「野生動物 事故」で迷わない――ロードキルの現状と具体策を網羅した完全ガイド

鹿 道路 野生動物

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日本では直轄国道だけで年間約7万件高速道路で約5.1万件のロードキル(動物死骸の回収・処理)が報告されています。合計すると12万件を優に超える計算で、タヌキや犬猫など中型動物が5割超を占めます。
被害は車体損壊に留まらず、人身事故・二次事故、保険料増額へも波及します。

吉田 恒道|よしだ つねみち

1980年代、大学卒業後ファッション・モード専門誌「WWD Japan」編集部勤務を皮切りに編集者としてのキャリアを積む。その後、90年〜2000年代、中堅出版社ダイヤモンド社の自動車専門誌・副編集長に就く。以降、男性ライフスタイル誌「Straight’」(扶桑社)など複数の男性誌編集長を歴任し独立、フリーランスのエディターに、現職。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

吉田 恒道
Chapter
野生動物との事故時の警察への連絡
事故現場で最優先すべき3ステップ
野生動物との事故における保険の適用範囲
保険金請求に必要な書類
日本で多発!鹿との事故の特徴と対策
鹿事故を防ぐ5つの運転術
野生動物が生存している場合の対応方法
まとめ――今日からできるロードキル対策と情報活用

野生動物との事故時の警察への連絡

事故現場で最優先すべき3ステップ

1. 安全確保
ハザードランプを点灯し後続車に合図し、可能なら路肩へ移動して三角表示板を設置する。

2. 負傷者と車両チェック
同乗者の怪我、エアバッグ作動、燃料漏れを確認し二次災害を防ぐ。

3. 通報義務の履行(道路交通法72条)
110番で「野生動物と衝突した単独事故」と明言し、道路管理者へは#9910(国道・高速共通)で死骸処理を依頼する。

野生動物相手でも交通事故の「物損」扱い。届出を怠ると報告義務違反となり、後述の保険請求もできません。

野生動物との事故における保険の適用範囲

補償項目自賠責保険車両保険(一般)車両保険(エコノミー)搭乗者傷害・人身傷害
車の修理費×△*¹
自分・同乗者の怪我×
免責・等級免責額あり/1等級ダウン契約内容による影響なし
*¹ 一般的な限定型では動物との衝突は対象外ですが、契約により補償される例もあるため要確認。


保険金請求に必要な書類

交通事故証明書(警察発行)
事故現場で警察官が状況を確認したうえで発行する公的証明書で、これがないと保険会社は手続きを受理できないため、現場対応の段階で必ず申請の意思を伝え、後日郵送または窓口で受け取る手続きを忘れずに行いましょう。

修理見積書・事故写真
車両の損傷部位や修理に要する費用を客観的に示す資料として、ディーラーや整備工場が作成する詳細な見積書と、破損箇所を多角的に撮影した高解像度の写真をセットで提出すると、査定担当者が損害額を正確に把握でき、審査がスムーズに進みます。

ドライブレコーダー映像
衝突の瞬間を映した動画ファイルは過失割合の判定を大幅に早める決定的な証拠となるため、事故後は録画データが上書きされる前にロック保存し、SDカードを抜き取るかクラウドへバックアップして、保険会社へ提出できる状態にしておきましょう。

これら三つの書類・データを早めにそろえて保険会社へ連絡すれば、支払い決定までの時間を大幅に短縮できます。

日本で多発!鹿との事故の特徴と対策

  • 発生件数
北海道警察の統計によれば、令和6年に道内で報告されたシカとの交通事故は5,460件に達し、前年より173件増加して8年連続で過去最多を更新するという深刻な状況が続いています。

  • 時間帯
発生時刻を詳しく見ると、午後6時から8時薄暮〜夜間が全体の約3割(30%)で最も多く、次いで午後4時から6時が22%を占めており、視界が変化しやすい夕方から夜にかけて事故リスクが急激に高まることが明らかになっています。

