前に三人乗れる車は存在する?前席3人乗り・2列6人乗り車の代表車種とメリット・デメリット

フィアット ムルティプラ

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「前に三人乗れる車」とは、その名の通り前席に3人が座れるよう設計された車のことです。
一般的な乗用車は前席2人が基本ですが、過去には前席中央にも座席を設けて2列で6人乗り(前席3人+後席3人)を実現したユニークな車種が存在しました。

本記事では、前席3人乗りレイアウトを採用した代表的な車種や、そのメリット・デメリット、そして現在それらの車が入手可能かどうかを解説します。キーワードの「前席3人乗り」や「6人乗り 2列」に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

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Chapter
前席3人乗りとは?6人乗れる2列シート車の基礎知識
前席3人シートを採用した代表的モデル3選
ホンダ・エディックス|国産コンパクトミニバンで前席3人を実現
フィアット・ムルティプラ|個性的デザインの欧州6人乗りMPV
日産・ティーノ|補助シート付き“2+1”レイアウトの先駆け
前席3人レイアウトがもたらす3大メリット
小さなボディでも6人乗車&荷室を両立
家族や仲間と会話しやすい一体感
希少性が高くドライブが特別な体験に
購入前に知るべき4つのデメリット
幅広ボディで取り回しに注意
中央席の快適性と安全装備を確保しにくい
ウォークスルー不可で室内レイアウトが制限
選択肢は中古車が中心で玉数希少
前席3人乗り車を手に入れる方法と現行モデルの候補
前に三人乗れる車のまとめ

前席3人乗りとは?6人乗れる2列シート車の基礎知識

前席3人乗り(ベンチシートあるいは3座シートとも呼ばれる)を実現するには、シフトレバーをステアリングコラムやインパネに配置するなどの工夫をし、運転席と助手席の間に座席スペースを確保する必要があります。

これにより、2列シート車なら合計6人、3列シート車なら最大9人まで乗車定員を増やすことが可能です。

かつては一部のタクシー車両やアメリカ車、そして国産車でも見られましたが、現代の乗用車で前席3人掛けシートを採用する例はほとんどありません。
衝突安全基準の厳格化(特に中央席の乗員保護)や、エアバッグの配置、そして乗員の快適性といった問題から一般乗用車では廃れてしまい、現在ではトヨタ・ハイエース(バン)や日産・NV350キャラバン(バン)など、一部の商用バンにわずかにそのレイアウトが残る程度です。

前席3人シートを採用した代表的モデル3選

それでも過去には、「前に三人乗れる車」として斬新なアイデアを具現化した乗用車がいくつか存在しました。以下に代表的な3車種を紹介します。

ホンダ・エディックス|国産コンパクトミニバンで前席3人を実現

ホンダ・エディックスは、2004年に登場したコンパクトミニバンです。全長約4.3mながら全幅を約1.8mまで広げたショート&ワイドなボディに、前席3座+後席3座の「3×2(スリーバイツー)」という独創的なシートレイアウトを採用しました。

前席・後席それぞれ独立した6つのシートはスライドや格納が可能で、特に中央の前席は他の2席より少し後方にずらした「V字レイアウト」とすることで、大人3人が横に並んでも肩がぶつかりにくいよう工夫が凝らされていました。
このレイアウトにより6名全員が2列に収まるため、運転席からでも後席の子どもに目が届きやすく、家族の一体感を高められるというメリットがありました。

実際、エディックスは6人乗車時でも約439リットルのラゲッジ容量を確保しており、後席を床下にダイブダウン収納すれば最大1,049リットルもの大容量スペースが出現するなど、実用性も非常に高かったモデルです。

しかし、そのユニークさが市場の主流ニーズとは合致せず、販売は振るわず2009年に生産終了となりました。

フィアット・ムルティプラ|個性的デザインの欧州6人乗りMPV

フィアット・ムルティプラは、1998年にイタリア本国で発売された小型MPV(日本でいうミニバンに近いカテゴリー)です。全長わずか約4mという短い車体に6人分のシートを詰め込むため、車幅は1,871mm(※初期モデル)と非常にワイドで、背の高いキャビンを持つ独特のプロポーションが特徴でした。

