みんな、四角いクルマが好きだなぁ…スズキ ジムニー【工藤貴宏の一生モーターボーイ!】

スズキ ジムニー 2019

「これは人気が出そうだ。」発売の1年も前にメディアを賑わわせたスクープ写真を見てそう直感したが、正直に告白すると、発売するやいなや新型ジムニーがこれほどまでに人気を集めるとは思っていなかった。いや、メーカーのスズキだってここまでの盛り上がりは考えていなかったのだろう。なにせ、デビュー直後の納期は1年待ちとか1年半待ちというレベル。人気が爆発するとわかっていたら、スズキは事前に何らかの対策をとったはずだけど、増産がアナウンスされたのは発売から半年近くたった後なのだから。

文・工藤貴宏

視認性も運転性もピカイチなジムニー

しかし、これだけ文句をつけておいてなんだが、単なるダメグルマではないのがジムニーのさすがなところ。商品性の高さと言い換えてもいいだろう。

まず素晴らしいのは、とても運転しやすいことだ。車体が小さいうえに視界は広く(前方はもちろん斜め後ろの視認性もすこぶるいい)、四角い車体形状だから車体の四隅が手に取るようにわかる。これは街乗りや駐車に加え、狭いオフロードを走るのにも大きな武器だ。

そしてなにより、ジムニーは本格派だという事。オフロード走破性は本格的なクロスカントリーカーと同等以上で、車体の小ささと相まって「ジムニーでなければいけない場所」が地球上にはたくさんある。きわめて過酷な場所へ行ける、世界中のクルマの中でもごく限られた1台なのだ。

オフロードを第一に考えた車体構造

その秘密はオフロード走行を第一に考えた車体構造やサスペンション、そして駆動系のメカニズム。

車体はなんと一般的な乗用車に用いられる「モノコック」ではなく、強靭さを求めたラダーフレーム構造で専用設計。そこへエンジンを縦置きし、副変速機を備えた機械式のトランスファーを組み合わせた4WDシステムを搭載するなど、作りは本格的なオフローダーそのものなのが凄い。SUV風に仕立てた軽自動車ではなく、軽自動車のサイズで作った本格オフロードカーなのである。

万人向けではないけれど徹底的に凝っていて、ビシッと筋が通っているところ。それがジムニーの道具的な魅力なのだ。

ただ、いくら本格とはいっても、それがイコール商品の魅力を完成させるわけではない。本格的なだけなら「マニア向けの商品」で終了である。新型ジムニーが人気を得た秘密は、個性があふれつつも、多くの人が共感できる雰囲気を持っていることにある。

ひとことでいえば、新型ジムニーはノスタルジックだ。先祖返りした四角いボディ+丸型ライトが特徴だが、クラシカルなのはそれだけでなく、メーターまわりも懐かしい雰囲気。デジタル化の流れに逆らって大きなアナログメーターを箱に埋め込んだデザインとしているが、パネルにはダミーのボルトを模るなどさりげなく徹底的に凝っているのだ。

こういったデザイナーの想いが、新型ジムニー人気を作り上げたといっても過言ではない。

<次のページに続く>
次ページ
新型ジムニーにはある”ロマン”

工藤 貴宏|くどう たかひろ

1976年生まれの自動車ライター。クルマ好きが高じて大学在学中から自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。卒業後に自動車専門誌編集部や編集プロダクションを経て、フリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジン搭載のマツダCX-5。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

工藤 貴宏