エンジンからプシュっと聞こえる音はなに!? ウェイストゲートバルブとブローオフバルブの違いをわかりやすく解説【2025年最新版】

モータースポーツ ターボ
スポーツカーがアクセルオフした際に「プシューッ」という音を聞いたことはありませんか?この音はターボ車特有ですが、実は、ターボエンジンには『ウェイストゲートバルブ』と『ブローオフバルブ』という2つのバルブが搭載されており、それぞれがこの音に関与しています。

名前は聞いたことがあるけど違いは分からない…という方も多いでしょう。本記事では、この2つのバルブの役割の違いを分かりやすく解説します。
Chapter
ターボエンジンの仕組みとバルブの必要性
ウェイストゲートバルブの役割と特徴
ブローオフバルブの役割と特徴
ウェイストゲートとブローオフバルブの役割と違い
ウェイストゲートバルブ:排気側で過給圧を精密に制御
ブローオフバルブ:吸気側でターボチャージャーを保護
現代におけるターボエンジンの進化とバルブの重要性
カスタマイズにおける注意点と法規

ターボエンジンの仕組みとバルブの必要性

簡単に言えば、ターボエンジンは排気の力でタービンを回し、その力でコンプレッサーで空気を圧縮してエンジンに送り込む仕組みです。この過給によって自然吸気エンジンより多くの空気と燃料の混合気を燃焼できるため、小さなエンジンでも大排気量エンジン並みのパワーを発揮でき、エンジンのダウンサイジングが可能になります。

ウェイストゲートバルブの役割と特徴

ウェイストゲートバルブはターボチャージャーの排気側(タービン側)に取り付けられるバルブです。排気の力で回るタービンはエンジンに送る過給圧を高めますが、高くなりすぎるとエンジンやターボを壊す恐れがあります。そこで過給圧が設定した一定の圧力を超えるとウェイストゲートバルブが開き、排気ガスの一部をタービンを通さずにバイパスさせることで過給圧を制御している場合があります。

この仕組みにより、タービンの過回転を抑え、過剰なブーストによるエンジンやターボの損傷を防ぎます。多くの市販ターボ車ではターボチャージャー本体にウェイストゲート機構が備わっていますが、より厳密な制御を求めるチューニングカーではターボとは別体の外部ウェイストゲートを追加装着する例もあります。ただし、この外部ウェイストゲートから排出されるガスは、有害物質を浄化する触媒コンバーターを通過していない場合、これを直接大気へ解放する改造は、日本の道路運送車両法(保安基準第31条)で定められた排出ガス発散防止装置の機能を損なう行為と見なされ、違法となります。

また、近年のウェイストゲートは単なる安全弁にとどまりません。電子制御技術の進化により、エンジン制御ユニット(ECU)がウェイストゲートを能動的に開閉できるようになりました。例えば、過給が不要な低負荷走行時にはウェイストゲートを開いて排気抵抗を減らして燃費を向上させ、加速が求められると瞬時に閉じてターボの応答性を高めるなど、性能と効率を両立させるための重要な役割を担っています。

ブローオフバルブの役割と特徴

ブローオフバルブはターボチャージャーの吸気側(スロットル手前)に取り付けられるバルブです。アクセルオフでスロットルが閉じてもタービンは慣性で回転を続けるため、吸気管内に高圧の空気が行き場を失って溜まります。この行き場を失った高圧の空気は圧力波となってコンプレッサー側へ逆流し、コンプレッサーの羽根(ブレード)上の気流が失速する「コンプレッサーサージ」と呼ばれる現象を引き起こします。このサージングは、タービンに大きな負荷をかけて損傷の原因となるだけでなく、タービンの回転を急激に落とすため、再加速時の応答性が悪化する「ターボラグ」の増大にも繋がります。

