スバル WRX STIを徹底解説!改良の歴史を振り返る

スバル WRX STI EJ20 Final Edition 2019

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2014年8月に発売が開始されたWRX STIは、名前からインプレッサが外れ、独立したモデルとなりました。

S4を含めたWRXシリーズのコンセプトは “Pure Power in Your Control”。水平対向ターボエンジンが持つポテンシャルを最大限に発揮させつつ、ドライバーがイメージ通りに操ることのできるコントロール性能を極限まで追求するため、ボディの軽量化と剛性向上、シャシー性能の徹底的な強化を図っています。

文・写真/萩原 文博

萩原 文博|はぎはら ふみひろ

1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューし、大学在学中に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入。1995年より編集部員として編集作業に本格的に携わる。中古車の流通、販売店に精通し、「中古車相場師」として活動。2006年からフリーランスの編集者となり、中古車だけでなく、現在は日本で最も多くの広報車両を借り出して取材を行い、新車でもユーザー視点のバイヤーズガイドを中心に、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した、総合的に買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。

萩原 文博
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インプレッサ名が外れWRXとなったピュアスポーツセダン
たゆまない進化。WRX改良の歴史
STIコンプリートカーは4台をリリース

インプレッサ名が外れWRXとなったピュアスポーツセダン

WRX STIは、スバルでもっともスポーティなモデルとして、ハイパワーを意のままに操ることのできるパフォーマンスを実現するために、ボディ、シャシーなど、車両各部の性能を極限まで高めています

具体的には、ボディとサスペンション各部の剛性を高めると同時に、サスペンションジオメトリーの最適化。ドライバーのステアリング操作への車両の反応を素早くするとともに、コーナリングの限界性能を向上。

さらに、マルチモードVDC、アクティブトルクベクタリングの採用により、意のままに操る愉しさを追求しました。
搭載されているエンジンは、熟成の域に入ったEJ20型2.0L水平対向4気筒DOHCターボで、最高出力227kW(308ps)/6,400rpm、最大トルク422Nm/4,400rpmのハイパワーと、9.4km/L(JC08モード燃費)を両立しています。

組み合わせられるトランスミッションは、6速MTのみ。従来モデルのMTに対し、節度感、吸い込み感を向上し、よりスポーティなシフトフィーリングを実現しました。

駆動はフルタイム4WDに、WRX STI専用装備として路面状況やドライバーの好みに応じて、センターデフの制御特性を自由に選択できるマルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)を搭載しています。

さらにブレーキは前後ブレンボ社製。WRX STIタイプSにはビルシュタイン製ショックも奢られます。

たゆまない進化。WRX改良の歴史

発売の翌年、2015年の6月には早くも一部改良が敢行され、パワーウインドゥスイッチにメッキ加飾を行ったほか、センターコンソールのUSB電源を1.0Aから2.0Aに強化。全6色のボディカラーは、ライトニングレッドに替わりピュアレッドを設定しました。

2016年4月の改良では、インテリアのルーフトリム素材を不織布からトリコットに変更。リアワイパーブレードを空気抵抗の少ないエアロタイプとし、リアワイパーまわりからの風切り音を従来型比で85%低減するとともに、フロントガラスの室内側ショルダー部ウェザースリップを2枚化とすることで、風切り音やロードノイズといった室内への透過音を低減するなど、静粛性を高め質感の向上を図りました。

初の大幅改良は2017年5月で、フロントバンパーのデザイン変更、19インチホイールの採用(WRX STI)のほか、マルチモードDCCDのセッティング見直し、サスペンション設定の最適化、ブレンボ製18インチベンチレーテッドディスクブレーキの採用などによって、コーナリング限界を向上させ、操縦安定性とフラットな乗り心地を両立しました

その他、ステアリング連動ヘッドランプの採用、ドライバーの前方確認をサポートするフロントビューモニターの追加によって安全性能もアップしています。

2018年4月には、メーカーオプションとしてサンルーフを設定。

2019年5月は、全車のフロントフォグランプカバーを新デザインとし、同時にWRX STI Type Sのアルミホイールを切削光輝タイプの19インチに変更。

安全装備では、ハイビームアシストが作動する車速を40㎞/hから30㎞/hに見直し、夜間走行時の安全性をさらに向上しています。またトランクは、​すべてのドアがアンロックされている場合、アクセスキーを持っていなくても開けられる仕様になりました。

