落下物事故に遭遇したら警察に連絡すべき?初動対応と補償・法的対処ガイド

落下物注意
走行中に突然、道路上の落下物にぶつかって事故になったら -。

高速道路で前方のトラックから荷物が崩れ落ちたり、一般道で思わぬ物が飛び出してきたりしたら、誰でもパニックに陥るかもしれません。しかし、そんな緊急時こそ冷静で的確な初動対応が必要です。

本記事では「落下物による交通事故」に遭った場合に取るべき対応をわかりやすく丁寧に解説します。

CARPRIME編集部

クルマ情報マガジン CARPRIME[カープライム]を運営。
「カーライフを楽しむ全ての人に」を理念に掲げ、編集に取り組んでいます。

CARPRIME編集部
Chapter
代表的な落下物事故シナリオ
警察に通報すべき理由とメリット
【7ステップ】落下物事故発生直後の初動マニュアル
加害者不明でも取れる救済ルート
車両保険で自己負担を最小化
人身傷害・政府保障事業で治療費を確保
道路管理者への請求ハードル
落下物事故に関わる主な法律とドライバー責任
保険でカバーできる範囲と注意点
損害賠償の現実と交渉ポイント
立場別チェック:被害者/加害者/同乗者の対応策
被害ドライバーの場合
荷主・運送業者ドライバーの責任対応
同乗者が知っておくべき補償
まとめ:落下物事故を防ぎ、万一に備える

代表的な落下物事故シナリオ

  • 高速道路での「積荷落下」衝突事故 
    前方を走るトラックの積み荷が崩れ落ち、後続車が避けきれず衝突するケース。高速走行中のため被害も大きくなりがちです。

  • 一般道路での「飛来物」接触事故 
    強風で看板が飛んできたり、前走車から部品が落ちてきたりするケース。

  • 運送業者の「荷崩れ」散乱事故 
    荷物の固定が不十分なまま走行し、カーブなどで荷物が道路上に散乱するケース。


実際に落下物が原因で死亡事故につながった例もあります。例えば2024年1月には、愛知県の東名高速道路で走行中の大型トラックから脱落したタイヤが対向車線を走っていた乗用車を直撃し、運転手が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。

この種の事故では、整備を怠ったとして運転手や整備管理者などが過失運転致死傷罪業務上過失致死傷罪に問われることがあります。

警察に通報すべき理由とメリット

落下物が原因の事故でも必ず警察に連絡すべきです。たとえ自分の車だけが壊れた単独事故であっても、運転者には事故を警察に報告する法的義務があります(道路交通法第72条)。

また、警察に届け出る最大のメリットは、保険金の請求に必要となる「交通事故証明書」を発行してもらえる点です。届け出がないと、保険会社から十分な補償を受けられない可能性があります。

【7ステップ】落下物事故発生直後の初動マニュアル

  1. 安全停止と二次事故防止

    急ブレーキは避け、可能であれば路肩に車を止めます。ハザードランプを点灯し、夜間であれば発炎筒や停止表示板(三角表示板)を設置して後続車に危険を知らせます。同乗者はガードレールの外側など、安全な場所へ避難させましょう。

  2. 負傷者救護と119番の要否 

    負傷者がいないか確認します。ケガ人がいる場合はただちに119番で救急車を呼び、応急処置に努めます。

  3. 110番で警察へ正確に通報 

    負傷者対応と並行して110番で警察に事故を報告します。高速道路上なら1kmごとに設置されているキロポスト(距離標)の数字を伝えると、場所が正確に伝わります。

  4. #9910で道路管理者へ緊急連絡 

    落下物がまだ道路上にあり危険な場合は、道路緊急ダイヤル「#9910」へも連絡しましょう。道路管理者が落下物の回収に向かいます。

  5. 写真・ドラレコで証拠を確保 

    可能な範囲で事故現場の状況(落下物、自車の損傷箇所、道路環境など)を写真や動画で記録します。ドライブレコーダーの映像は上書きされないよう保護しましょう。

  6. レッカー手配で安全移動 

    自走可能に見えても、足回りなどに損傷があるかもしれません。無理に走行せず、保険会社のロードサービスやJAFに連絡してレッカー車を手配するのが安全です。

  7. 保険会社へ速報してサポートを得る

     安全確保と警察対応が一段落したら、自分の加入する自動車保険会社に事故の連絡を入れ、指示を仰いでください。
    逆にいえば落下物を発見した旨の通報を無視した、巡回車が落下物を発見したにも関わらず撤去しなかったなどの事実と、それを裏付ける客観的な証拠があれば、道路管理者に賠償責任の一端を問える可能性があります。

加害者不明でも取れる救済ルート

事故の原因となった落下物を落とした張本人が分からない場合、被害者側の対応も少し変わってきます。

基本的に、走行中に荷物を落下させた車両の運転者には民事上の賠償責任がありますから、加害者が判明すればその人(所属会社がある場合は会社)に損害賠償請求が可能です。

しかし加害者不明では相手に請求しようがなく、残念ながら直接の賠償を受けることはできません。

車両保険で自己負担を最小化

加害者不明の落下物事故は、保険上は単独事故(自損事故)扱いとなります。

したがって自車の修理代は、加入している車両保険を使って賄うことになります。車両保険に未加入の場合や補償範囲外の場合、自費での修理となってしまいます。車両保険を使うと翌年の等級(ノンフリート等級)が1等級ダウンし保険料が上がる点には注意が必要です。

