日本は水素先進国?現代(ヒョンデ)NEXOはなぜ日本に?日本のミライなどの燃料電池車と徹底比較!
更新日:2024.09.09
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韓国の自動車メーカー「現代自動車(ヒョンデモーター)」が日本の公道で走らせている「ネッソ(NEXO)」。あくまで正式な発売ではなくテスト的な導入(同社の日本への正式な再参入は未定)ですが、単なるリサーチで終わるのか、それとも乗用車の日本市場への再参入がはじまるか次の一手が興味深いところです。
文:工藤貴宏/写真:萩原文博
文:工藤貴宏/写真:萩原文博
現代(ヒョンデ)NEXO(ネッソ)のような燃料電池車(FCV)とはどんなクルマ?
そして、ネッソに関してもうひとつ興味深いのが、燃料電池車(FCV)だということ。燃料電池車とは、水素から電気を取り出し、電気を動力源として使って走るクルマのことを指します。燃料電池とは燃料から化学反応で電気を起こす発電装置のことで、いわば小さな発電所を積んだ電気自動車のようなものと思えばいいでしょう。
だから燃料(といっても一般的なエンジンと違って燃やすのではなく化学反応させるのだが)としてクルマに“充填”するのはガソリンでも経由でもなく「水素」。そして、燃料電池車が究極のエコカーといわれる理由のひとが、電気自動車との利便性の違いでしょう。
たとえば電気自動車なら急速充電器を使ってもエネルギー源補充に数十分かかります。しかも、航続距離は一般的にエンジンで走るクルマに比べると短い。いっぽう燃料電池はガソリンや軽油と変わらず数分で充填でき、航続距離もエンジン付き車両並み。
水素を充填する設備は必要だけど充電設備は不要なのもメリットで、ガソリン車やディーゼル車に近い感覚で乗れるエコカーですね。
水素を充填する設備は必要だけど充電設備は不要なのもメリットで、ガソリン車やディーゼル車に近い感覚で乗れるエコカーですね。
なんで、現代(ヒョンデ)はNEXO(ネッソ)という燃料電池車を日本で走らせているの?
同社からの公式なコメントはありませんが、考えられるのは日本が水素先進国だからでしょう。クルマとしては2014年にトヨタが「ミライ」を世界初の量産燃料電池自動車として市販化。
続いてホンダから初の量産型FCV市販車として「クラリティ・フューエルセル」(先代にあたる「FCXクラリティ」もリースで一般ユーザーに提供したが合計数百台と少量生産のテスト的な扱いだった)として登場しています。いずれも一般ユーザーが購入可能となっています。
続いてホンダから初の量産型FCV市販車として「クラリティ・フューエルセル」(先代にあたる「FCXクラリティ」もリースで一般ユーザーに提供したが合計数百台と少量生産のテスト的な扱いだった)として登場しています。いずれも一般ユーザーが購入可能となっています。
写真:イワタニ水素ステーション芝公園
さらに日本の燃料電池事情でスゴイのは、住宅においても普及が進んでいること。「エネファーム」と呼ばれる家庭用の燃料電池(ガスから電気を作り余熱でお湯も沸かせる)も普通に購入でき、徐々にではあるけれど普及が広まっています。
国産メーカーが2社も燃料電池車を市販してだれでも購入でき、家庭でも普通に導入できるほど燃料電池が身近になっている国は日本くらい。そんな「燃料電池先進国」でノウハウを蓄積しながら鍛え上げるというのが現代自動車の狙いと考えていいでしょう。
国産メーカーが2社も燃料電池車を市販してだれでも購入でき、家庭でも普通に導入できるほど燃料電池が身近になっている国は日本くらい。そんな「燃料電池先進国」でノウハウを蓄積しながら鍛え上げるというのが現代自動車の狙いと考えていいでしょう。
されにいえば、水素政策を強く推し進めるのは最近まで日本くらいでした。しかし、ここへきて欧州なども水素をエネルギー政策のひとつとする方向へシフトする動きがあります。そんな意味からも、自動車メーカーとしては燃料電池を研究しないわけにはいかないのでしょう。
水素を作り出すにはいくつかの方法がありますが、上手にやれば化石燃料に頼らなくても済みます。だから日本のように化石燃料の資源の乏しい国でも石油に頼らず生活できるようになるという可能性があるのも、水素社会へのシフトの大きな理由。そんな壮大な変化が水素には期待されているのです。
水素を作り出すにはいくつかの方法がありますが、上手にやれば化石燃料に頼らなくても済みます。だから日本のように化石燃料の資源の乏しい国でも石油に頼らず生活できるようになるという可能性があるのも、水素社会へのシフトの大きな理由。そんな壮大な変化が水素には期待されているのです。
現代(ヒョンデ)NEXO(ネッソ)は日本のミライやクラリティ・フューエルセル等とどう違うの?税金は?
