かつてのGT-Rのターボ時代と今のMに搭載ターボは何が違うの?

BMW M4 engine

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スポーツモデルのパワーユニットとして、今や世界的にも珍しい直6エンジン。完全バランスが取れたスムーズで澱みのない回転フィールは直6ならではのもので、Mシリーズにも搭載され、多くのファンを魅了しています。中でもM3/M4クーペに搭載される3LのS55B30A型は、M社の技術力が惜しみなく投入された特別なエンジンと言えます。そこで、設計年次に20年もの隔たりがあるのを承知の上で、R32~34スカイラインGT-Rに搭載され、国産直6エンジンの傑作としていまだに根強いファンに支えられている日産のRB26DETTエンジンと比較してみましょう。
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高回転高出力型に進化
燃費・環境性能にも応える

高回転高出力型に進化

どちらも直6DOHCツインターボという点で共通していますが、まずエンジンの基本的な特性を決定づけるボア×ストロークはS55B30Aがφ84.0×89.6mmのロングストローク型(ボアストローク比1.066)、RB26DETTがφ86.0×73.7mmのショートストローク型(同0.857)と異なります。排気量もS55B30Aが2979cc、RB26DETTが2568ccと400cc強の差があります。

一般的にロングストローク型は低中速トルクを稼ぎやすい反面、高回転まで回すのが不得意とされていますが、S55B30Aは鍛造クランクシャフトや軽量ピストンに加え、吸排気のバルブタイミングを連続的に可変させるダブルVANOSや、スロットルバルブを廃したバルブトロニックなどの採用によって高回転化に対応。1850rpmから5500rpmという幅広い回転域で56.1kgmものトルクを繰り出しながら、7300rpmで431psというピークパワーを発生する、高回転高出力型に仕上がっています。

対するRB26DETTもレース用に開発されたエンジンなので数多くの専用パーツが投入され、市販エンジンでは珍しかった6連スロットルなどが採用されていました。当時は自主規制で上限馬力が決められていたため、カタログスペックこそ280ps/6800rpm、40.0kgm/4400rpm(BNR34の数値)に留まっていましたが、過給圧を1.2kg/cm2前後まで高めるだけで400ps、50kgmオーバーを実現できたので、そのあたりが真の実力と言えるでしょう。

燃費・環境性能にも応える

また、燃料供給方式もS55B30Aが筒内直噴、RB26DETTがインテークポート噴射と異なっています。燃焼効率に優れるのは言うまでもなく前者で、パワーやトルクを引き出しやすいのはもちろん、燃費の面でも有利に働きます。

カタログ値で比較するとS55B30AはJC08モードで12.2km/L、RB26DETTは10・15モードで8.1km/Lとなりますが、テスト内容の違いを踏まえると、実走行ではカタログ値以上の差が出るのは間違いありません。

かつてエンジンスペックと言えば、パワーとトルクがひとつのものさしでしたが、今では燃費や環境性能も大きなウエイトを占めるようになりました。S55B30Aは官能性まで兼ね備えながら、時代の要求にもしっかりと応えているスポーツユニットなのです。

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