なぜSUVにはスライドドアのモデルがないのか?

グローバルな自動車マーケットにおいて、いまもっとも熱いといわれているカテゴリーがクロスオーバーSUVです。一方で、日本市場ではミニバンだけでなく、軽自動車やコンパクトカーでもスライドドア車が人気を集めています。はたして、スライドドアのSUVというのはあり得るのでしょうか。

文・山本 晋也

Chapter
スライドドアのSUVは存在する
ダブルでコスト高になってしまう
ニーズ次第では増えていく可能性も

スライドドアのSUVは存在する

三菱 デリカD:5

まず、世界的にみるとスライドドアのSUVは存在しないように思えますが、国内でいえば三菱「デリカD:5」というモデルがあります。デリカは歴史的にも、クロカン性能に強い1BOXとして支持を集めたモデルで、ずっとスライドドアを採用しています。

たった一例かもしれませんが、ミニバン+SUVのクロスオーバーは存在しているのです。

では、他メーカーはデリカD:5の路線をなぜ追いかけないのでしょうか。ひとつには、ライバル視するほどのシェアを持っていないことが挙げられます。

ビッグマイナーチェンジにより魅力をアップしたデリカD:5ですが、2019年度上半期の販売台数は月平均で1,500台足らず。あえて、参入するほどの規模ではないといえます。

ダブルでコスト高になってしまう

三菱 デリカD:5 2018

では、スライドドアのSUVのシェアは広がらないのか。その理由として、コストのかかるボディ形状という部分は無視できないでしょう。スライドドアというのは、そもそもコスト高ですし、さらに電動開閉機構はマストといえる時代ですから、それもコストアップにつながります。

さらにSUVらしいスタイルには、大きなタイヤや車高アップといった要素が加わります。こちらもコスト要因ですから、ミニバン+SUVとするとダブルでコストアップしてしまうのです。

ミニバンのようにヒンジドアよりもスライドドアにバリューがあるとユーザーが評価したカテゴリーでは、ヒンジドアでは競争力がなくなっていますからスライドドアのコスト分は商品性によって吸収できますが、SUVカテゴリーについてはそこまでスライドドアを求める声が大きいとはいえません。

つまり、ライバルより高価格帯になってしまうため、スライドドアを採用するインセンティブは湧かないというのが実情です。

ニーズ次第では増えていく可能性も

トヨタ TJクルーザー

では、スライドドアのSUVは今後も増えることはないのか? といえば、そうとは限りません。少なくとも日本においては「スライドドア世代」と呼ばれる、スライドドアを好む層が一定数存在しているといわれています。

そうしたユーザーにおいては、愛車選びの条件としてスライドドアであることの優先順位が高いのですが、そうなると選択肢は同じようなミニバンばかりとなりがちです。

そうした中で、いかにもSUV的なスタイルのスライドドア車が生まれれば、十分な支持を集めると考えられるのです。

2019 TMS MX-30 マツダ

スライドドアではありませんが、マツダが欧州から発売する電気自動車「MX-30」は観音開きドアを持つSUVスタイルのボディを与えられています。スライドドアを好むユーザーには、運転席から後席ドアを開けるニーズがあるといいます。

こうしたメカニズムやパッケージの評価が高まるようであれば、スライドドアを持つSUVスタイルのクルマが生まれてくるきっかけになるかもしれません。

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也|やまもと しんや