減少する気筒数…BMWがターボ化を進めてきた理由とは?今後の方向性は?

「今のBMWはターボエンジンに熱心」と書くと、昔からのBMWファンの中には眉をひそめる方もいるかもしれません。しかし、調べるとそこにはBMWだけでなく、EUの自動車を取り巻く深い事情が見えてきました。


Chapter
BMWが追求するダウンサイジングターボエンジン
BMWの新しいこだわり「1気筒500cc」
カギを握るのは「ユーロ6フェーズ2」の2017年問題
ディーゼルエンジンの限界と、ガソリンエンジンの復権
「ダウンサイジングターボ」の先にあるもの

BMWが追求するダウンサイジングターボエンジン

BMW 1シリーズ 118i ファッショニスタ

2015年9月5日、BMWのエントリーモデル「118i」のエンジンが、直列4気筒1600ccターボから、直列3気筒1500ccターボへ変更されるマイナーチェンジが行われました。一層のダウンサイジングが進みつつも、馬力、トルクともに元のエンジンと同等で、燃費は優れているこのエンジンはMPVの「218iアクティブツアラー」や、SUVのエントリーモデル「X1」にも搭載され、BMWのエントリーモデルにおけるスタンダードとなりつつあります。

数年前からBMWはダウンサイジングターボ(小排気量&ターボ化)を進めてきましたが、ついに気筒数の削減にまで手をつけたのです。

BMWの新しいこだわり「1気筒500cc」

かつてヨーロッパの車と言えば、小排気量で安価、または大排気量でスポーティなグレードに分かれるイメージでした。しかし今は排気量を下げてターボを組み合わせ、小排気量でも大排気量並のトルクがトレンドになっているのです。

それに加えてBMWでは「1気筒あたりの排気量が500ccのエンジンが、理想的な効率を持つ」という結論に達し、各エンジンを急速に置き換えつつあります。それでBMWの最近のエンジンは、「3気筒1500cc」(1シリーズなど)「4気筒2000cc」(3シリーズなど)「6気筒3000cc」(5シリーズなど)といった、500cc刻みに変わりつつあるのです。7シリーズなどのV8エンジンはまだ4.4Lですが、4Lエンジンになるのも時間の問題かもしれません。

それらは全てターボ化され、1ランク上の出力を発揮するようになっているのです。しかも、小排気量ながらもターボチャージャーとエンジンのセッティングにより低回転で大トルクを発揮し、燃費は向上させてきています。

今のBMWでは、その上質な滑らかさゆえに「シルキー6」と呼ばれた2000ccや2500ccの直列6気筒エンジンは、過去の話になりつつあるのです。

カギを握るのは「ユーロ6フェーズ2」の2017年問題

ダウンサイジングターボのみならず、トルクを出すのに効率的な排気量までこだわるのはなぜかと思っていましたが、答えはEUの新しい排ガス規制「ユーロ6」にありました。

「ユーロ6」は既に2015年1月より施行され、以降の新モデルはこれをクリアしている必要があります。もちろんメーカー各社は昨年までに対応を終えていたのですが、実はもう一段階あったのです。

現行の「ユーロ6」は「フェーズ1」と呼ばれ、排ガス検査は検査室の閉鎖環境で行われます。ところが、2017年から施行される「ユーロ6フェーズ2」では、実際の走行状態での排ガス計測という、厳しい検査が待っています。その上、2020年までに窒素酸化物を一層削減する事が定められました。

施工まで2年足らずに迫った「フェーズ2」に対し、「厳しすぎて対応が困難、延期するか規制を緩和してほしい」と悲鳴を上げている自動車メーカーもあるようです。

ディーゼルエンジンの限界と、ガソリンエンジンの復権

「ユーロ6フェーズ2」への対応がもっとも困難と言われているのがディーゼルエンジンで、走行中の排ガス検査を行った場合には、過去のユーロ5すら満たせないと言われています。そのため、今後は高コストの排ガス浄化装置が使える高級車を除き、ディーゼルからガソリンエンジンへの転換が進むという予想もあるのです。

しかし、ヨーロッパでは1990年代よりディーゼル車が増加し、ドライバーも低回転からの大トルクに慣れてしまっています。そこで、ガソリンエンジンで燃費を悪化させずに同じような特性を実現する方法として、「ダウンサイジングターボ」が脚光を浴びたのでした。

BMWではさらに1気筒あたりの効率的な排気量と、それに合わせた気筒数の減少まで徹底する事で低速トルクを追求しましたが、絶対的なパワーが不足する部分はターボで補う事ができました。ミドルレンジやアッパーモデルの小排気量・気筒数減少も同じ流れです。

今振り返って見れば、数年前からBMWが熱心にターボ化を推し進めていたのは、全て「フェーズ2以降のユーロ6に対応するため」の布石だったのでしょう。1990年代後半、あれほどディーゼルターボに意欲的だったBMWにとっては、まさに戦略の大転換だったと言えます。

「ダウンサイジングターボ」の先にあるもの

ここまでBMWが熱心に進めてきたターボ化と、その先にあったものの検証をしてきましたが、今後はどういう流れになっていくでしょうか。BMWもハイブリッドシステムを持っており、高級車では「i3」や「i8」から派生した技術でPHEV(プラグインハイブリッド)の新モデルを発表しています。エントリーモデルの方は、将来的には「i3」を拡大したような、プレミアムコンパクトタイプのレンジエクステンダーEVや、純EVへ舵を切るかもしれません。

BMWは単なる高級車メーカーではなく、常にスポーティーな走りをユーザーに提供してきたメーカーです。そのコンセプトの継続のためにダウンサイジングターボでも限界があるとわかれば、迷わずそうした道を選ぶと思われます。5年後のBMWがどう変わっているか、楽しみですね。