日本上陸を目前に控えたA110

日本上陸を目前に控えたA110

アヘッド アルピーヌA110

だけど〝上がり〟にしたいクルマなら何度だって考えたことがある。最後の1台にはこれを選びたい、というヤツだ。つい最近も強烈に意識させられた。最新型のアルピーヌA110、である。

クルマ好きなら車名を耳にしたことぐらいはおありだろう。オリジンは1960年代後半から70年代の世界のラリー・フィールドを掌握したフランスの歴史的名車である。小さく軽い車体が可能にした素晴らしい敏捷性とリアエンジンによる抜群のトラクション性能、コントロール性。その戦闘力の高さが、〝闘うマシン〟に不似合いなエレガントな姿に包まれていた。

これも個人的には〝上がり〟にしたい1台だ。が、今回は維持に手間暇を要するクラシックカーの話じゃない。2012年にブランド復活を果たした新生アルピーヌが初めて世に出す、最新型A110のお話。それが抜群に素晴らしかったのだ。黙って目尻が下がり、自然に口笛を吹いてしまうほどに。

〝最新型〟という言葉を使うにはワケがある。新しいA110には初代とよく似たスタイリングと同じ名前が与えられているから、昔の名車の復活版に感じられる人も多いだろう。

けれど、実は「もしA110が進化を繰り返しながら作り続けられていたらどうなっていただろう?」と、オリジンの持つ〝らしさ〟を重視して開発が進められたモデル。そして開発陣の想いのとおり、〝復活〟よりも〝継承〟という言葉が相応しい、最新鋭の〝後継モデル〟に見事仕上がっていたのである。

これは、クルマ好きにとって、とても喜ばしい。ポッと出のどこか浅いモノより、歴史を重んじたストーリーを背負うモノにこそ乗りたいじゃないか。仮に〝上がり〟の1台として考えたら、なおさら無視できない要素であろう。

アヘッド アルピーヌA110

誤解なきよう先にお伝えしておくと、新型A110は、パフォーマンスにこだわるスポーツカー好きを世代問わず満足させられるポテンシャルの持ち主だ。けれど、〝上がり〟のクルマという地平から視ても高スコアをマークできる要素だって、たくさんある。

まず、シンプルかつエレガントなスタイリングと、細部まで心配りの行き届いた質感の高いインテリア。子供っぽさのようなものはどこにもない。ゆえに飽きが来ないし、嫌気がさしたりもしない。

そして、この手のクルマにしては絶妙に素晴らしい乗り心地。脚が豊かに動き、粗さもなく、高級サルーンのように快適なのだ。前後に合計196リッターの荷室があるから、長年連れ添った奥方あるいは恋人との2泊3日温泉の旅、みたいな2シーターらしい使い方にも綺麗にマッチする。

1.8リッター直4ターボのエンジンはフレキシブルなことこの上なく、極めて扱いやすいし、7速DCTの変速も素早くスムーズで、イージードライブを優雅にこなせる、というのもポイントが高い。

アヘッド アルピーヌA110

とはいえ、最も満足感の高いのは、やはり走りだ。エンジンのトルクがあらゆる領域で豊かだし、ステアリングはいい具合にクイックでノーズが面白いように狙いどおり向きを変えてくれるから、緩い気持ちで走っても充分に楽しい。

けれど、ピッと気持ちを引き締めてペダルを深く踏み込むと、さすがに252psに320Nmだから途方に暮れるほどの速さこそないが、その加速は瞬時に気持ちを盛り上がらせるほどには勢いがいい。そして夢見心地の世界にあるかのようなハンドリングとコーナリングパフォーマンス、だ。ステアリングは気持ちよく鋭敏にして極めて正確。

フロントタイヤは常に路面をグッと握りしめ、リアタイヤはニュートラルからオーバーステアまでドライバーの意志次第。しかも一連の動きは手で触れてるかのように解りやすく、見事なまでにコントローラブルなのだ。ドライバーがその気になりさえすれば、どこまでも応えてくれ、楽しませてくれる、一流のエンターテイナーの貌を見せるのである。

日本導入はおそらく今年の末頃か。国内価格は未定だが、現地では5万8500ユーロ(約790万円)と、安くはないけど絶望的ともいえない微妙な辺りにある。ニコニコしながら天に召される日を迎えられるならこれに賭けてみたい……と、ついつい思わされるほど惹かれてしまったのだった。

■アルピーヌA110
車両重量:1,103kg
エンジン:1.8ℓ直列4気筒ターボチャージャー付
16Vガソリンエンジン
駆動方式:MR
最高出力:252ps/6,000epm 
最大トルク:320Nm/2,000rpm*欧州値

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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