“ガイシャ”のイメージを変えるフォルクスワーゲン

アヘッド フォルクスワーゲン フェスト

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ここ数年、輸入車の販売が好調だという。1996年に32万台弱を記録して以来、2009年まで右肩下がりが続いて来たが、2010年から回復基調に乗り、2013年には前年比+10%の28万台を記録。これは軽自動車を除いた国内の登録車販売に占める輸入車のシェアとしては過去最高だそうだ。

聞き手:近藤正純ロバート まとめ:ahead編集長・若林葉子 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.139 2014年6月号]
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“ガイシャ”のイメージを変えるフォルクスワーゲン

“ガイシャ”のイメージを変えるフォルクスワーゲン

中でもとりわけフォルクスワーゲンの躍進ぶりが目立っている。2013年度の輸入車総販売台数のうち、1位が「ゴルフ」、5位「アップ!」、7位「ポロ」、8位「ビートル」と上位10位圏内に4車種が並ぶ。

富士スピードウェイで開催された『フォルクスワーゲン フェスト 2014』の会場で、フォルクスワーゲン グループ ジャパンの代表取締役社長 庄司 茂氏に、好調の理由を聞いた。

庄司 茂  1963年生まれ。神奈川県出身。'85年、早稲田大学卒業後、伊藤忠商事に入社。自動車関連事業に携わり、'94年からマツダモーターハンガリー、2009年からスズキモーターロシアと、伊藤忠商事が出資する現地法人の社長を務める。2012年8月よりフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長兼最高経営責任者に就任。

近藤正純ロバート
 久保田利伸さんの「アップ!」、所ジョージさんの「ビートル」、そしてサザンオールスターズの「ゴルフ」。これらのCMはこれまでのフォルクスワーゲンのイメージを大きく変えましたね。

庄司 茂氏 はい。就任してまず一番に考えたのは、日本の市場に向けて、これまでとは違ったアプローチをしないと〝ガイシャ〟というイメージは払拭できないということでした。それがちょうど「アップ!」の広告宣伝の方向性を決めるタイミングだったんです。いつも通り、本国のイメージをベースにしていこうとしていたので、それではつまらないと。「ゴルフ」なら冒険はできなくても、「アップ!」なんだからもっと遊んでもいいし、失敗したらもう一度やり直せばいいじゃないかと。それであのCMができました。

近藤 しかし、タレントを起用することによってその商品にシンパシーを感じるというのは日本独特の感性ですよね。本国ではブランド構築に関して明確なルールがあるでしょうから、なかなか理解を得られなかったのでは?

庄司 そのとおりです。社内で大きなことを言ってしまって、家に帰ってから、あぁこれは大変だ。本国と交渉しないといけないなあと。「アップ!」の時は最終的に本国が理解してくれるまで、3度ドイツに出向き、なぜ日本のCMではタレントが必要なのか説明しました。

近藤 大変なご苦労があったのですね。でも一連のCMによってフォルクスワーゲンとお客様がより親しい関係になったと感じます。

庄司 CMには、外国の方が最後に「フォルクスワーゲン」とサウンドロゴを発音するものもあるんです。ある時、それを聞いていた私の家内が、何を言ってるか分からないと言うので、日本人の発音に変えました。すると家内も「フォルクスワーゲンのCMやっているわよ」と反応してくれるようになり、こうやって距離感を縮めて行くんだなとヒントになった。それで、もっといろいろチャレンジしてみようと。それが「ビートル」と所ジョージさんのCMにつながりました。あのCMで、「ずっとビートルに憧れていたのですが、何となく買えそうな気がしてきました」という声も出始めて、方向性は正しいのだと確信のようなものが出てきました。そういう感情を芽生えさせていけばいいのだと。最初から立派な計画があったわけではないんです。僕の場合、普段からアタマでいろいろ考えていることが、いくつもの小さなセルの中に入っていて、それが家内の一言のような何かの切っ掛けで全てが関連づけられて、ぱっと方向性が決まって行くんです。

近藤 なるほど。その他にもショールーム以外の場所にクルマを展示したりして、メーカーの方から歩み寄ろうとされている。今までにはなかったことですが、これもこの「距離感を縮めて行く」方向性のひとつなんですね。

庄司 ええ。「アップ!」を導入したとき、ショールームに来るのに、ご自分の軽自動車をわざわざ近くのコインパーキングに停めるお客様がいて、まだまだ敷居が高いということが分かった。ならばこちらから働きかけなければとイベントを増やすようにしました。

近藤 今日のイベントも体験できるプログラムが多いですね。

庄司 ええ。最初の案ではどちらかというと「目で見て知ってもらう」というものだったのですが、それでは面白くない。見るのと同時に体験する、感じてもらえるものにしました。

近藤 フォルクスワーゲンのクルマは、優秀だけど真面目、堅いというイメージが少なからずありますから、こういうふうに楽しめるイベントというのは意味がありますね。

庄司
 真面目なだけではないんですよ、というところを知って頂きたいんです。僕はすべての自動車メーカーの中で、フォルクスワーゲンのロゴが一番かわいいと思っているんです。あのイメージを中心にやっていこうと。

近藤 親しみやすくて近しい。

庄司 そうです。ただし——フォルクスワーゲンのお客様は椅子に座っても、背筋を伸ばしていらっしゃる。ブーツを履いても、ズボンの裾をブーツインまではなさらない。親しみやすくあっても、決して品を失わない。いい意味で〝外車に乗る〟という世界観は大事にしたいと思っています。このイベントもそういう世界観を伝える一環だと位置づけています。 

近藤 本国の反応はいかがですか。

庄司 今は結果を評価してくれていて、日本の市場が変わりつつあるということも感じてくれています。昨年、販売台数が6万台を超えたこと、日本カーオブザイヤーで初めて外国車である「ゴルフ」が受賞したことなどが大きいですね。

近藤
 今後も、日本での〝ガイシャ〟の位置を変化させ続けるフォルクスワーゲンに期待しています。
▶︎4月26日(土)、6年ぶりとなる「フォルクスワーゲン フェスト」が開催された。会場となった富士スピードウェイのステージ上ではピストン西沢さんのMCと音楽がイベントを盛り上げた。

メインサーキットではプロドライバーの運転するGolf Rなどのスポーツモデルに同乗できるサーキットエクスペリエンスや、サーキット内の道路では日本でも発売予定の電気自動車e-up!の先行試乗会など、さまざまな"体験"できるプログラムが用意され、晴天のもと、来場者はイベントを満喫した。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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