  • 季節
年間推移では10月が23%で突出して最多、次点の11月も高水準となっており、繁殖期に入ってシカの行動圏が広がることが事故急増の主因と考えられています。

  • 道路種別
路線別データでは、国道が全件数の約6割を占め、交通量が多い幹線道路で特にロードキルが集中する傾向が確認できます。

鹿事故を防ぐ5つの運転術

  • 日没1時間前からハイビームとフォグで視認性を高める
日が落ち始める頃からヘッドライトをハイビームに切り替え、悪天候や路面照り返しがある場合はフォグランプも併用することで、遠くの反射光に浮かぶシカの目をいち早く察知でき、対向車や先行車がいるときだけ速やかにロービームへ戻すのが理想です。

  • 制限速度から10 km/h減速する
速度をわずかに落とすだけでも停止距離は物理的に約20%短くなり、衝突時の運動エネルギーも大幅に低減できるため、不意の飛び出しに対してブレーキを踏む余裕が生まれます。

  • 路肩へ寄り過ぎず車線中央寄りをキープ
草かげが迫る路肩を避けて中央寄りを安定走行することで、茂みから急に横断してくるシカとの接近角度を小さくでき、ハンドル操作での回避スペースも確保しやすくなります。

  • 動体検知ドラレコやナイトビジョンを装備
人の目より早く熱源や動きを検知してアラートを発するドライブレコーダーや赤外線ナイトビジョンを活用すると、薄暗い山間部でも危険察知が数秒早まり、映像は事故後の過失判断や保険請求の強力な証拠になります。

  • 超音波動物警笛を検討する
車速に応じて発する高周波でシカに注意を促す「鹿笛」は研究によって効果の有無に賛否があるものの、他の安全策と併用する補助装置としては一定の予防効果が報告されており、設置コストが低い点もメリットと言えます

野生動物が生存している場合の対応方法

  • 暴れる恐れ
骨折や神経損傷を負った野生動物は強い痛みと恐怖から防衛本能が高まり、人間が近づくと角で突く、噛みつく、跳ね上がるなど極端に攻撃的な行動を取ることが多いため、救護訓練を受けた専門班が到着するまではむやみに接近せず、車内やガードレールの外側など安全な位置で待機するのが鉄則です。

  • 感染症リスク
野生動物の体表や排泄物にはエキノコックスやレプトスピラ症など人獣共通感染症の病原体が付着している場合があり、触れたり体液が飛散したりすると経口感染・経皮感染を招くおそれがあるため、素手や家庭用ゴム手袋程度の装備で応急処置を試みるのは避け、かならず専門機関の指示と防護手段を待つようにしてください。

  • 通報先
負傷動物を発見したら、一般道路では該当エリアを管轄する自治体の環境課や建設事務所、高速道路ではNEXCOの道路緊急ダイヤル #9910 へ連絡し、併せて事故地点・動物種・状態を詳しく伝えます。もしツシマヤマネコやイリオモテヤマネコなど希少種の可能性がある場合は、環境省の地方環境事務所へも速やかに通報して保護体制を整えてもらう必要があります。

  • 注意喚起
善意で負傷した動物を自家用車に乗せて病院へ運ぼうとした結果、パニックを起こした動物が車内で暴れ出し二次事故を引き起こしたり、搬送途中の事故で加害者責任を問われたりした例も報告されています。こうしたリスクを避けるためにも、現場判断で個人搬送を試みるのではなく、必ず専門機関の到着を待って指示に従うことが最善策です。

まとめ――今日からできるロードキル対策と情報活用

ロードキルは、偶発的な出来事ではなく国直轄国道だけで年間約7万件、さらに高速道路で約5.1万件が報告される社会的課題です。 万が一、野生動物と衝突した場合は、まず二次被害を防ぐために安全を確保し、そのうえで警察への通報と保険手続きを速やかに行うことが鉄則となります。とりわけ鹿との事故を減らすうえでは、夕暮れ時に制限速度より10km/hほど控えめに走行し、ハイビームやフォグランプを活用して視認性を高めることが有効です。生きている動物に遭遇した際は、むやみに近寄らず、自治体の環境課や#9910などの専門窓口へ連絡し、適切な処置を依頼してください。

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