なぜメルセデスVクラスに、ガソリンエンジン仕様がないのか?

メルセデス唯一のミニバンがVクラスです。2014年にフルモデルチェンジが行われ、現在は3代目となっています。このVクラス、パワーユニットはディーゼルエンジンのみという非常に割り切ったグレードとなっています。その理由とは…?

Chapter
パワーユニットを思い切り刷新したVクラス
日本のミニバン市場にかけるメルセデスの本気
クリーンな排ガスへと進化し続けるディーゼルエンジン

パワーユニットを思い切り刷新したVクラス

Vクラスがデビューしたのは1998年。商用バンの「Vito」を乗用車モデルにリパッケージしてのスタートでした。この初代は、商用バンらしくFF駆動モデルでしたが、2003年のフルモデルチェンジからメルセデスらしい「FR駆動」へと刷新されています。衝突安全性や走行安定性、さらには高級車にふさわしい乗り心地を達成するため、としているのがメルセデスらしい理由ですね。

2代目モデルは、VIANO(ビアノ)と名乗っていた前期型が3.2L 6気筒SOHCエンジン、Vクラスに名称が改められた後期型が、3.5L V型6気筒DOHCエンジンを搭載していました。後期型の最大トルクは34.7kgmとかなり太く、2.5トンほどの大きなボディ、大排気量で引っ張る豪快なモデルでもありました。

しかし2015年に国内導入が発表された3代目のパワーユニットは激変します。なんとすべてのグレードが、ディーゼルエンジンのみという設定になったのです。

これにはメルセデスがパワーユニットも刷新し、ダウンサイジング化を進めている事、またVクラスに搭載できるディーゼルユニットが完成した、という事が大きな理由であると考えます。そして日本仕様には特段の意欲を見せているのです。

日本のミニバン市場にかけるメルセデスの本気

現行のVクラスは2.1L ディーゼルターボのみのラインナップ。しかしここ日本に導入したVクラスには、なんと「日本仕様車専用の2.2L 直列4気筒ブルーテックエンジン」を搭載しているのです。日本は世界で最も厳しいとされる「ポスト新長期規制」があり、それに適合させるためにわざわざ特別なクリーンディーゼルユニットを用意した、ということ。

これは日本のミニバンマーケットに商機がある、という判断である事は間違いありません。確かに日本ではミニバンがいまだ活況であるという事情がありますから、メルセデスも本気で日本攻略に挑んでいるといえますね。

日本特別仕様といえる2.2L ディーゼルターボの実力はというと、最高出力163PS、最大トルクが38.7kgm、というスペックになっています。最高出力こそ先代に搭載の3.5L ガソリンエンジンに譲りますが、トルクに関しては先代が34.7kgmでしたから、ダウンサイジング、しかもディーゼルとしながらも4kgmのトルクアップとしています。

車重ある大型ミニバンVクラスの特性を考えると、トルクの太さは非常に重要。またトランスミッションも5速ATから7速ATに進化、環境性能にもプラスとなっており、メーカー発表では、JC08モード燃費は15.3km/Lと先代の3.5L V6ガソリンエンジンと比較して最大+125%向上としています。

つまり、今回ガソリンV6エンジンからディーゼルエンジンへの全面刷新となったのは、ディーゼルにするメリットが大きい、というメルセデスの判断でありましょう。

クリーンな排ガスへと進化し続けるディーゼルエンジン

ことさら環境性能が重んじられる時代。かつては大気汚染や振動の大きさから乗用モデルへの塔載が避けられていたディーゼルエンジン。また同様にターボチャージャーも「出力は上がるが燃費とレスポンスが悪化する」とデメリットが強調されていました。ところが、テクノロジーの進化により、時代の寵児となりつつあるのが非常に興味深いところです。

日本ではハイブリッド技術が環境対策へのソリューションとして重きを置かれていましたが、欧州では温故知新、古いテクノロジーをブラッシュアップすることでエンジンを高効率化してきました。

ユーザーとしてもこうした様々な「選択肢」が必要と考えますし、ひとつの方向性をメルセデスはVクラスで明確に提示したといえるのではないでしょうか。