昔の4WDは曲がらなかった!?最近の4WDの方が「よく曲がる」は本当か?

ジムニー

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「昔の4WDは曲がらなかったけど、今の4WDは良く曲がる」などと言われています。そもそも4WDと言っても車種や駆動システムが何種類もあるので、何と何を比べた話なのか、という話になりますが…。そんなケースバイケースを並べて考えて見ましょう。
Chapter
"漢(おとこ)"の「パートタイム4WD」
今は数少ない「フルタイム4WD」
いいも悪いもVCU次第な「生活(スタンバイ式)4WD」
自動制御で楽チンの電子制御4WD

"漢(おとこ)"の「パートタイム4WD」

まず昔の4WDの話をしてみましょう。大昔のくろがね四起(九五式小型乗用車)やジープから現在のジムニーなど、本格的な悪路走破性能を求めるタイプの4WDは、前後輪を繋ぐドライブシャフトはトランスファー(副変速機)を介した直結式です。

ともかく荒れた路面などを四輪を使って乗り切る能力には優れています。しかし、前後輪の回転差を吸収する機構を持たないので裏を返せば悪路走破性以外での活躍の機会はほぼないでしょう。

舗装路面で4WDのまま曲がろうものなら、回転数が合わないタイヤのどれかを引きずったり、パワー不足でそのまま曲がっている途中で固まったり。さらに、舗装路面の高速走行などは、路面からの入力が強すぎて駆動系が壊れたりと危険であるため、こうした車種では4WDのまま高速走行しないのが当たり前です。パートタイム式の場合は、メインの駆動輪以外への駆動伝達を解除できるので、二輪駆動で走ることができます。
スバル レオーネや三菱 コルディア、トレディアなどのパートタイム4WD乗用車は、「悪路以外はちょっと重くて意味が無い2WD車」として走る事もできました。

しかし昔のランドクルーザーやサファリ、パジェロなどのクロカン4WDは最低地上高を上げるための大きいタイヤが災いして最小回転半径が大きく、車は小さくてもタイヤは大きいジムニーにも同様に取り回しに難がありました。

今は数少ない「フルタイム4WD」

アウディのクワトロシステムに始まり、日本車ではファミリアから採用されたフルタイム4WDは前後輪の駆動系の間にセンターデフを装備した事で、タイヤの回転差を左右だけでなく前後でも吸収するようになった事で路面を問わず4WDとして走行できる画期的なシステムでした。

しかし「常時4WDで走行する」という事は常に四輪を回すための負荷がかかるという事で、走行性能や安定性としては優秀でしたが、抵抗が大きいため燃費が著しく悪化する問題がありました。

そのため、一時的大流行の後は、信頼性第一のラリー用などスポーツタイプの車を除けば急速に廃れていきます。

そのスポーツタイプにしても、4WDハイパワーターボなど大馬力を生かした良く言えば積極的な、悪く言えば強引なフェイントモーションなど高速4WD特有の「曲げるための力であるヨーモーメントをドライバーが意図的に作らないと曲がらない車」になってしまったのです。

「曲げる」ならともかく「曲がる」は難しいのがフルタイム4WDだったと言えて、「4WDは曲がらないし曲げるのも苦労する」という感想の多くのケースはこの4WD方式です。

いいも悪いもVCU次第な「生活(スタンバイ式)4WD」

安価な軽自動車やコンパクトカーの類も最初はパートタイム式かフルタイム式4WDでしたが、途中からいわゆる「生活4WD」と呼ばれるスタンバイ式4WDが主流となりました。

基本的にセンターデフを持たず、前後輪を繋ぐプロペラシャフトまでは直結なのでメーカーは「フルタイム4WD」として宣伝したがっていましたが、そもそも常時四輪を駆動しない前提ですので、フルタイム4WDではありません。

もっとも、完全に2WDになるには前後タイヤに回転差が無い事が条件で、磨耗や空気圧、負荷によるタイヤ外径の変化がそれを許さない事から、常に四輪に何かしかの駆動力は伝わっていましたが。

この方式は油圧ポンプ動作のクラッチを使うホンダの「デュアルポンプ式」を除けばほとんどが駆動伝達のためプロペラシャフトにVCU(ビスカスカップリング)を使い、前後のタイヤ回転数の違いが大きくなるにつれて、プロペレシャフトの先の駆動輪への駆動力が増える方式でした。

そのため、メインの駆動輪がよほどスリップしない限り4WDにならず、ほぼ常時、限りなく2WDに近い状態に走れる事から、燃費の悪影響は最小限、機構が単純なので安価であり、今でも低価格車の多くに使われています。

この方式もハンドルを目一杯切るようなシチュエーションでは前後輪回転差から4WDになってしまうので最小回転半径が大きくなりがちではあるものの、普通の舗装路を曲がるのにそう違和感は無く、曲がりにくいという印象はあまり受けません。

筆者がストーリアX4に乗っていた頃もこのスタンバイ4WDだったので、コーナー進入前に大げさなフェイントモーションをしなくても、曲がる方向へあらかじめほんの少し舵を入れておいてやるだけで、よく曲がったものです。

自動制御で楽チンの電子制御4WD

スタンバイ式4WDも広義では受動的・機械的に自動制御するパートタイム4WDとも言えますが、そこから一歩進めて駆動力配分を電子制御で行い、さらには走行性能と燃費性能を両立させるため、走行状況に応じて積極的に制御していく電子制御4WDがコンパクトカー以下を除く多くの車種の主流になっています。

おなじみ日産スカイラインGT-Rの「アテーサE-TS」あたりから本格採用され、今ではマツダCX-5などクロスオーバーSUVにも広く採用されていますが、過去には軽自動車のダイハツMAXにも採用(サイバー4WD)された事がありました。

さらには旋回性能やあるていどの不整地も高速で走破させるためと四輪の駆動力配分を積極的に制御する、ホンダのSH-4WDなど「アクティブ・トルク・ベクタリング式」なるものまで登場しました。

ここまで来るとジムカーナでサイドターンでもやらない限りは「よく曲がる、それもオンザレールで」というべきで、単に「四輪駆動」「AWD」などという単語一つでいい表せるものではありません。

「よく曲がるし、曲げる事もできる4WD」が実現されていると言えます。

「4WD」「四輪駆動」「AWD」など、メーカーによって表記が異なる4輪駆動には、さまざまな方式があり、何を「よく曲がる」と表現すべきか、ケースバイケースな事がおわかりいただけたかと思います。

一番曲がらないのはパートタイム4WDですが必要な時に2WDにすればすむ話ですし、「曲がらなくて困る4WD」はスポーツ走行でタイトなコーナーやターンを決めなければいけないフルタイム4WDくらい、それもスバル・インプレッサのようなサイドブレーキを引けば解除されるACD(アクティブセンターデフ)をつければ済む話ですし、シチュエーション上そういう場面もあるというだけです。

結論としては、今は「どんな4WDも普通に乗る分には、最近と言わずだいぶ昔から普通によく曲がる」と言えるでしょう。
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