なぜトヨタ MR-Sは中古車市場で人気?MR-Sの燃費・走行スペックも!

トヨタ MR-S (ライター山里撮影)

※この記事には広告が含まれます

トヨタMR-S(TA-ZZW30)の特徴や中古市場での人気の理由について紹介します。トヨタが最後に作ったミッドシップ・ライトウェイトスポーツMR-Sの中古車相場が高止まりしています。生産終了から10年以上たった今も、最終型では170万円以上の値がつくことも。その理由について考えてみました。

写真・山里 真元
Chapter
トヨタのミッドシップスポーツカーMR-S
トヨタ MR-Sの特徴
MR-SはMR2から大きく変化した
トヨタ MR-Sの走行スペック
トヨタ MR-SのスーパーGTでの活躍
トヨタ MR-Sの燃費・維持費
トヨタ MR-Sの人気はイマイチだった?
トヨタ MR-Sは中古車市場でライバル不在?
トヨタ MR-Sの150台限定モデル「カセルタ」
個性的なカスタマイズモデルも

トヨタのミッドシップスポーツカーMR-S

トヨタが初のミッドシップスポーツ、初代MR2(AW11)通称「エーダブ」を送り出したのは1984年。エンジン横置きFF車という手法が、E80系カローラでようやく確立された事から、そのパワートレーンを前後逆に搭載することで成立したクルマです。

その手法は目新しいものではなく、「フィアットX1/9」など前例があった事から、トヨタがそうしたクルマを作る事にそれほど驚きの声があったわけではありません。

しかし、当時のトヨタはE80系カローラの「カローラレビン/スプリンタートレノ」すなわちAE85/AE86では、あえてFRを採用した事もあり、ツーリングカーとしてのレビン、トレノとは別なスポーツカーを並立させたことが話題になりました。

レビン/トレノのモデルチェンジによるFF化とスーパーチャージャーの設定に先んじて、AW11にはスーパーチャージャーが搭載され、高性能ミッドシップスポーツとして人気になっていきます 

1989年には2代目MR2(SW20)通称「エスダブ」にバトンタッチしますが、初代ではサスペンションセッティングなど煮詰めが甘いジャジャ馬と言われてきたものが、2代目となりトップモデルのエンジンが1600ccスーパーチャージャーの4A-GZEから2000ccターボの3S-GTEへと換装されたことで、それがより顕著となりました。

その後、数回のマイナーチェンジを経て、成熟していきました。そして1999年に後継車として登場したのがMR-Sです。

トヨタ MR-Sの特徴

1999年10月、MR2の後継モデルとして登場したトヨタ MR-Sは、パワーこそ控えめながらも、軽量化に力を入れたモデルです。この背景には、前身のMR2が当時のパワー・スペック競争に巻き込まれてしまい、不遇の時代を過ごした経験があるためと言われています。

その後、MR-Sは、2007年で販売することになりますが、これ以降トヨタからMRスポーツは販売されていません。MR-Sの乗車定員は2名で、ボディサイズは全長3,895mm×全幅1,695mm×全高1,235mmと非常にコンパクトです。このボディに加えて、970kg~1,020kgという車重から、その運動性能の高さがうかがえます。

エンジンは1.8LのNAエンジンを搭載。最高出力140PS/6,400rpmというコンパクトカーと同等のパワーながら、軽量化されたボディと相まって軽やかな走りを見せてくれます。

MR-Sには前期モデルと後期モデルがあり、搭載するエンジンこそ同じですが、前期は5速MTと5速セミAT、後期は6速MTと6速セミATというラインアップとなるのに加え、ヘッドライトとリアのコンビネーションランプのデザインも変更されています。

また、MR-Sにはカスタムパーツも数多く販売されており、多くのオーナーがその走りとともにカスタムを楽しんでいました。

MR-SはMR2から大きく変化した

MR-SはMR2の後継車とされていますが、実は大きなコンセプト変更が行われています。 ひとつは、ライトウェイトスポーツとしての性格に重点を置かれたことです。その結果、排気量をダウンした新型エンジン、それもセリカなどに搭載されたハイパワー版2ZZ-GEではなく、わずか140馬力の1ZZ-FEが採用されました。

加えて、オープントップ化したことも大きな特徴です。トヨタの量産スポーツカーで、オープントップが採用されたのはMR-Sが初めてです。この背景には、ライトウェイトスポーツの本場とも言える英国のスポーツカーがオープントップであったこともありますが、マツダ ロードスターが大成功をおさめていたことも影響しているでしょう。

トヨタ MR-Sの走行スペック

MR-Sの走行性能の高さは、軽量な車両重量と、ミッドシップレイアウトによる高いトラクション性能から生まれています。搭載するエンジンのスペックは、一般的なスポーツカーに比較すると非力ですが、軽量なボディにより、実際の走りではスペック以上のパフォーマンスを発揮しました。

また、MR-Sにはオートマ限定免許でも乗れるクラッチペダルの無いセミATも用意されました。このクラッチ操作を必要としない方式のセミATは、国産車では初めてでした。

さらに、高いコーナリング性能を有する反面、限界域では扱いが難しいとされるMR駆動ですが、純粋なハンドリング性能と最低限の電子制御しかついていないためサーキット入門車としてもオススメです。

