スーパーカーの証?ガルウィングを採用するメリットとは

ランボルギーニ ムルシエラゴ

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ガルウィングドアとは、上下方向に開閉するドアが「カモメの翼」に似ていることからその名がつきました。スーパーカーと言えばガルウィングといったイメージもありますが、ガルウィングを採用することによるメリットは、スタイリング以外に何があるのでしょうか?

文・山里真元|日本スーパーカー協会 事務局 ライティングGT代表ライター

山里 真元|やまざと まさゆき

日本スーパーカー協会 事務局 ライティングGT代表ライター。国内最大手IT社員→ITコンサルティング会社創業を経て、2010年より趣味の車好きが高じて主にスーパーカーやクラシックカーなどのニッチな車の売買相談を開始。インポーター各社とのパイプも太く、国内外新型クラシック問わず幅広く相談を受けている。趣味のツーリングでは、地域密着型のスーパーカークラブを運営し、日本スーパーカー協会事務局長としても活動中。

山里 真元
Chapter
ひと口にガルウィングと言っても、じつは種類があった!
ガルウィングの歴史
ガルウィングの実用性
現代のガルウィング

ひと口にガルウィングと言っても、じつは種類があった!

上下に開閉するドアすべてが、ガルウィングであるかと言うと、そうではありません。じつは開く角度やドアの支点によって、その名称は異なります。

たとえばランボルギーニで多く採用されている、ドア前側を支点に上方に跳ね上げる形式は「シザーズドア」です。ドアが開くとハサミのように見えることからそう呼ばれ、ランボルギーニのアイコンとなっています。
フェラーリの限定モデルやマクラーレンに採用される「バタフライドア」は、Aピラーを支点に前方に開閉する姿が蝶に似ていることから名前がつきました。

そして「ガルウィング」は、クルマの屋根とドアの接点を軸に跳ね上げる形式で、前述のようにカモメを連想させることから名づけられました。

ガルウィングの歴史

そもそもガルウィングドアは、いつ誕生したものなのでしょうか?

もっとも有名なガルウィングを持つ市販モデルと言えば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で登場したデロリアン DMC-12(1981年発売)ではないでしょうか。

しかし、じつはそれよりも遥か前、1954年にすでにガルウィングを採用した量産型モデルがありました。それが当時ワークスチーム用に開発されたガチガチのレーシングカーを公道用に仕立て直したメルセデス・ベンツ 300SLです。
300SLにガルウィングがつけられた理由は、ドライバーの乗り降りの簡便化でした。ボディ剛性を高めることを目的とした車体の構造上、サイドシルは高く、太く設計され、さらに重心を下げるため車高を低くすると、一般的な横開きドアでは乗り降りが難しくなってしまったのです。

そこでガルウィングを採用することで、ドライバーの乗り降りを容易にしたのです。レーシングカー生まれであるが故の、苦肉の開閉方式であったと言えます。

ガルウィングの実用性

市販車において、ガルウィング(シザーズドアやバタフライドアを含む)が採用されない理由は、実用面でメリットよりもデメリットのほうが多いからであると考えられます。

ドアをクルマの上部に取り付けるためには、その重量を支えるためのルーフの剛性やドアの強度が必要になります。当然、車重は増え、製造コストもかさむといったデメリットが生じます。

他にも、日常ユースでは間隔の狭い駐車場や天井が低いところでは、乗り降りに気を使うなどの不便さもあります。人が多いところでは注目を浴び、恥ずかしいと感じることもあります。

また、万がいちクルマが横転したときには、ドアが開かなくなることがあるため、フロントウィンドウシールドを内側から蹴って破れるよう設計したクルマもありました。

しかし、そもそもガルウィング等に実用性を考えること自体ナンセンスなのかもしれません。

ガルウィングが採用されるクルマの大半は、機能性よりもデザイン性を重視しています。フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなどいわゆるスーパーカーは、実用性を代償にすばらしいデザインと性能を手に入れているのです。

現代のガルウィング

機能性がないと思われたガルウィングに機能性を見出し、採用したクルマがあります。2015年に登場した最大7人乗りのSUV、テスラ モデルⅩです。

その後部座席のドアに通称「ファルコンウィング」と呼ばれるガルウィングを採用しました。従来のガルウィングとは異なり、ドアについたセンサーが車間を感知して開閉が自動的に調整されます。これにより30センチ程の間隔であれば乗り降りが可能になっています。

テスラの創業者で、現在もCEOを務めるイーロン・マスクは、SUVのデメリットを考えたときにファルコンウィングを思いついたと言います。それは、2列目と3列目の乗り降りが大変で、チャイルドシートの取り付け時に腰を曲げなければならないという問題でした。「ならば、大人が立てるくらいの高さまでドアを上げよう」という逆転の発想でライバル社との差別化に成功したのです。


一見するとデザイン性だけを求めたように思えるガルウィングですが、現代においてその新しい価値が見出され始めました。しかし、完全な実用性を求めるにはまだまだ技術的に発展段階にあると言えます。

今後は外国車のみならず、国産車でもデザイン性と実用性を両立したクルマが増えることを期待しましょう。

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