前席3座・後席3座のレイアウトで、前席もすべてが独立したフルサイズシートであったため、大人6人が乗っても窮屈になりにくい開放的な室内空間を実現していました。

反面、その奇抜なフロントマスク(ヘッドライトがバンパーとフロントガラス下部の2段に配置されるデザイン)は世界中で賛否を呼び、発売当初のデザインは2004年のマイナーチェンジで一般的なデザインへと「顔面刷新」(フェイスリフト)を余儀なくされたほどでした。

ムルティプラは欧州では2010年頃まで販売されましたが、日本国内では正規輸入こそされなかったものの、一部の専門業者によって並行輸入で少数が流通し、その唯一無二の個性から今なおカルト的な人気を誇る希少車として知られています。

なお初期モデルは5速マニュアルトランスミッションのみという尖った仕様だったため、日本のAT主流の市場ではユーザーを選ぶ一台でもありました。

日産・ティーノ|補助シート付き“2+1”レイアウトの先駆け

日産・ティーノは、1998年から2003年まで発売されていた3ナンバーサイズのハイトワゴンです。サニーのプラットフォームを流用しつつ、全幅を1,760mmまで拡幅した全長約4.27m×全幅1.76m×全高1.61mのボディに、前席は運転席・助手席の間に小さめの補助シート(センターシート)を追加して「2+1名」、後席は3名がけとする「5+1(ゴプラスワン)」のコンセプトで設計されました。

この2列6人乗りレイアウトにより、比較的コンパクトな車体ながら6人乗車を可能とし、後席の3座はそれぞれ個別に取り外し可能で、荷物の量に応じてラゲッジスペースを自在に拡大できるなど、ユニークな工夫も盛り込まれていました。発売当初の6人乗りモデルでは、前席中央のセンターシートにチャイルドシートとしても使えるビルトイン式幼児用シートを標準装備するなど、家族連れを強く意識したパッケージングが特徴でした。

ところが発売から約2年後のマイナーチェンジ(2000年)で「前席2人+後席3人」の通常5人乗り仕様が追加され、さらに2002年のマイナーチェンジでは前席3人仕様(6人乗り)は廃止されてしまいました。

結局ティーノ自体も2003年に生産終了となり、日産から直接の後継となる2列6人乗り乗用車は登場していません。

前席3人レイアウトがもたらす3大メリット

小さなボディでも6人乗車&荷室を両立

3列シートの大型ミニバンに比べ、車長の短い2列シートの車でありながら、家族やグループ計6人が乗車可能です。
例えばホンダ・エディックスは、全長約4.3mと5ナンバーサイズのセダンに近い長さでありながら大人6人が乗れ、しかも6人乗車時でも一定の荷室容量を確保しています。

日本の狭い駐車場や道路での取り回しを考慮したい場合にも有利なパッケージングでした。

家族や仲間と会話しやすい一体感

乗員全員が2列以内に収まるため、運転席から遠く離れた3列目シートがある車よりも、車内でのコミュニケーションが取りやすく、後席に座る子どもの様子なども確認しやすいです。

特に前席の中央に子どもを座らせれば、両親がその両隣に座る形となり、ドライブ中の安心感が高まるというメリットがあります。実際、元オーナーからは「子どもを真ん中に、家族が一列に並んでドライブできるのが便利で楽しかった」という声も聞かれます。

希少性が高くドライブが特別な体験に

前席に3人が肩を並べて座るという乗車スタイルは、現代の車ではまず味わえない特別な体験です。家族や仲の良いグループで横一列に並んで座れる楽しさがあり、車内がにぎやかで一体感が生まれやすいという声もあります。

購入前に知るべき4つのデメリット

幅広ボディで取り回しに注意

前に3人が並んで座るためのスペースを確保するには、どうしてもある程度の車幅が必要になるため、一般的な5人乗り乗用車に比べてボディが幅広になる傾向があります。

日本の道路環境、特に狭い路地などでは運転のしづらさを感じるケースもあり、実際、ホンダ・エディックスでは全幅約1.8mという3ナンバーサイズが、一部のファミリーユーザーからは「少し大きすぎる」と敬遠される一因になったとも言われています。