トヨタ MR-SのスーパーGTでの活躍

MR-Sは、軽量なボディーが生み出す高いコーナリング性能により、全日本GT選手権やスーパーGTのGT300クラスで、老舗のレーシングチームであるaprがMR-Sを運用。2000年にMR2からMR-Sへと変更してから、2008年まで戦い続けました。 

スペックの非力さゆえに、ストレートでは他のマシンに離されてしまうことはありましたが、コーナーではまったく引けをとらない走りを見せました。MR-Sは、全日本GT選手権とスーパーGTで活躍した9年間のうち、2002年・2005年・2007年の3度もシリーズチャンピオンに輝きました。

トヨタ MR-Sの燃費・維持費

MR-Sのカタログ燃費は、14.0km/L~14.8km/Lとなっています。スポーツカーではありますが、車重が軽いことから決して悪い数字ではありません。排気量が1.8Lであることから、自動車税は年間3万9500円となります。維持費はそれほどかからないように思えますが、もしカスタムを楽しみたい方は、その費用も考慮しておく必要があります。

トヨタ MR-Sの人気はイマイチだった?

しかし、販売面ではそれほど成功していなかったようです。同時期に発売されていたマツダ 2代目ロードスターが全世界で30万台の新車販売を記録しているのに対し、MR-Sは8万台弱という結果になっています。決して少ない数ではありませんが、ロードスターの牙城を崩すことはできませんでした。

MR-Sが発売された当時、すでに市場にはロードスターやポルシェ ボクスター、BMW Z3など、国内外のブランドからオープントップを持ったライトウェイトスポーツカーが登場しており、それらは一定のポジションを築いていまいた。

ライトウェイトスポーツの人気に乗じてトヨタもMR-Sを発売しましたが、強力なライバルたちに対して無個性となってしまい、大きなシェアを奪うことはできなかったようです。

トヨタ MR-Sは中古車市場でライバル不在?

しかし、近年になってMR-Sは中古車市場で人気のモデルとなっています。国産車であることから車体価格も比較的安く、部品の供給が多いこと。しかも希少なミッドシップのライトウェイトスポーツという点で、ライバル不在となっているようです。

また、MT同様のダイレクト感を持ちながらAT限定免許でも乗れるというセミATを採用していることも、人気を後押ししています。大手中古車情報サイトによると、全国で180台以上の在庫がありました。安いものは1万キロ以下の走行で30万以下の価格で流通しています。

一方、状態の良いものは、200万円前後と、新車と同等の価格となっています。さらに、カスタムされたものだと、350万円というものも存在しています。2007年時点での新車価格が約186万〜240万で販売されていたことを考えると、状態によってはプレミア価格がつけられていると言えます。 

※ 2020年6月時点

トヨタ MR-Sの150台限定モデル「カセルタ」

安価なライトウェイトスポーツであるMR-Sの素性に目をつけた、トヨタ純正カスタマイズ部門のモデリスタからは、派生車種として「カセルタ」というカスタマイズモデルが1999年10月に限定150台で販売されました。MR-Sをベースに主にエクステリア(外装)を一新させた標準仕様のものと、インテリア(内装)も変更されたラグジュアリー仕様の2種類があります。

カセルタのエクステリアはMR-Sに比べてなめらかな曲線を基調にしたデザインとなっており、MR-Sを可憐な少女とするならば、カセルタはまるで成熟した大人の女性をイメージさせる色気を漂わせるグラマラスなコンプリートカーです。ラグジュアリー仕様のものでは、タンカラーの本革張りのシートや本革製のドアトリム、アームレストがついています。

ボディのサイズもMR-Sとは違い、全長4,040mm×全幅1,840mm×全高1,235mmとなっており、MR-Sよりも145mm幅広く、155mm長くなっています。大きさが変わっても、MR-Sの特徴となる軽量感は損なわれないよう、ボディパネルにはカーボンファイバーを多用。これにより、MR-Sよりも40kg重くはなるが、1,010kgまでに抑え込まれています。

新車での価格は標準仕様のものは350万円、ラグジュアリー仕様のものは388万円とされていました。販売当時では、このカセルタが完売しても儲からないと言われるほど特別感のある仕様と手間がかかっているものでした。

しかし、残念ながら150台を完売する前の2002年7月には販売が終了してしました。そのため、今ではかなり稀少な1台となっています。

個性的なカスタマイズモデルも

MR-Sのカスタマイズモデルとして、カセルタの他にトムスのボルトオンターボ仕様などもありますが、ベース車が安価なだけにこうしたモデルも中古で220万円前後の価格で入手が可能です。個性的なライトウェイトスポーツを求める人にはオススメできます。
トヨタ 初代MR-Sの特徴や中古市場での人気の理由について紹介してきました。

パワー・スペック競争に巻き込まれ、不遇の時代を過ごしたMR2から、大幅なコンセプト変更によって生まれたMR-S。ライトウェイトスポーツモデルとしての人気は、マツダ ロードスターに勝ることはなかったものの、スーパーGTの活躍から見てわかる通り、確かなスペックを持った実力派のクルマとして高い人気を誇っていました。

そんな目まぐるしい時代を過ごしたMR-Sですが、今もなお比較的安価で購入できるということもあり、中古車市場において人気を博しています。知る人ぞ知る、まさにそのようなモデルとして、MR-Sはこれからもファンの間で語り継がれていくことでしょう。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細