レバーが全部青!? "熱帯仕様車"って知ってますか?

トヨタ・キジャン・イノーバ(先代)

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東南アジアのモーターショーでクルマを見たり、現地でクルマに乗ったりしているときになんとなしに車内を観察してみると、日本のクルマとは違う部分があることに気づくことがあります。日本ではそれがないということはありえないので、その部分を見たとしても気づくかどうかは怪しい。でも明確な違いです。

文/撮影・大田中秀一
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暖房(ヒーター)がない…
熱帯地域で生産販売されているけど、ヒーターがついてる場合

暖房(ヒーター)がない…

▶︎インドネシアで生産販売されている3列シート7人乗りMPVのトヨタ・キジャン・イノーバ(先代)。ダイヤルに赤いエリアがない。

それは、”暖房(ヒーター)がない”ことです。

空調のダイヤルやレバーに赤色部分がなく、全部青だというところでそれを知ることができます。

ヒーターがない理由は簡単、赤道付近の熱帯地域では冬がないため必要ないからです。

じゃあ熱帯地域で生産販売されているクルマにはすべてヒーターがないのか?というと、じつはそうでもありません。ヒーターがついているクルマもあります。それは次のような場合です。

熱帯地域で生産販売されているけど、ヒーターがついてる場合

1)熱帯だけど低温地域がある

▶︎インドで生産販売されている1リッターハッチバックのスズキ・セレリオ。ダイヤルに赤いエリアが見える。

例えばインドです。

インドは、山岳、高原、平野、砂漠と多様なこともあり、40度超えも当たり前で50度にもなり死者がでることもある一方、気温が5度を下回ることもある国。時期や場所での温度差が大きい。

このため、イメージとしては熱帯ですが、インドで販売されるクルマはヒーターが装備されています。

2)輸入車か現地生産車か

▶︎インドネシアで生産販売されているスズキ・カリムン・ワゴンR。ダイヤルに赤いエリアがない。

インドネシアの例でご説明します。

同国は、ヒーターが必要な場所もなくはないですが、国土面積から見ると無視できる範囲です。そのため、インドネシア生産車にはヒーターはありません。

しかし、例えばスズキの場合、インド製と日本製を輸入販売しています。KARIMUN WAGON R(カリムン・ワゴンR)、ERTIGA(エルティガ)にはついていませんが、IGNIS(イグニス)、BALENO(バレノ)などの輸入モデルにはついています。

トヨタだとタイと日本からの輸入車があります。KIJANG INNOVA(キジャン・イノーバ)、AVANZA(アヴァンサ)などにはついていませんが、COROLLA(カローラ)やCAMRY(カムリ)などの輸入モデルにはついています。

3)グレードによる違い

▶︎インドネシアで生産販売されている3列シート7人乗りMPVのスズキ・エルティガ。デビュー当初は全車ヒーターなし。

これもインドネシアの例です。

スズキ ERTIGA(エルティガ)の一部の装備が今年見直され、最上級グレードはオートエアコン化されたのですが、同時にヒーターが装着されることになりました。

これはエルティガ用オートエアコンユニットがインドからの部品輸入だから。インドではヒーターが標準ですから、インドネシアに送られる部品にも自動的にヒーターがついてきたということです。

ここで一つの疑問が浮かぶ方もいらっしゃるかと思います。あれだけコストにうるさい自動車メーカーがなぜ不必要な装備をつけたままにするのか?省けばその分コストダウンになるじゃないか?

ことはそんな単純ではなく、仕様を変更するということは、足そうが減らそうが追加で開発、検証、工程変更が必要になります。それは部品メーカーから新車メーカーまで多くの工数を必要とします。部品点数が増えることにもなります。

そこまでしてヒーターを省くメリットがあるか?=仕様変更する価値があるほど販売台数があるのか?ということで判断するためこういうことが起こるのです。

オートエアコンというキーワードが出たので、少々補足しておきます。

近年、装備の高級化が進み、オートエアコンが装備される車種やグレードが増えました。オートエアコンにはヒーター機能もついているので、今後徐々にヒーターつきのクルマが増えていくと思われます。

インドネシア人は日本人が思っているより寒がりなので、早朝深夜などは気温がかなり下がることもあり、人々は長袖を着ています。ヒーターが装着されるようになると、”こっちの方がいいじゃないか”と思う人が増え、数年後にはこういう差はなくなっているかもしれません。

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