小沢コージのものくろメッセ その28 イギリスの話は他人事ではない

その28 イギリスの話は他人事ではない

アヘッド 小沢コージ

今や純粋イギリス技術だけで作ってるクルマと言えばクラシックなモーガンぐらい。ご存じ一部のベントレーはVW、ロールスはBMWのプラットフォームを元に作られ、どちらもかつてのEUの縮図のような構造であり、ジャーマンテクノロジーの上にイギリス様式が載ったクルマだ。

だが、僕らにとってはその英独共闘構造こそが脅威だったわけで、今さらモーガンを買う人などほぼいない。それよりケータハム・セブンにスズキの軽エンジンを載せたクルマの方が人気なわけで、そういう現実とは逆の方向にイギリスは動こうとしているのだ。

だが、そういった鎖国的動きや、年配と一緒に沈みゆくのは日本も似ていて同じ島国、宿命的なものを感じなくも無い。

昔、日本辺境論という本を読んだことがあるが、どちらもやっぱり了見狭いか? という意味で結構似ている。ただし方向は微妙に違っていて、例えば助手席チャイルドシートの問題。日本の姿勢や報道としてはそれを推奨しないが、欧州では当たり前。

そのためにエアバッグカットオフスイッチが付いていて、特にボルボは特定の年齢、体型までは後ろ向きチャイルドシートを推奨している。理由はカンタン、正しく使えばそちらの方が親も子供も楽しい上、安全快適に走れるからだ。

実際に子供をクルマに乗せたことのある大人ならわかるはずだが、運転中に車内で子供が泣き叫んだ時の焦りは想像以上。日本はリア席、それも真ん中でのチャイルドシート装着を推奨してるから、運転席から子供の顔も見れないし、時に手も届かない。1、2歳は時に爆発的かつハチャメチャに泣きわめくからこれがとにかく歯がゆい。

知り合いのお母さんなどは「なんで泣くのよ〜もう!!」と半狂乱になるそうで、運転中、突発的に後ろを振り向きたくなる衝動に駆られているはずだ。その状況はとても危ない。だが、日本には「そういう時は3人目が後ろであやせばいいんです」などの理想論を唱えるオヤジが必ずいる。

現実には子供と2人で寝ていて夜中に突然発熱、大雨の中、クルマを使って病院に行きたくなる時などしょっちゅう。しかしその手のオヤジはこうも言うのだ。「だったらタクシー呼べばいいじゃない」と。

一理ないと言えなくもない。だが、個人的には助手席エアバッグカットオフスイッチ付きのクルマで、病気の子供を助手席に乗せ、病院に行く方が合理的かつ早くて安いと思う。だが日本では現実的に難しい。

日本には「人の命は地球より重い」という有名な言葉がある。これは比喩だ。実際には数100万円、数10万円の治療が受けられずに死んでいく人がゴロゴロいる。結局、すべての判断はメリット、デメリットのバランスや取捨選択により行われている。

イギリスが感情で動くならば、日本も独特の感情で動く。自分はそう感じている。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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