フィアット・ムルティプラに至っては1.87mを超える全幅があり、その独特なデザインと相まって「運転が難しい」と評価されることもありました。

中央席の快適性と安全装備を確保しにくい

前席中央の乗員にも快適かつ安全に座ってもらうためには、十分なシート幅や足元の空間の確保が課題となります。

メーカー側も様々な工夫を凝らし、フィアット・ムルティプラは極端なワイドボディで3座ともに十分なスペースを確保し、ホンダ・エディックスは中央席を後方に大きくスライドさせるV字レイアウトで肩周りの圧迫感を解消しました。
それでも、中央席は左右の席に比べて足元空間が狭かったり、シートサイズが小さかったりする場合もあり、大人が長時間座るには窮屈になりがちです。

また、現代の衝突安全基準を満たすためには、中央席にも3点式シートベルトやヘッドレスト、エアバッグなどの安全装備を備える必要がありますが、これを実現するためのシートやダッシュボード周りの設計は難しく、コスト増加にもつながります。

ウォークスルー不可で室内レイアウトが制限

前席がベンチシート状、あるいは3つの独立シートで構成されているため、現代の多くのミニバンで当たり前になっている、前席から後席へのウォークスルー(車内での前後移動)ができません。
狭い駐車場で片側のドアしか開けられない場合に後席へ移動したり、後席の小さな子どもの世話をしたりといった場面では不便を感じることがあります。

さらに、前席中央にシートを設ける都合上、大型のセンターコンソールや豊富なインパネ周りの収納スペースが設置しにくくなるなど、車内レイアウトの自由度が下がる面もあります。

選択肢は中古車が中心で玉数希少

前席3人乗りの乗用車は、現在ではどのモデルも生産終了しており、新車で手に入れることはできません。中古車市場で探すことになりますが、もともとの販売台数が多くなかったため、希望のコンディションやグレードの個体を見つけるのは容易ではありません。

また、年式も古くなっているため、購入後の整備や部品調達に関する不安も伴います。事実、ホンダ・エディックスは2009年、日産・ティーノは2003年、フィアット・ムルティプラも欧州で2010年頃までに生産が終了しており、年々状態の良い中古車は減っています。

購入を検討する際は、こうした希少性や経年劣化のリスクも十分に織り込む必要があるでしょう。

前席3人乗り車を手に入れる方法と現行モデルの候補

残念ながら、現在、日本国内で新車として購入できる前席3人乗りの乗用車(3ナンバー、5ナンバーなど)はありません。前述のエディックスやティーノ、ムルティプラといった車種も中古車で探すしかないのが現状です。

ただし、目的によっては商用車という選択肢も考えられます。例えば、トヨタ・ハイエース(バン)や日産・NV350キャラバン(バン)といったワンボックスの商用車には、運転席と助手席の間に補助席を設けた、前席3人掛けのベンチシートを備えるグレードが現在も設定されています。

もちろん、商用バンは荷室空間を最優先に設計されており、乗用車ほど内装の快適性や後席の乗り心地は重視されていませんが、「どうしても前に三人乗れる新車が必要だ」という場合には、現実的な選択肢となるでしょう。

一方で、乗用車としての快適性を備えた前席3人乗り車を楽しみたい場合は、本記事で紹介したような過去のモデルを中古車市場で根気強く探すことになります。希少な存在ではありますが、もし状態の良い一台を手に入れることができれば、家族や仲間と横一列に並んでドライブできるという、他では得難い特別な体験を味わえる貴重な存在となるはずです。

前に三人乗れる車のまとめ

「前に三人乗れる車」は現在では非常に珍しい存在ですが、かつてはホンダ・エディックス、日産・ティーノ、フィアット・ムルティプラといった個性的な代表車種が販売されていました。
それぞれが独創的な工夫を凝らして前席3人乗りと2列シートでの6人乗車を実現しており、比較的コンパクトな車体で乗車定員を増やせるメリットがある一方、車幅の拡大や中央席の快適性・安全性確保といった課題も抱えていました。

現在、新車でこのコンセプトを持つ乗用車を選ぶことはできませんが、中古車市場で根気よく探せば、状態の良い個体に出会える可能性は残されています。

また、用途次第では商用バンなどで前席3人乗りというレイアウトを手に入れることも可能です。選択肢は限られていますが、家族みんなでフロントシートに並んで座るという他では得難い一体感や体験に魅力を感じる方は、ぜひこれら前席3人乗り車というユニークな選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。車内に広がる特別な一体感は、きっと忘れられないドライブの思い出を演出してくれるでしょう。
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