ブローオフバルブは、この余分な圧縮空気を解放することでコンプレッサーサージを防ぎ、タービンの回転速度を維持して次の加速に備える役割を果たしています。「プシュー」という特徴的な音は、この圧力解放時に発生するものです。市販車の多くは、解放した空気を大気に放出せずタービン手前の吸気管に戻す「リサーキュレーションバルブ(再循環バルブ)」を採用しています。これにより作動音を静かにすると同時に、エンジンがすでに計測した空気をシステム内に留めることで、正確な空燃比制御を維持し、排出ガスの悪化を防いでいます。

ウェイストゲートとブローオフバルブの役割と違い

ウェイストゲートバルブ:排気側で過給圧を精密に制御

ウェイストゲートバルブは、ターボチャージャーの排気側に設置され、エンジンの最大過給圧を制御する重要な役割を担っています。ターボは排気ガスのエネルギーでタービンを回して空気を圧縮しますが、エンジン回転数が上がりすぎると過給圧も際限なく上昇し、エンジンに致命的なダメージを与える「オーバーブースト」状態に陥る危険があります。

ウェイストゲートバルブは、設定された過給圧に達すると自動的に開き、余分な排気ガスをタービンを通さずに直接排気管へ逃がします。これによりタービンの回転数が適切に抑制され、過給圧が安全な範囲に保たれることで、エンジンとターボチャージャー本体を保護しています。

ブローオフバルブ:吸気側でターボチャージャーを保護

一方、ブローオフバルブは吸気側に設置され、アクセルを急に離した際に発生する圧力からターボチャージャーを守るための装置です。

アクセルオフでスロットルバルブが閉じると、ターボが圧縮した空気の行き場がなくなり、高圧のまま逆流してコンプレッサーの羽根に強烈な負荷をかけます。この「コンプレッサーサージ」と呼ばれる現象は、タービンの回転を急激に低下させるだけでなく、繰り返されるとターボチャージャーの破損に繋がる非常に危険な状態です。ブローオフバルブは、この逆流圧力を瞬時に大気または吸気管へ解放することでサージングを防ぎ、ターボチャージャーを保護します。

その結果としてタービンの回転低下が抑えられるため、次にアクセルを踏んだ際の応答性(レスポンス)が向上し、いわゆる「ターボラグ」が軽減されるという二次的な効果ももたらします。

現代におけるターボエンジンの進化とバルブの重要性

近年、ターボエンジンは、小排気量でも十分なパワーを発揮できる「ダウンサイジング技術」として再び主流となっています。かつてのターボは、パワーはあるものの燃費が悪く、パワーが唐突に立ち上がる「ドッカンターボ」と呼ばれるピーキーな特性がありました。そして日本では、2000年に導入された厳しい「平成12年排出ガス規制」をクリアできず、多くの高性能スポーツカーと共に一時その姿を消しました。

しかし、その後の技術革新は目覚ましく、小径・低慣性タービンの採用や、燃料直接噴射(直噴)、そしてウェイストゲートバルブなどの精密な電子制御技術の進化により、かつての弱点であったターボラグは大幅に改善されました。その結果、現代のターボエンジンは、優れたレスポンスと燃費性能を両立するに至っています。

カスタマイズにおける注意点と法規

ウェイストゲートバルブやブローオフバルブは社外品への交換も可能ですが、解放される圧力を直接大気へ放出する改造は、車検に通らない違法な状態となるため注意が必要です。

・ウェイストゲートの大気解放
触媒で浄化される前の有害な排気ガスを直接放出するため、道路運送車両の保安基準 第三十一条(排出ガス発散防止装置)に違反します。

・ブローオフバルブの大気解放
解放される空気には、エンジン内部から漏れ出た未燃焼ガス(ブローバイガス)が微量に含まれます。これを大気へ放出することは、ブローバイガスを適切に処理する装置の基準に適合しないと判断されるため、車検に通りません。

 
これらのバルブは、ターボ車の性能を安定させ、エンジンの寿命を守るために不可欠な存在です。その役割と仕組みを正しく理解することが、安全で快適なカーライフに繋がります。
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