファ・ロメオ4Cはルックスにはときめいたけれど、乗ってみたら速さは十分なもののイメージしてたような情緒がまったくなくて心が冷えた。結局のところ、ポルシェ・ボクスター/ケイマンがロードスター卒業組の駆け込み寺的な存在なのだろう。

そこに颯爽と現れたアルピーヌには大きな期待を寄せている。アルピーヌとケータハムがコラボしたA110–50はあっという間に話がたち消えたが、今度は市販へ一歩近づいた。アルピーヌ・ヴィジョンをモンテカルロで披露し、カルロス・ゴーン氏が量産をコミットメントしたのだから実現の可能性は限りなく高い。

アルピーヌ・ヴィジョンは0-100㎞/h加速が4.5秒程度とされており、ボクスター級のちょうどいいパフォーマンス。情緒的な味わいなど大切な感覚性能にしても、最近のルノー・スポールはFFでもステアリングを握ってみれば、わかってる人達が造っていることがヒシヒシと伝わってくるので大いに期待していいだろう。

発売は2017年予定。本当に欲しいものは、発売前に情報が少しずつ伝わってきて、じょじょに全貌が明らかになってくる時期が一番楽しい。久々にワクワクが止まらない1年になりそうだ。
▶︎昨年のル・マン24hでアルピーヌ誕生60周年を記念して、突如お披露目された「セレブレーション・コンセプト」に続き、今年の2月中旬、アルピーヌの名を世界的に有名にしたモンテカルロで、より市販型に近い「ヴィジョン」が発表された。

排気量や価格、日本の導入時期などは現時点で不明だが、来年にはヨーロッパで発売される予定だという。

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text:石井昌道/Masamichi Ishii
自動車専門誌編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦経験も豊富。エコドライブの研究にも熱心で、エコドライブを広く普及させるための活動にも力を注いでいる。
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