メルセデス・ベンツの電気自動車「EQC」とはどんなクルマ?その実力を試す

メルセデス・ベンツ EQC 宮越孝政

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メルセデスベンツからピュアEVのEQCが発表されました。初の電気自動車となります。EQはメルセデスベンツのピュアEV用に立ち上げられたサブブランド。その第1弾がEQCです。

つまり今後メルセデスベンツでは本格的にEV車開発に力を入れていくということです。

リチウムイオンバッテリーはドイツ・ザクセン州のカメンツにあるダイムラー社100%子会社の「ドイチェ・アキュモーティブ社」で生産されます。

また、パワートレインはハンブルグ工場、組み立てはGLCを生産するブレーメン工場で、GLCと同じラインで生産しています。

EV生産体制を整え、いよいよ本格参入となった第1弾、EQCの登場です。

文・斎藤 聡/写真・宮越 孝政

※ 2019年9月時点

斎藤 聡|さいとう さとし

モータージャーナリスト。車両のインプレッションはもちろん、タイヤやサスペンションについて造詣が深く、業界内でも頼りにされている存在。多数の自動車雑誌やWEBマガジンで活躍中。某メーカーのドライビングインストラクターを務めるなど、わかりやすい解説も人気のヒミツ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カーオブザイヤー選考委員。

斎藤 聡
Chapter
メルセデス・ベンツが本格的に投入した、ピュア電気自動車「EQC」
最高出力408PS、最大トルク765N・m、0-100km/h 5.1秒というハイパフォーマンスを発生させる強力なユニットを搭載する
まるでAMGのように加速する性能の中に、静粛性に優れた乗り心地を両立させる「EQC」

メルセデス・ベンツが本格的に投入した、ピュア電気自動車「EQC」

メルセデスベンツからピュアEV(100%電気自動車)=EQCが発表されました。EVに関してはやや出遅れた感のあるメルセデスベンツですが、内燃機関、つまりエンジンの開発ノウハウにアドバンテージを持っているメルセデス・ベンツは、その優位性を手放したくなかったというのが理由の一つにあるのでしょう。
ただ、内燃機関の開発コストは数百億円を超えるといわれ、さらに厳しい排ガス規制が拍車をかけます。特に欧州の自動車メーカーに課せられたCO2規制はEVの開発なしには達成できないところまで来ています。そんなこともあって、メルセデスベンツのEV開発は必然ではあったのです。

最高出力408PS、最大トルク765N・m、0-100km/h 5.1秒というハイパフォーマンスを発生させる強力なユニットを搭載する

EQCの土台になっているのはSUVのGLCです。GLCにプラットフォームをベースにEV用に大幅に改良しています。バッテリー容量はリチウムイオンバッテリーは80kWhの大容量で、前後に2個のモーターを搭載した4WDとなっています。

モーターユニットも強力で前後のモーターを合わせると最高出力408PS、最大トルク765N・mを発揮します。ちなみに0→100km/h加速は5.1秒。最高速は180km/hです。ほとんどのEVがそうですが、トランスミッションを持たないため高速速度が制限されてしまうのです。
航続距離はWLTCモードで400km。電費は20.8-19.7kWh/100kmということですから、1kwhで5km前後ということです。

エクステリアデザインは、ベースとなったGLCの面影を残していますが、フロントマスクの大型ブラックパネルと、パネル上端にレイアウトされた左右のヘッドライトをつなぐデイタイムドライビングライト光ファイバーのチューブがEQCを独特の個性的な顔立ちに仕立てています。

また全体に滑らかでつなぎ目のないデザインにすることで、EVカーであることを印象付けています。

まるでAMGのように加速する性能の中に、静粛性に優れた乗り心地を両立させる「EQC」

無造作にアクセルを床まで踏み込むと、その瞬間765N・mの最大トルクが炸裂し、2,495kgの車重さえ消えてしまったのかと思える怒涛の加速を見せてくれます。しかも4WDなのでタイヤは軋み音一つさせません。

そのパフォーマンスは、スペックから加速性能までAMGモデルであるかのようです。ただ、乗り心地はかなり上質です。クルマに音源と振動源がないとここまで滑らかに走るのか、と改めて感心させられるほどです。
これはEQCのボディやサスペンション、ドライブトレーン系がそれだけ上質に作られているという証左でもあるわけです。
エンジンがない分の相対的にノイズが目立つので、静粛性にもかなり注意をして手を入れたということですから、その効果が出ているのでしょう。

乗り心地も素晴らしくマイルドで、上質な路面をSクラスの後席で走っているかのような感覚があります。
ただし、乗り心地について一つ書き加えておくと、コンフォートモードでうねりのきつい路面を通過すると、上下に揺すられる動きが思いのほか大きくでる場面がありました。

ダイナミックモードだと抑えの効いたものになるのですが、乗り味もやや引締まった印象になります。
EVならではのメリットとして、ACC(アダプティブオートクルーズコントロール)の応答の良さが挙げられます。停止状態から前走車を追尾するとき、エンジン車よりもはるかに低速域の駆動トルクが大きいので、前走車にスムーズに追走できるのです。

遅れて車間が空き、イライラすることがありません。また、これは他のメーカーでも盛んに言っていることですが、電子制御デバイス…特にESCなどエンジン(モーター)制御系との相性がいいので、素早く、そして滑らかに、かつ的確に制御が入ります。

普段その良さを実感する場面は少ないと思いますが、いざという時の安心感は抜群です。また今回は試すことができませんでしたが、同じ理由で雪道の走りやすさも期待していいと思います。ちなみに、ステアリングに付いているパドルにて4段階の回生モードの切り替えが可能です。
短い試乗時間でしたが、全体の印象はとても好ましいものでした。正直なところ、利便性で言ったら、なまだまだ内燃機関に分があります。給電場所、給電時間、だけを考えても明らかです。

いま、巷の空気感としてEVに求められているのは、もちろん環境問題もあると思いますが、ガソリン車を超えるEVならではのパフォーマンスだろうと思います。

コスト的に回収がほぼ不可能なEVに乗る理由の一つとして、80kWhの大容量リチウムイオンバッテリーによる十分な航続距離と、ハイパワーモーターによるパフォーマンスは十分な説得力があると感じました。
滑らかにも、豪快にも走ることができ、我慢を必要としません。あえて言えば、アクセルを踏みたくなる衝動を抑えるのに一番我慢が必要かもしれません。航続距離はほぼ400kmあり、給電時間も急速充電器80分で8割(実質的な満充電)になります。
いまEVに乗る人のニーズをリサーチし、既存のEVユーザーの声を聴き、十分な満足感が得られるように作り込まれています。その意味でこのクルマもメルセデスメンツなのだと感じました。
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