人身傷害・政府保障事業で治療費を確保

人身事故になっている場合、自分や同乗者の治療費・慰謝料については人身傷害補償保険搭乗者傷害保険に加入していればそちらから補償を受けられます。

また、加害者不明・無保険の事故であっても、国の政府保障事業によって自賠責保険と同等の補償を受けられる制度があります。

道路管理者への請求ハードル

「高速道路会社や道路管理者に責任は問えないのか?」という疑問もあるかもしれません。

しかし基本的には、落下物が放置されてから事故に至るまでに管理者が異常を察知・除去する時間がなかった場合、道路管理者の過失とはみなされません。

落下物事故に関わる主な法律とドライバー責任

落下物事故に関して知っておくべき主な法律と運転者の責任について整理します。

  • 道路交通法(積載物落下等防止義務): 道路交通法第75条の10では、自動車の運転者に対し「貨物の積載状態を点検し、積荷の転落や飛散を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定めています。

  • 道路交通法(事故報告義務等): 同法第72条は事故を起こした運転者に警察への報告義務と負傷者救護義務を課しています。

  • 道路法(道路への危害防止): 道路法第43条もまた、道路上に他人に危害を及ぼすおそれのある物件を落としたり放置したりすることを禁じています。

  • 民法(民事上の損害賠償責任): 落下物によって他人に損害を与えた場合、民法上の不法行為責任が生じます。

  • 刑法(故意の場合): 万一起因が故意(悪意)であった場合、危険運転致死傷や殺人未遂等、厳しい刑事罰が科される可能性があります。

保険でカバーできる範囲と注意点

加害者側(落とし主)の保険で賠償される場合:
荷物を落として事故を招いた加害者が任意保険に加入していれば、相手方への賠償は加害者側の保険から支払われます。

被害者側が自車保険を使うケース:
落下物事故の被害に遭った場合、相手不明なら自分の車両保険や人身傷害補償保険を使うことになります。

保険請求で損しないためのポイント:
被害者であっても事故直後に保険会社へ連絡し、等級ダウンや事故有係数を踏まえたうえで最適な補償を選択しましょう。

損害賠償の現実と交渉ポイント

加害者特定時の請求項目と相場:
修理費や代車費用、治療費、慰謝料など多岐にわたります。

無保険・加害者不明時の対応策:
政府保障事業や自分の保険で救済を図り、後日加害者が判明したら求償を検討します。

過失割合・慰謝料計算の落とし穴:
被害者にも前方不注意があれば過失相殺が適用されるほか、物損事故では慰謝料が認められない点に注意しましょう。

立場別チェック:被害者/加害者/同乗者の対応策

被害ドライバーの場合

身体の異常は後から出ることも:
事故直後は緊張で気付かなくても、後でむち打ち症状や痛みが出ることがあります。

証拠の保全:
落下物の破片や現場写真、ドライブレコーダー映像などは後日の証明に重要です。

保険会社と今後の流れを確認:
修理工場へのレッカー搬送や代車手配、示談交渉の代行など、保険会社がサポートしてくれます。

荷主・運送業者ドライバーの責任対応

すぐに現場に留まり救護・通報する:
落下に気付いた時点で必ず車を安全な場所に停め、後続車に合図して二次事故を防ぎます。

警察・被害者への状況説明と謝罪:
警察には正直に事情を説明し、被害者に対しても真摯に謝罪します。

保険会社への速やかな連絡:
加入している対人・対物賠償保険の事故受付に速やかに連絡し、事故状況を報告します。

再発防止策の徹底:
積荷の固定方法や車両の整備状況を見直し、再発防止に努めましょう。

同乗者が知っておくべき補償

安全確保と救急対応に協力:
自主的に周囲の安全確認・負傷者の確認を行いましょう。

事故状況の記憶保持:
落下物を発見したタイミングや特徴を覚えておくと警察の調書作成に役立ちます。

ケガの有無と補償確認:
同乗者の治療費や慰謝料は運転者の人身傷害保険や搭乗者傷害保険から支払われます。

精神的ケア:
事故後の不調が続く場合は専門家に相談しましょう。

まとめ:落下物事故を防ぎ、万一に備える

道路上の落下物による事故は、誰にでも起こり得る身近な危険です。被害に遭った方は突然のことで不安も大きいでしょうが、本記事で紹介したように適切な初動対応と手続きを踏めば、落ち着いて問題に対処することができます。

まずは何より人命と安全の確保を優先し、その後しかるべき警察報告や保険手続きを行ってください。


また、ドライバー一人ひとりが落下物事故を未然に防ぐ努力も忘れてはなりません。荷物を積む際はロープやシートで念入りに固定し、走行中も荷崩れがないか適宜確認しましょう。高速道路では特に強風や振動で荷が緩みやすいため注意が必要です。

他方、後続車側も車間距離を十分にとり、道路情報板に「落下物注意」の表示が出ていたら速度を落として前方に警戒するなど、防衛運転を心がけましょう。

万一事故に遭ってしまった方は、本記事の内容を参考に、迅速かつ冷静な対応でご自身と周囲の安全を守ってください。一日も早く平穏なカーライフを取り戻せるようお祈りしています。
【お得情報あり】CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細