ベントレー ベンテイガ W12とV8…「悩む」というプロセスまで含めて贅沢な愉悦
更新日:2020.01.09

2015年秋のフランクフルト・ショーにてワールドプレミアに供され、今やベントレー・ブランドの屋台骨を支える大ヒット作となったベンテイガは、最高出力608ps、最大トルク900Nmを発生する6リッターW12ツインターボエンジンを搭載。8速ATとの組み合わせで最高速度は301km/hに達し、同じフォルクスワーゲン/アウディ・グループに属する身内のランボルギーニから「ウルス」が誕生するまでは「世界最速SUV」として君臨していた。
文・武田公実/Takeda Hiromi 写真・土屋勇人/Tsuchiya Hayato
文・武田公実/Takeda Hiromi 写真・土屋勇人/Tsuchiya Hayato
W12とV8のベンテイガ…どれほど違うのか
さて、今回はもう一台のベンテイガ。V8バージョンのステアリングも委ねていただけることになった。筆者にとっても初対面となったベンテイガV8だが、見た目でのW12モデルとの違いは、双方からオプションを除いてしまえば事実上の皆無。ただし、唯一ひと目見ただけで相違点の解る部位であるエンドマフラーから、アメリカンV8の角を少し丸くしたような迫力のある排気音が放出されると、いささかのキャラクターの違いを実感させられる。
ベンテイガV8に搭載されるエンジンは4リッターのツインターボ。最高出力は550ps/最大トルクでは770Nmと、当然ながらW12モデルには劣る。
また、スペック上のパフォーマンスでは、0-100km/h加速タイムがW12の4.2秒に対してV8は4.5秒と、0.3秒の差がある。また最高速度は290km/hまで低下してしまうとはいえ、そのいずれの数値も「充分」という以上のものでもある。
カタログデータで2395kg、つまりW12より45kg軽いウェイトも相まって、遠方から響く雷鳴のような「ズドドドド……」というサウンドを伴って軽快にスピードを乗せてゆくさまは、少なくとも一般公道ではなんらW12に遜色ないと断言して良い。
また、スペック上のパフォーマンスでは、0-100km/h加速タイムがW12の4.2秒に対してV8は4.5秒と、0.3秒の差がある。また最高速度は290km/hまで低下してしまうとはいえ、そのいずれの数値も「充分」という以上のものでもある。
カタログデータで2395kg、つまりW12より45kg軽いウェイトも相まって、遠方から響く雷鳴のような「ズドドドド……」というサウンドを伴って軽快にスピードを乗せてゆくさまは、少なくとも一般公道ではなんらW12に遜色ないと断言して良い。
軽い身のこなしと乗り心地を高次元で実現
一方の操縦性についても、ウェイトが軽くなった分だけ向上している?かと推測してワインディングに飛び込んでみると、少なくとも筆者が芦ノ湖スカイラインを走らせるていどのペースでは、W12モデルと大差ないことに気がついた。自分の記憶に自信がなくなって、もう一度W12を走らせてみたものの、やはり結論は変わらず。ベンテイガが披露する、サイズを思わせない軽い身のこなしと素晴らしい乗り心地の両立は、W12が先行デビューした段階で完成に達していたと追認せざるを得なくなってしまったのだ。
それでも、やはりV8モデルの「体感的に」軽快な加速感には、独特の魅力があるのも事実。V8らしい豪放磊落なエンジンフィールも含めて、敢えてこちらを選ぶのに十分な理由となり得ると思う。W12モデルとの間に開いた約800万円に及ぶ価格差に目を瞑ったとしても、V8モデルの魅力がことさら際立って感じられるのだ。
しかしその一方で、W12モデルだけが持つ「余剰」の魅力やダークヒーロー的なキャラクターも捨てがたいとも思えてしまうのだから、実に悩ましいところ。やはりベントレー・ファンには「悩む」というプロセスまで含めて、贅沢な愉悦が与えられるということなのであろう。
しかしその一方で、W12モデルだけが持つ「余剰」の魅力やダークヒーロー的なキャラクターも捨てがたいとも思えてしまうのだから、実に悩ましいところ。やはりベントレー・ファンには「悩む」というプロセスまで含めて、贅沢な愉悦が与えられるということなのであろう。
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