STIコンプリートカーは4台をリリース

2014年の初登場から生産終了が発表される2019年までに、STI(スバルテクニカルインターナショナル)がエンジンや足回りを専用チューンしたマニア垂涎のコンプリートカーは、4台がリリースされました。

まず最初が2015年10月に400台限定で発売された“S207”です。

専用チューニングによって最高出力を241kW(328ps) /7,200rpmまで高めたエンジンに、11:1というクイックなギア比を持つステアリング、STIオリジナルのボディ補強パーツ、STI製BBS 19インチ鍛造アルミホイール(シルバー塗装)、STI製RECAROバケットタイプシート、専用スポーツメーターなどのほか、国内メーカー初採用(当時)のビルシュタイン製可変減衰力サスペンション“DampMaticⅡ”に前後のアクティブベクタリングを組み合わせた足まわりなどにより、強靭でしなやかな乗り味とシャープなコーナリングを実現。価格は599万4000円でした。

またこのS207には、専用ドライカーボン製スポイラーに“2015年ニュルブルクリンク24時間レースクラス優勝*記念オーナメント”を採用した『NBR CHALLENGE PACKAGE(限定200台)』と、特別色のサンライズイエローを纏った『NBR CHALLENGE PACKAGEYELLOW EDITION(限定100台)』が、613万8000円と637万2000円で用意されていました。
次に発売されたのは2017年10月に限定450台でリリースされた“S208”です。

クイックレシオのステアリング、STI製BBS19インチホイールなど仕様はS207に準じたものでしたが、エンジンの最高出力を242kW(329ps)にアップするとともにインタークーラーウォータースプレイを標準装備したほか、室内でもいくつかの仕様変更&専用パーツの追加が行われ、626万4000円で100台が販売されました。

残る350台は『NBR CHALLENGE PACKAGE』で、こちらはドライカーボンルーフを採用していることがトピック。その他、ドライカーボントランクスポイラーに、ブラックアウトされたSTI製BBS19インチホイール、カラードドアミラー、サイドシルモールなどが装備され、689万400円で販売。トランクスポイラーをS208ロゴ入りドライカーボンリアスポイラーに変えると、車両価格は710万6400円になりました。
2018年7月にリリースされた“TYPE RA-R”は、STI創立30周年を記念したコンプリートカーでした。

500台限定で販売されたTYPE RA-Rは「軽さ」「速さ」「愉しさ」をテーマに、クルマの本質である「走る・曲がる・ 止まる」という性能を極限まで突き詰めたモデルで、軽量化パーツの採用やパーツそのものの取り外しにより、ベースとなるWRX STI比で約10㎏、“S208”や“S207”比では約30㎏の軽量化を実現しています。

搭載エンジンはS208と同じ242kW(329ps)を発生するバランスドBOXER。足回りは専用開発したダンパー&スプリングに、ブレンボ製ブレーキシステムにはハイμブレーキパッドを採用、BBS製STI18インチホイールにタイヤはミシュラン製パイロットスポーツ4Sを国内自動車メーカーで初採用。価格は、499万8240円でした。
EJ20型エンジンの国内生産終了が発表された2019年10月に用意されたスペシャルモデルが、“EJ20 Final Edition”です。

エンジンは、回転系パーツの重量公差・回転バランス公差を低減することで、EJ20型の特長である高回転域まで吹け上がる気持ち良いエンジンフィーリングをブラッシュアップした仕様。

専用パーツとして、世界ラリー選手権(WRC)で活躍したマシンを彷彿させるゴールド塗装のBBS19インチ鍛造アルミホイールに、STIのコーポレートカラーであるチェリーレッドのアクセントを採用しtフロントグリルやリヤバンパー、ウルトラスエード巻ステアリングホイールやシルバーのフロント・リヤ左右3点式ELRシートベルトなどを採用していました。452万1000円~485万1000円で限定555台が販売されました。
インプレッサWRX STIから数えれば4世代目にあたるWRX STI。平成の名機と呼ばれるEJ20型エンジンを搭載したファイナルモデルに相応しいパフォーマンスを実現しています。特に限定発売された特別仕様車の、ソリッドな走りは今後登場するクルマでは実現できない味わいだと思います。
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