なぜ車のフェンダーの爪を折るの?

タイヤ

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ドレスアップのためにタイヤやホイールを変えたい!そんな事を考えていると、「その車だとフェンダーの爪折り必要だよね?」と言われる事も多々あります。「爪折り」って何でしょう?!
Chapter
「爪」がある「フェンダー」って?
後付けフェンダーにはそのまま車検に通らないものも?
それでもフェンダーの爪を折る理由
フェンダーの爪折りは「ややグレーゾーン」
爪折りなどフェンダー加工は慎重に!
タイヤはどこまでハミ出して良いのか

「爪」がある「フェンダー」って?

タイヤを覆ってる部分そのものがタイヤフェンダー、略して「フェンダー」と言います。「タイヤハウスの内側に…」などという表現でタイヤハウスと言われる事もありますが、外から見える部分に関してはフェンダーと考えて間違いないでしょう。

ボディの一部がフェンダーを構成している場合もあり、様々な形があります。ボディとは別体の「サイクルフェンダー」(自転車のタイヤを覆う泥除けと同じ形と役割)や「クラムシェルフェンダー」、ボディの外側に貼り付け、そのままだとボディからはみ出てしまうタイヤを覆う「オーバーフェンダー」(通称「オバフェン」)、役割は同じですが、空力効果を上げる流線型でボディと一体成型された「ブリスターフェンダー」(通称「ブリフェン」※画像参照)など。

後付けフェンダーにはそのまま車検に通らないものも?

ボディと一体成型されたものや、その車が生産された時に元々ついているものは問題ありませんが、「オーバーフェンダー」など後付け可能なものの中には、車検での寸法変更が10mmを超えてしまうので、マル改(構造変更や改造)の申請が必要なものもあります。

KPGC110スカイラインGT-R(ケンメリGT-R)やTE27カローラレビン/スプリンタートレノなどが「ビス止めの後付けオバフェンが最初からついてくる車」の代表ですが、それを知らずに警官にキップを切られそうになるエピソードなどは、漫画「よろしくメカドック」などの定番ネタです。

それでもフェンダーの爪を折る理由

構造的に重要な「フェンダーの爪」ですが、ボディから内側に曲げられた爪は、タイヤに向かって伸びています。

純正サイズのタイヤを履いている分には爪に干渉しないように配慮されていますが、違うタイヤやホイールを履くとなると話が変わり、純正より太いタイヤを履く場合、またインセット(昔はオフセットと言いましたね)の違うホイールを履くなど、タイヤがボディ外側に向かって張り出してくると、フェンダーの爪に干渉してしまうのです。

タイヤとホイールを交換したそのままの状態なら大丈夫そうに見えますし、足回り形式によってはショックアブソーバーが縮んだ時にネガティブキャンバーがついたり、足回りの調整で最初からネガキャンをつけて爪を回避する時もあります。それでも車高を落としたりショックが縮んだ時に爪とタイヤが当たるならば、車検でNGとなります(内側でインナーカバーや足回りに干渉しても、同じようにNGです)。

それだけではなく、何かに干渉してしまっている状態というのは高速回転するタイヤがいつパンクやバーストを起こすかわからないので、まずそれを回避するためにフェンダーの爪を折り、さらに車検適合範囲内でフェンダーを少し外に広げるのです。

フェンダーの爪折りは「ややグレーゾーン」

「タイヤに問題が起きる事の回避」としてフェンダーの爪折りの理由としましたが、それでは違法改造回避にはならないのでしょうか?結論から言えば、フェンダーの爪折り加工は違法改造ではなく、車検にも通ります。

完全に爪をカットしてしまってボディ強度が落ち、フェンダーが(リアの場合は最終的にボディ全体が)歪む元となる「爪切り」とは違い、内側に折りたたんでしまってもボディ強度への影響は最低限で済みます。

ただ、ディーラーなどの場合は「ボディを加工した改造車」という扱いになり、作業を断られてしまうケースや、同じく加工により全塗装などと共に事故車と同じ扱いになり、買取査定が落ちる事もあります。

また、ジムカーナやダートトライアルなどのナンバーつき競技用車両の場合は、JAFの国内競技車両規則によりボディの爪折り加工は禁止されており、爪折い加工をすると競技に使えないほか、購入した競技車両に爪折りをほどこすと、その瞬間にナンバーつき競技車としては一文の価値が無くなる事にも注意が必要です。

その意味では、フェンダーの爪折りはNGではありませんが、「ややグレー」と言えるでしょう。

爪折りなどフェンダー加工は慎重に!

正規ディーラーなどに行かなければ特に問題は無いのですが、それでも注意しなければいけないのは爪折りの加工法です。

まず、曲げ加工を施して塗装したところに、さらに加工するわけですから、その部分の塗装が割れて剥げたりします。工業用ドライヤーで熱して柔らかくすれば、ある程度緩和されますが、避けられないリスクと思って部分的な鈑金塗装が必要と思った方がいいです。

さらに、開放されている部分を折りたたんで袋構造にするわけですから、そのままでは水がたまってサビてしまいますので、それを防ぐための充填材で隙間を埋める加工も必要です。

ただ単純に折れば全て収まるというものでは無いので、折った後の事も考えて決めましょう。

タイヤはどこまでハミ出して良いのか

フェンダーの爪折自体は適法と説明しましたが、車検で全く問題が無いかと言えばまた別な話もあります。

ドレスアップ目的にせよ、チューニング目的にせよ、爪折りが必要なだけ太いタイヤ、あるいはタイヤを外に出す事によるワイドトレッド化を行う場合には、足回りにネガティブキャンバーをつけて「ハの字」にする調整を伴う事が多いです。

そこで注意なのが「ハミ出しタイヤによる車検落ち」になります。

保安基準には「回転部分が突出しないこと」とされているので、タイヤは1mmたりともはみ出してはならないと解釈される事もありますが(それを根拠とした誤解で違法改造扱いされる事もあります)、実際には車検適応の基準となる「自動車検査業務等実施要領」によって、「回転部分」の詳細な定義があるのです。

「タイヤの中心から前方に向けて30度、後方に50度の範囲内」がその定義で、その部分のタイヤ外縁から真上に伸びたところがフェンダーで覆われていれば車検OKで、それ以外の部分はハミ出しても車検適合という事になります。

平成14年の改正以前は「タイヤ外縁から真上に」ではなく「タイヤ外縁を超えた延長線上」がハミ出してはいけないフェンダーの範囲だったので、昔より少し緩和された事を知らない人も多いかもしれません。

フェンダーの爪折りもした、ネガキャンもつけたので、もっと太いタイヤも履けるようになったし、どこにも干渉しない、でもホイールのインセットを誤って、肝心の「回転部分」がハミ出してしまった…というのもよくある話なので、フェンダーの爪折りだけでなく、最終的に車検適合になるように加工作業やタイヤ、ホイールのチョイスは慎重に行いましょう。
あるいは、最初から改造申請をするつもりで、豪快にフェンダーの後付けや叩き出し加工をしてしまうのも一つの手です。
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