なぜパドルシフト採用車種が増えてきたのか?

近年、ハンドルに「パドルシフト」が付いているクルマが増えてきています。元来、レーシングカー向けの装備でしたが、2017年現在では市販車にも広く採用されている状況。なぜでしょうか?

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採用が急速に増えてきた「パドルシフト」
MT以上に進化をしているAT…
多段化の進むATの操作デバイスとして…

採用が急速に増えてきた「パドルシフト」

ハンドルの奥に2つのレバー状スイッチ「パドルシフト」が装備されたモデルが増えています。スポーツモデルはもちろん、トヨタ ヴォクシーや三菱デリカD:5など、ミニバンや軽自動車にも採用されています。

シフトチェンジは、マニュアルトランスミッション(以下MT)じゃないと…、と考える方には、邪道と思われるかもしれませんが、一度このパドルシフトを使ってみると、その便利さに「これもアリかな」と思うかもしれません。

実際、レーシングカーに搭載されていた装備でもあり、ステアリングから手を放すことなく操作ができるのは、安全性でもポイントが高いのです。

ではなぜ、このパドルシフトの採用が増えているのでしょうか?

MT以上に進化をしているAT…

2017年現在、パドルシフトを採用しているモデルは、100%オートマチックトランスミッション(以下AT)です。

通常のMTは、シフト操作で機械的にギアを変速させます。もちろん、この操作を愛する方は現在でも多く存在しますし、人馬(車)一体感を味わえる機構であることには変わりません。

しかし、2017年4月現在、市販されている車両は、残念ながらATのほうが圧倒的に多く、さらにいえば進化を遂げているのが事実なのです。これにはスロットル等の制御を物理的ケーブルではなく、ドライブ・バイ・ワイヤとよばれる電気制御でコントロールするようになったのも関係していますね。

パドルシフトを持つモデルで、まず挙げなけれならないのが、国産車で多く採用されているCVTです。CVTは無段階変速が可能なトランスミッションで、採用する車種も多いです。

このCVTにはギアが存在しません。しかしメーカーは、ドライビングプレジャーや、エンジンブレーキを任意に作動させるために「MTモード」を用意し、その操作にパドルシフトを用意したのです。これらのパドルシフトは、ギアの無いCVTに、あらかじめプログラムしたギア比になるよう電気信号を送るためのスイッチで、疑似MT的装備ともいえます。

CVTにパドルシフトが採用される理由は、機構的に装備しやすかったということと、新機軸としてユーザーにも受け入れられたという側面があったと考えます。

多段化の進むATの操作デバイスとして…

CVTにパドルシフトを配したモデルは多く存在します。他方で、CVTは伝達効率の悪さという、環境性能や運動性能でのネガも指摘されるようになり、従来のトルコン式ATが多段化することで、一時期、劣勢だった状況を巻き返しています。またツインクラッチをもった2ペダルMTなど、エンジン同様トランスミッションも高効率が進んでいます。

そんななか、やはり操作デバイスとしてパドルシフトの利便性や有用性があるのも普及している理由です。

かつてのATは、オートマチックという名称からもわかるように、手動操作はほとんど考えられていませんでした。これは、ATが早くから普及した北米の道路事情もありました。

その一方、ヨーロッパではATであっても、ある程度シフトチェンジを積極的に行ったほうが安全であるということから、メルセデス・ベンツやジャガーではゲート式のシフトが採用されていました。現在、AT車に付けられたパドルシフトは、その名残ともいえるかもしれません。

一方で、パドルシフトはレーシングカーに搭載されていたものが出自で、これはステアリングから片手を離すことなくドライビングできるという安全性から採用されたものでした。

そこに電子制御が介入すれば、シフトミスも起こらないため、故障(ミッショントラブル)のリスクも減らすことができます。

シフト時のタイムラグも減り、人間の操作より確実で速いシフトチェンジが手元でできるなら、わざわざ操作中のステアリングから手を離す危険を犯してまで、フロアのシフトレバーを使う必要はないのです。これが、パドルシフトが多く搭載される理由でしょう。

車との一体感に関しては、MTに勝るものはないといえますが、パドルシフトによる安全性や確実性は、ドライビングをより高いレベルで愉しめるようになっています。時には、積極的にパドルシフトを操作して、車の愉しさを感じるべきではないでしょうか。