ストラット、ダブルウイッシュボーン、マルチリンク…サスペンション形式ごとのメリットとデメリット

ストラット形式

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サスペンションには、荷重を支える、振動を吸収する、力を伝える、といった役割があります。使われるサスペンション形式は、各メーカーの持つフィロソフィ(思想)をもとに設計されています。それぞれサスペンション形式には、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
Chapter
良いサスペンション形式とは何か?
コストを抑えられる「ストラット形式」
剛性確保がやりやすい「ダブルウイッシュボーン形式」
性能両立のポテンシャルが高い「マルチリンク形式」

良いサスペンション形式とは何か?

「マルチリンク形式がもっとも性能が良い!」、「ダブルウィッシュボーンのほうがバランスがよくて良い!」、「ストラット形式サスペンションが安くて偉い!」

どれも正解ですが、安い車なのか高級車なのか、乗用車タイプなのかスポーツタイプなのか。採用するクルマの前提条件がないと、ひとつには決められません。そこで今回は、フロントサスペンションに特化し、各形式のメリットデメリットを見ていきます。

サスペンションとは、おもにサスペンションアーム、コイルスプリング、ダンパーによって構成されています。リンクの数や長さ、レイアウトが異なり、大きく、ストラット式、ダブルウィッシュボーン式、マルチリンク式の3通りに分けられます。

では、それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

コストを抑えられる「ストラット形式」

※画像は、86/BRZのマクファーソンストラット

垂直に設置されたショックアブソーバーそのものを、サスペンション構造の一部として利用し、ロアアームとハブ、コイルスプリングとタイヤ・ホイールを取り付けたシンプルな構造です。ショックアブソーバーは、上端を車体側に、下端をロアアームの車両外側へ固定して、サスペンションジオメトリを設定しています。

シンプルな構造のため必要なスペースが小さくて済むので、おもにエンジンルームのレイアウトがつらいFF車に使われています、また構成するパーツが少ないことから、コストも低く抑えられます。

ただし設定変更ができるパーツが少ないため、車種毎のチューニング幅が小さく、性能の作り込みがやや困難です。

剛性確保がやりやすい「ダブルウイッシュボーン形式」

※画像はスカイライン(V35)のハイマウントダブルウィッシュボーン

路面に対してほぼ水平にレイアウトしたアッパーアームとロアーアーム、その上下をつなぐアップライトで構成されています。メリットは、前後剛性と横剛性を分離して設計できる点です。

ハンドリングに影響する横方向の剛性は、2本のアームがタイヤ接地点の横方向からの荷重を支えるため、リンクブッシュ剛性やリンク剛性を高めることで実現できます。

また、乗り心地に影響する前後方向の剛性は、アームが前後方向にスライド移動して衝撃をやわらげるため、軸方向のリンクブッシュ剛性を下げることで実現できます。

この機能分離ができることがダブルウィッシュボーン形式のメリットですが、リンクやリンクブッシュといった部品点数が増えることで、コストが高い、搭載するスペースが必要、といったデメリットがあります。

性能両立のポテンシャルが高い「マルチリンク形式」

※画像はプリメーラ(P10)

ダブルウィッシュボーン形式が上下2本のアームであるのに対して、複数本のアームを持つのが、マルチリンク式です。ダブルウィッシュボーン形式の課題であったスペース不足を多少解消し、さらに細かなセッティングをすることもできます。

メリットは、横剛性は横荷重を支える専用のアームを用意することで上げることができ、さらにリンクブッシュをこじる方向に変形させることで、前後剛性を落とすことができます。

ダブルウィッシュボーン形式を上回る性能ポテンシャルを持つマルチリンク形式ですが、コストがさらに高く、また設計する要素が多いため、設計が悪いと悪影響が如実に現れてしまいます。

なおこのマルチリンク式は、リアサスペンションだと、リンクは防振構造をしたサブフレームという構造を介して車体へとマウントされることが多く、ロードノイズの振動遮断に優れています。

高級車のサスペンションにマルチリンク式が多いのは、より静かなクルマにしたいからなのです。


普段は、タイヤの奥にある目立たない部品ですが、とても大事なサスペンション。コストが高いサスペンションが最良かというと、そうとも言えません。

コストと性能のバランスを考えて、各メーカーがフィロソフィをもってサスペンション形式を決めています。各社の考えが分かると、面白みが増しますね。

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