わかりやすいポイントから見ていくと、最大の違いはボディタイプ。ミライやクラリティ・フューエルセルなど日本の燃料電池車はセダンですが、ネッソはSUVです。
日本車はなぜセダンなのか? それは公官庁への納入を考えているから。実はパッケージング的には床下に余裕があるSUVのほうが作りやすい。その理由は燃料電池関係のユニットや大きな燃料タンクを積んでも居住性や積載性に与える影響が少ないからです。だから、利便性でいえばネッソのほうが理想的ですね。
日本車はなぜセダンなのか? それは公官庁への納入を考えているから。実はパッケージング的には床下に余裕があるSUVのほうが作りやすい。その理由は燃料電池関係のユニットや大きな燃料タンクを積んでも居住性や積載性に与える影響が少ないからです。だから、利便性でいえばネッソのほうが理想的ですね。
メルセデス・ベンツ GLC F-CELL
日本ではトヨタやホンダのほかにメルセデス・ベンツも燃料電池車「GLC F-CELL」を市販していますが、それもSUV。理由はネッソと同じで、SUVのほうがパッケージング的に有利だからです。特にGLC F-CELLは大型バッテリーを積んだ燃料電池プラグインハイブリッドなので、バッテリーを床下に搭載しても居住性を犠牲にしないパッケージングを構築しやすいSUVが適しているというわけですね。
ただし、セダンの実用面でのメリットもあり、それは空気抵抗が少ないから高速走行時の燃費がいいこと。実用性ではSUV、走行性能ではセダンが有利と判断できます。
ただし、セダンの実用面でのメリットもあり、それは空気抵抗が少ないから高速走行時の燃費がいいこと。実用性ではSUV、走行性能ではセダンが有利と判断できます。
ネッソの走行性能面のスペックは、モーター最高出力163ps、最大トルク395Nm、そして航続距離820km。これを他の燃料電池車と比べてみるとどうでしょうか。
ホンダ・クラリティ・フューエルセルは最高出力177psで最大トルク300Nm。航続距離は約750km。
トヨタ・ミライ(従来モデル)は、出力154psでトルクは335Nm。航続距離は約650km。
クラリティの最高出力を除けば、数値的にはネッソが勝っています。
ホンダ・クラリティ・フューエルセルは最高出力177psで最大トルク300Nm。航続距離は約750km。
トヨタ・ミライ(従来モデル)は、出力154psでトルクは335Nm。航続距離は約650km。
クラリティの最高出力を除けば、数値的にはネッソが勝っています。
ホンダ クラリティ FUEL CELL (ホンダ・クラリティ・フューエルセル)
トヨタ・ミライ(従来モデル)
第二世代へと移行したトヨタMIRAIが誕生!!
東京モーターショー2019にて 写真:宮越 孝政
しかし、トヨタ・ミライは新型のプロトタイプが発表されました。
そのスペック(車内測定値)を見ると、モーター最高出力182ps、最大トルク300Nm。そして航続距離約850km。超えましたね……。
新型ミライにおいて注目したいのは航続距離で、約850kmとネッソをリード。しかし単に航続距離が多いというだけではないのがポイントで、水素タンクの容量はネッソが156.6Lなのに対して新型ミライは141Lと少ないのです。
水素圧力がネッソの70MPaに対して新型ミライは87.5MPa(公称値)と違いはあるものの、パッケージングも含めた効率面では新型ミライがリードしているといっていいでしょう。
そのスペック(車内測定値)を見ると、モーター最高出力182ps、最大トルク300Nm。そして航続距離約850km。超えましたね……。
新型ミライにおいて注目したいのは航続距離で、約850kmとネッソをリード。しかし単に航続距離が多いというだけではないのがポイントで、水素タンクの容量はネッソが156.6Lなのに対して新型ミライは141Lと少ないのです。
水素圧力がネッソの70MPaに対して新型ミライは87.5MPa(公称値)と違いはあるものの、パッケージングも含めた効率面では新型ミライがリードしているといっていいでしょう。
ところで、ネッソの税金はどうなっているのでしょうか。日本においては市販されていないので消費税はわかりません。ただ、新エネルギー車両なので購入時の環境性能割(かつての自動車税に代わるもの)や重量税は免除。
購入年と購入翌年から5年間は免除となるので、新車購入して2回目の車検を受ける年までは実質“ゼロ”。燃料電池車の税金って実はお得なのです。一度、クルマ購入の際は検討するのも面白いかもしれませんね。
購入年と購入翌年から5年間は免除となるので、新車購入して2回目の車検を受ける年までは実質“ゼロ”。燃料電池車の税金って実はお得なのです。一度、クルマ購入の際は検討するのも面白いかもしれませんね。
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