ひこうき雲を追いかけて vol.69 タケのこと

vol.69 タケのこと

アヘッド バイク

某輸入車メーカーの懇親会で同じテーブルになったときに、こてこての関西弁で宗平さんからこう言われたのだが、「いやぁ、世の中には鋭い人がいるものだ」というのが偽らざる感想だった。

もちろん、aheadはちゃんと私がつくっている。しかし、私ひとりがつくっていると言えば嘘になる。キモとなる"企画"の裏には前編集長の神尾が控えていて、彼は記憶のデータボックスでもあり、知恵袋でもあり、相談相手でもある。

何より私はクルマとバイクのど真ん中世代でもなく、女性であることがそもそもクルマやバイクの世界においてはアウェイなのである。だから、読者に届く誌面を最優先に考えたとき、ど真ん中世代であり、男性である誰かの力はやはり必要なのだと思っている。

…であるからして、長年、aheadを愛読してくださっている宗平さんの「女性がやっているとは思えない」という分析というか直感は、正しく今のaheadの在り方を言い当てていて、私は感心してしまったのである(宗平さんは「いやぁ、僕は褒めたつもりだったんですよ」ともちろん、悪意などお持ちではなかった)。

"世代"ということでは、私にはいつも思い出すことがあって、それは2011年6月に不慮の事故で亡くなった『RIDERS CLUB』の元編集長、竹田津敏信のことである。神尾を通して知り合ってわずか4年で逝ってしまったので、決して深い付き合いというわけではなかったが、1971年生まれの同い年ということもあって同じ業界での数少ない友だちだった。

私たちの世代はスーパーカーブームにも乗り遅れ、バイクブームにも間に合わず、バブル絶頂期にはほんの少しでその恩恵にありつけず、なんとも微妙な世代なのである。タケの神尾世代に対する態度には羨ましさと怨嗟と、甘えと反抗心と、尊敬と軽蔑が常にないまぜになっていて、そんな自分にいつも少し苛立っているように見えた。

いや実際、そうだったのだろう。神尾には絶大な信頼を寄せていることは誰の目にも分かったが、なんだかいつも生意気な口を聞いていた。

私たちの世代にとって、ど真ん中世代は、まさに目の上のたんこぶ。存在が大きすぎて無視しようにも無視できず、素直に認めるには腹の虫がおさまらず、自分たちの生き方はどこにあるのかと、その存在意義を探してさまよっている。

でも気がつくと、クルマやバイクの世界でも、同世代の活躍を目にすることが多くなってきていて、私にとってもそのことが励みになっている。

もしタケが生きていたら、なんと言うだろう。タケが逝ってからもうすぐ丸7年にもなるのに、今でもそうやって、ときどきタケのことを思い出すのである。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。

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