ロールスロイス「カリナン」4WD SUVで行く軽井沢

ロールス・ロイス カリナン(試乗会)

※この記事には広告が含まれます

長い開発期間を経て、2018年5月10日に英国ロールス・ロイス・モーターカーズ社のグローバルウェブサイト、および本国のソーシャルメディアチャンネルのライブストリーミングによって世界同時発表された、ロールス・ロイス史上初のSUVモデル「カリナン」。一定数がシリーズ生産されるものとしては、世界最高級のSUVとなったこのモデルを日本国内で初めてテストドライブさせる念願のチャンスが、ついに訪れることになった。

文・武田公実
Chapter
ロールス・ロイスSUVの利便性と価格に見合った上品なデザインの融合
ロールス・ロイスの4駆+8速AT「カリナン」の走りを体感
カリナンに搭載されたオフロードボタンを凍結した道で始動

ロールス・ロイスSUVの利便性と価格に見合った上品なデザインの融合

ロールス・ロイス カリナンは、同社のフラッグシップにして世界最高級プレステージカーとも称される「ファントム」に次いで採用された総アルミ製スペースフレーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」上に構築される。

発表時の本国スペックによると、ホイールベース3,295mm、全長5,341mm×全幅(ドアミラー含む)2,164mm×全高(空車時)1,835mm。そして車両重量は2,660kgという堂々たるサイズを誇る。

実際、屋内の発表会場以外で初めて目にしたカリナンの存在感は、まさしく荘重。しかし華麗でもあった。先に断っておかねばなるまいが、筆者は生粋のロールス・ロイス信者である。それゆえ、新しいロールス・ロイスを見れば、どうしても憧れの想いが加わってしまうのだが、そんなバイアスを差し引いて見ても、カリナンの上品なスタイリングには感銘を禁じ得なかった。

一部のスペシャルコーチビルド車両を除けば、ロールス・ロイス115年の歴史でも初の試みとなったワゴンボディながら、そのプロポーションは実に魅力的。「ファントムII」や「20/25Hp」などの1920年代後半のロールス・ロイスに「バーカー」社などの老舗コートビルダーが架装したリムジン・ボディを連想させる。

また、世のSUVたちの多くが、デコラティブな加飾やプレスラインを多用してワイルドな装いをまとっているのに対して、新生カリナンのデザインは、これまでのSUVないしはクロスカントリー車の常識を覆すほどにシンプル。徹底してプレーンな面の美しさにより、現代の「グッドウッドR-R」に共通するエレガントなスタイルを見事に表現していると感じたのだ。

ロールス・ロイスの4駆+8速AT「カリナン」の走りを体感

今回指定されたコースは、東京都心から軽井沢の別荘地まで。まずは市街地と高速道路の双方で、オンロードにおけるカリナンの走りを味わうことになった。

スイッチで操作できるドアを閉めると、外界の喧騒はほとんどシャットダウンされるのは、これまでのロールス・ロイスと同じ。インテリアの設えは、さすがにファントムほどではないが、ゴーストなど既存のロールス・ロイス各モデルに匹敵するもの。例えば「レンジローバー・オートバイオグラフィー」を含む世界のあらゆるSUVと比べても、格別に居心地の良いコンパートメントが実現している。
そして早朝の東京都心に走り出すと、こちらもほかのロールス・ロイスと同様、徹底してストレスフリーな走りに感心させられることになる。

搭載されるパワーユニットは、新型ファントムと同じく6.75リッターの排気量を持つV型12気筒ツインターボのガソリンエンジン。571ps/5000rpm(DIN規格)の最高出力と850Nm/1600rpmの最大トルクを発生し、こちらもロールス・ロイス史上初めてとなる4輪駆動システムと8速ATが組み合わされ、最高速度はリミッターによる制限付きでも250km/hに達するという。つまりは、相当な高性能車である。

でも、その高性能はあくまでジェントルに引き出され、しかもウルトラスムーズ。通常は電動モーターのごとく、ほぼ無音である。また高速道路のETCゲートを越えてスロットルを深く踏み込んでも、V12エンジンは美しいハミングをかすかに聞かせつつ、泉が湧き出るがごとくパワーを発揮するのだ。
その傍ら、市街地であっても高速道路であっても感心させられるのは、素晴らしいとしか言いようのない乗心地である。高級車の分野でエアサスが完全普及した現代では、かつての常識を上書きするかのごとき乗り心地の良いクルマが数多く存在する中、カリナンは重心の高さなどの点で不利なSUVでありながらも、世界トップレベルの快適性を誇示する。

現在、新車で買うことのできるあらゆる乗用車の中でも、こと乗り心地でこのクルマを凌駕することができるのは、世界にただ一台。ロールス・ロイス ファントムだけと確信したのである。

カリナンに搭載されたオフロードボタンを凍結した道で始動

上信越自動車道を軽井沢I.C.で降りてワインディングロードに入るが、カリナンは依然として快適にコーナーを駆け抜けてゆく。そして中軽井沢から星野リゾートの脇を抜けて別荘地を進んでゆくと、道はどんどん狭くて険しくなってくる。

クルマ二台がすれ違うのはちょっと難しいくらいの道路幅となると、さすがにこの巨大なサイズは持て余すかと危惧していたものの、高い着座位置と四角いボディ形状のおかげで見切りが良く、まるで不安感を覚えさせない。

さらにクルマを進めると、数日前に積もった雪が凍結して、ところどころがテラテラと光っている。しかし、ロールス・ロイス社内では「EVERYWHERE(どこでも)」ボタンと呼ばれているという「OFF ROAD」ボタンを押すことによって、まったくストレスを感じることなくオフロード走行を可能にする。

加えて、現行のロールス・ロイスは全モデルがそうなのだが、とにかくステアリングフィールが素晴らしい。路面の凸凹や滑りやすいところでも過不足なくステアリングホイールに伝えてくれる一方で、不快なキックバックなどは皆無。同じく極上にナチュラルなスロットルやブレーキの感触と併せて、クロスカントリーヴィークルとしても第一級であることの片鱗が垣間見えた。
ロールス・ロイス社が「魔法の絨毯のような」と自称する極上の乗り心地をオフ/オンロードを問わず実現するために、同社の技術陣はスコットランドの高地から中東の砂漠など世界を舞台に過酷なロードテストを遂行。

専用スペックの自動レベリング式エアサスペンションは、その結果として採用されたとの由なのだが、確かにいかなる路面状態でも難なく、しかもロールス・ロイスらしくエレガントにこなしてしまうさまは、まさしく感動的というほかないのである。

例えば、本格的クロスカントリーカーから発展したレンジローバーやメルセデス・ベンツ Gクラス。スポーツカーのコンセプトや設計思想を反映したポルシェ カイエンやランボルギーニ ウルスなど、現代のハイエンドSUVには様々な出自に基づくモデルが誕生している。そんな中、ロールス・ロイス カリナンの出自は?と問われれば、やはり「ロールス・ロイス」と答えるしかあるまい。

カリナンは最上級SUVとしてのパフォーマンスを備えながらも、世界最高級車ロールス・ロイスの伝統と様式美を体現したクルマ。もしくは、いかなる場所でも快適に乗ることのできるロールス・ロイス……、というのが筆者の結論なのである。

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細